第1章-3 (#3) 初恋が終わった瞬間[小説]34年の距離感 - 別離編 -
その電話は、いつもの嫌がらせの先輩からじゃなかった。お決まりの「生意気なんだよ!」の方が、どんなによかったことか。
「もしもし。長濱だけど」
小学校卒業以来、3ヶ月ぶりに聞いた長濱くんの声は、遥か彼方に行ってしまった人みたいに遠く感じた。
「僕たち付き合ってるって噂されてるみたいだけど。どういうこと? 月桜が何か言ったの?」
「わたしじゃない。何も言ってない。わたしにもわからない」
「そうなんだ。わかった」
ガチャン。受話器を置いた音から、長濱くんの苛立ちと落胆が伝わってくる。長濱くん、わたしのこと疑ってる。わたしのせいだって思われてるんだ。長濱くん、いつからわたしのこと、そんな目で見るようになっちゃったんだろう。小学校の頃は、もっとやさしかった。知らないうちに変わっちゃったんだね。
わたしの知らない誰かは、わたしのこと知ってるんだよね。長濱くんの彼女だと思ってるんだよね。誤解されたまま嫉妬されてるんだよね。
ずっと先輩に睨まれるのかな?
嫌がらせの電話が続くのかな?
もっとエスカレートするのかな?
もっと酷いことされるのかな?
わたしどうなっちゃうのかな?
終わりの見えない恐怖は、ある日を境にあっけなく消えていった。
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