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ナンバリングの深い意義

古代文明では、商取引や資産管理のためにナンバリングが使われはじめました。たとえば、古代バビロニアやエジプトでは粘土板やパピルスに記録をつけ、ナンバリングを利用して管理していたようです。

このように、ナンバリングというものは、歴史的意義と技術革新を映し出す鏡のようなものです。数字が与えられることで、モノや情報に意味と秩序が生まれ、それぞれのナンバーがその対象の物語を語りはじめます。

クリュッグといえば、最近はジャクソンやルイ・ロデレール同様、マルチヴィンテージで知られています。マルチヴィンテージとは、主となるヴィンテージワインを高めるために複数年のワインをブレンドしてつくるシャンパーニュのこと。そのマルチヴィンテージを表現するのが、クリュッグのエチケットに記載されている「エディションナンバー」です。これは、クリュッグ社が創業以来キュヴェをアッサンブラージュした通しの番号です。〈エディション171〉との表記があれば、1843年の創業以来171回目のエディションという意味です。

このエディションナンバーは、リリースごとに新たな物語を語るもので、わたしたちにそのシャンパーニュが持つ個性と背後にあるストーリーを教えてくれます。たとえば、今夜抜栓した「ロゼ26エディション」。目の覚めるような鮮やかなオレンジカラーと一瞬で心が奪われるような豊潤な香り、他に類を見ないほどの圧倒的なボリューム感とこの上なく続く長い余韻を楽しむことができました。

これこそ、長い伝統のなかで培われたアッサンブラージュ(ブレンド)技術と、2014年をメインに7つの異なるヴィンテージが織りなす唯一無二の世界観です。このように、マルチヴィンテージなどのナンバリングの意味を探ることは、その作品が生み出された歴史的および技術的背景を知ることであり、そのメゾンの魅力と情熱を理解するための鍵を手に入れるということにほかならないのです。

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