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配偶者を幸せにするとは。

父が死んでから、母が不安でしょうがないらしい。体が弱っていく中で、頼りになる人もなく、時々弱々しいメッセージが来る。
今までもそうだったけど、あまり愚痴を聞きすぎると止め処ないので、私は前向きで短いメッセージを返すだけだ。同時に心配がこみ上げる。
母は必死で父に寄り添っていた。いろいろ世話を焼いたけど、それは必ずしも父を喜ばせるものではなかった。父が死んだ今、空虚感でいっぱいなのだろう。

私も似たところがあるので母の気持ちがよくわかる。
母と同じことにならないように、隣に寝る夫の横顔を見て、この人を幸せにしなければ、と思った時に、ハッとした。幸せにするって、何をすれば良いのだろう。母と同じように、美味しい料理を作って、健康管理をする自分の姿を思い浮かべたとき、父の強情な顔が浮かんだ。



妻だから分かり得る配偶者の空虚。でもそこに、私が何かを入れようとすることが、本当に相手を幸せにするのだろうか。
夫の承認欲求が強いからと言って、私がいくら夫を褒めちぎったところで、夫はそこに胡坐をかくだけだろう。夫の承認欲求が向かうべきところは別のところにあるのだ。かつての私がそうだったように。

老後のために健康に気を使い、料理を工夫するのは良いことだ。しかし私は私の道を生きるしかない。私が彼の道をよくしようとしたところで、それは彼の人格をスポイルすることにしかならないのだ。
私が人生の目標にすることは、自分の作品を作ることだ。そういう生き方が夫の嫉妬を買ったとしても、作品には私の全人生が語られ、認めてくれる人もいる。そしてこれまで私が培ってきたものを何処かに収めることが、私が死ぬまでにやることだ。

そんな私の生き様を見て、夫がどう生きるかは、夫が決めることなのだ。

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