『星マリア』として生まれ変わった日
自分の事が大嫌いだった。
人生どうでもよくなり、抜け殻状態の21歳だった。
お酒を浴びるように飲み、夜な夜なディスコへ通い、自暴自棄で堕落した生活を送っていた。
そんな中
「マリアって占い好きだよね?よく当たる先生がいるんだけど、一緒に行ってみない?」
ディスコで知り合った遊び仲間のひとり、リナに誘われた。
少し迷って「いいよ、一緒に行く。」と答えた。
よく当たるという先生のところへ出かけると、その先生は筮竹を美しくパチパチ捌き、算木をカチンカチンと響かせ、リナの恋愛の問題がどこにあるのか、解決法等を細かく教え導いた。リナはとても喜んでいた。
先生は私に
「あなたは何か、占って欲しい事はないのですか?」
と訊ねた。
「特にないです。」
とこたえると
「そうですか。・・・私は易の他に面相もみるのですけどね、うーん・・・何やらあなたの心は空ろですね。」
そう呟くように話した。
無言でため息をつく私に
「ご自分の人生が嫌になったのなら、他人様の人生のお役に立てることをしてみませんか?もし、面白いと思ったら教室に来なさい。」
と、先生は柳下尚範先生の『易入門』を私に手渡した。
「おいくらですか?」
と尋ねると、先生は笑って
「差し上げますよ。気が向いたらまた連絡して来なさい。午前中は電話鑑定をしていますから。」
と仰った。
占い結果がとても良かったリナは上機嫌のまま一緒にディスコへ直行した。
私はいつものようにディスコで踊り狂い、喉が渇いてワインをがぶ飲みしながらふと『易入門』を手に取り開いてみた。
幼い頃から占いは大好きだったが、易との出会いは先生から手渡されたその『易入門』だった。
ユーロビートがガンガン鳴り響く中、夢中になって易入門を読んだ。
翌朝、先生に電話をし
「昨日はありがとうございました。こんな私がお教室に通っても良いのでしょうか。」
と訊ねると
「良かった。電話がかかって来る予感がしていたのですよ。生まれ変わる気持ちになったのですね。」
と、先生はとても喜んでいた。
生まれ変わる?
そうか、私はこのままじゃダメだと、先生は察していたのだ。
そう思うと急に涙が込み上げて来た。
「私、生まれ変われますかね? 生きていけますかね? 大丈夫ですかね?」
泣きながら先生に訊ねると
「その為に、あなたには占いがあると思いますよ。あなたは占い師に向いています。何があったかまではわかりませんが、苦しく辛い経験をして乗り越えた人程向いている仕事ですよ。頑張ってみなさい。」
私は号泣した。
「それだけ泣ける元気があるなら大丈夫です。」
先生は笑っていました。
その先生は、その後長い長いお付き合いになる師匠、高井紅鳳先生でした。
それからの私は易にのめり込み勉強した。
(その他、先生の得意な観相や手相、姓名判断なども色々学んだ。)
私が占いの勉強を本格的に始めた頃、ある尊敬する占い師のお方に渋谷パルコの占いコーナーに出てみないかと打診された。
私で大丈夫なの?と思ったが、そのお方は私が幼い頃から占い大好きで、これまで色々な人を占って来た経験がある事やお教室で勉強中という事を知り、「占いは実占が一番勉強になるのはわかってるでしょ?」と、背を押してくれた。
主宰者の訪 星珠先生とは面接というより「いつから出られますか?」と訊ねられ、戸惑いながらもスルスルと占い師デビューが決まった。
師匠の紅鳳先生に相談すると
「矢張りあなたには占いの才能があるのですよ。訪先生もよくあなたの力を見抜きましたね。称号はどうしますか?」
と、喜んでいました。
称号?って?
と、首を傾げていますと
「占い師としての名前ですよ。」
と。
「・・・ブラジルに住んでいた頃、周囲から『マリア』と呼ばれていました。ブラジルの星空はとても美しくて・・・ 『星 マリア』がいいです。」
そう咄嗟にこたえると
「いい名前ですね。星先生、あなたもこれで立派に生まれ変われますね。頑張りなさい。」
とニコニコ嬉しそうに仰っていました。
私は師匠のお蔭で生まれ変わる事ができました。
師匠が手渡してくださった柳下尚範先生の『易入門』がきっかけで、易の素晴らしさを知り、『生きるとは何か』ということをぼんやりとではありますが学びました。
今こうしてもうすぐ58歳の『星マリア』が元気に笑顔で占い師としていられるのは紅鳳師匠のお陰なのです。
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