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【エッセイ】早起きデビュー

この1年、早起きが続いている。仕事の日は5時半に起きないと間に合わないのだが、休みの日でも6時には起きている。両親が知ったら、目を丸くするに違いない。朝が弱いのは、けっして低血圧だからではなく、恥をさらすようだが、根っからの甘ったれの怠け者だからである。

子供の頃から、宵っ張りの朝寝坊だった。そんな私を、祖母は台所と2階の子供部屋を何往復もして起こしてくれた。祖母は81歳で亡くなったが、あんなに苦労をかけなければ、もっと長生きできたかもしれない。

結婚後も朝寝坊の悪癖は直らず、起こす係は夫に変わった。夫には「寝たきり妻」という不名誉なあだ名をつけられた。起こさなければ、いつまでも寝ていたからだ。そんな私が、50を過ぎてやっと早起きができるようになった。その陰には3つのきっかけがある。

まず、1年前に夫のエジプト出張が始まったことが大きい。もう頼れるのは目覚まし時計だけだと思ったら、仕事の前夜は緊張した。夫もエジプトで心配していた。毎朝5時20分に「おはよう。起きた?」とスマホにメッセージを送ってきた。始めの頃は、私からの返事が届かないことも多く、気になって気になって仕方なかったらしい。この時、エジプトは夜10時だが、残業していることも多かった。仕事の手を休め、国際電話をかけてくれた時は、さすがの私も申し訳ない気持ちで一杯になった。「もう起きてるよ。安心してください」とすぐにメッセージを送るためにも、早起きしなければと心底思うようになった。

先月、夫の出張が終わった。眠い目をこすって起きてきた夫に、元「寝たきり妻」はこう言うようになった。
「カフェオレができてるよ」

朝起きると、窓を開け、ベランダの植物に水をやる。6時になるとラジオからは、「モ~ニング! 目覚めるの~じゃ!」という定番の挨拶が聞こえてくる。これを聞き逃すと、損した気分になる。ある朝、テレビではなくFMラジオをつけたら、俳優の別所哲也がナビゲートしているこの番組を偶然聞いた。彼のさわやかな語りに、仕事の朝は元気をもらっている。仕事がない日も、無性に眠い朝でも、別所哲也も起きているんだからと思ったら、起きられるようになった。早起き仲間を見つけられたこと、これが2つ目のきっかけだ。ちなみに、ラジオネーム「はられ」でメッセージを2、3度送っているのだが、まだ一度も読まれたことはない。

3つめのきっかけは、私だけ和室で寝るようになったことだ。夫と同じ部屋で寝ていると、いびきや寝返りで、お互いどうしても起きてしまう。私は東向きの和室に移動した。夏は5時前から明るくなる。障子を全開にして寝るので、朝日が優しく起こしてくれる。寝坊すると、容赦なく照り付けてくる。冬の早朝はまだ星が残っている。早起きを褒めているかのように輝いている。

もう一つ、早起きのきっかけを思い出した。若い頃のように寝ていたら腰が痛くなるのだ。年をとったということか。

先日、睡眠についての講演を聞いた。6時間半から7時間の睡眠をとらないと、精神疾患や認知症につながりかねないという。今後も早起きを続けるのなら、夜10時半には寝ないといけないことなる。これがなかなか難しい。早起きは夜から始まっていた。

(2019年9月に書きました)

最後まで読んでくださり、ありがとうございました m(__)m あなたの大切な時間を私の記事を読むために使ってくださったこと、本当に嬉しく有難く思っています。 また読んでいただけるように書き続けたいと思います。