岡本太郎と岡本敏子
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先日、友人から「#ブックカバーチャレンジ」なるものが回覧板のようにまわってきた。私の本棚は、何度かの大規模な断捨離を経てすっかり味気のないものなのだが、久しぶりに岡本敏子さんの笑顔と目が合った。「いま、生きる力」。そのタイトルは、まるでこうして手に取られるのを待ち構えているようだった。
ひょいと本を持ち上げると、ちょうど一年前の色鮮やかな新緑の香りがふっと目の前を横切った気がした。海外からの訪問者に都内を案内するのがその日の私の任務だった。彼女はジュエリーデザイナーだったので、私たちは六本木の美術館でトルコの装飾品の展示を見て、そのあと表参道まで歩いた。軽く汗ばむ陽気。日本のアートにも興味を持っていたので、青山の岡本太郎記念館に初めて立ち寄った。
ここ岡本太郎記念館は、1996年、八十四歳で亡くなるまで、岡本太郎のアトリエ兼住居だった。1954年から五十年近くも彼が生活した空間である。
絵を描き、原稿を口述し、彫刻と格闘し、人と会い、万国博の太陽の塔をはじめ巨大なモニュメントや壁画など、あらゆる作品の構想を練り、制作した場所。(記念館サイトから引用)
手前はカフェやショップになっているが、アトリエに入った瞬間、ぞくぞくっとした。気味の悪い感じではない。いまだにそこに漂う太郎さんのエネルギー、気迫のようなもの、そして、そこにはもういないのに、彼の強烈な色気がそこに充満しているように感じた。正直、専門的な彼の技量とか、芸術作品としての云々というのは私には分からない。でも、ほとばしる生命の輝き、緊張感、緊迫感、そして、大きな大きな優しさを感じた。生半可ではない、厳しさに限りなく近い、優しさ。それは、私を本能的に捕らえた。
そんな太郎さんの戸籍上の養女、事実上のパートナーだった敏子さん。彼女の本も何冊か読んだが、気が合う気がしてならない。彼女の域にはまだまだ到底及ばないけれど、人の質として、とても近い気がする。太郎さんの「自分の中に毒を持て」という本は、先述した敏子さんの「いま、生きる力」の対になるような内容で、その芸術や生き方に対する彼の潔癖なまでの純粋さには惚れ惚れする。心底格好いいと思うし、アートに携わる者として、ビシバシとインスパイアされる。ただ、私個人としては、彼のようには生きられないし、生きたいとも思わない。それは...
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