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海の日のはなし

明日は秋分の日。

リビングにコタツをだした。つけなくてもいい、「いつでもつけることができるぞ」という安心感があればいいのだ。ここ数日、すっかり長袖の服がスタメンだし、桜の葉っぱは赤く色づき始めているし、近所で見かけるアケビの実も紫色になってきた。

とうとうきたな、秋。という感じがしています。


今年の夏、子どもたちと3人で秋田の男鹿へ出かけた。車中泊して、海であそんで、ずっと行きたかった、縫人へ立ち寄った。

わたしはOwn GArment productsの服が好きで、春夏秋冬お世話になっている。だからかな、そうでなくてもな気もするけど、縫人は近くにあったら毎日行きたくなるような居心地の場所だった。毎日着ても飽きる事のない服と同じ、ちょうどよさ。

行ったのは7月半ば、半袖すら脱ぎたくなるようなジリジリとした暑さの日だった。海で遊んだときに服を濡らしてしまっていたふたりと、「道中でTシャツでも買おう」と話していた。

縫人の棚に小さなボーダーのカットソーがあって、娘が手を伸ばした。「子どもサイズ、ちょっとだけ作ってみた」と、店主が話す。生地も厚めでしっかりとした作り。娘はその130サイズを「着てみたい」といって試着室に入った。

いやいやいや、たしかにオウンさんの服は素敵、それはわかる。だけど、130は娘には少し大きいし、だいたい35度あろうかという気温の中で長袖は選ばないだろうな、と思っていた。

試着室のカーテンを勢いよく開けた娘が、鏡の前でニコニコニコニコしている。「これ、買いたい!お年玉使ってもいいから!」自信満々の顔で言う。あー、わかる。その感じ。と思った。初めてオウンさんの作る服を試着した時の自分と同じだった。季節外れだな、という最初の印象を覆して、今の娘にこれ以上ぴったりな服、ないだろうな思って、暑い暑い海の日に、長袖のカットソーを買ったのだった。

そう、それで、今日は娘はその服を着ていた。明日は秋分の日。ぶかぶかに見えた130センチが、そんなに大きすぎて見えないことにびっくりする。切ったばかりのおかっぱ頭、上は長袖でも下はショートパンツがいい!と力説する。すっかり女子やな。

子どもを産むまでわからなかった事の一つに、子供服の小さくなっていく速さ、がある。新生児のロンパースから始まり、上下別れた服になり、そこからは90,100,110,120。年々サイズアップ。ファストファッションでも追いつかないほどのスピードだ。

たくさんの洋服を着ては手放していくスピード感の中で、どうしても捨てられない一着というのがありました。我が家の場合は新生児の時によく似合っていたロンパース。全部は残しておけない、この一着があればふわふわした抱き心地も、なきごえも、香りも、全部思い出せるぞ、という。

今娘が着ているカットソーは、私の中でそういう残しておきたい一着になるだろうな、と思っています。うん、きっとなる。考えたら泣けてきた…。

130センチの服、たしかに1年、頑張って2年しか着れないんだよね。子供服って、大人の服とはそこが違う。でも、自分らしいと思えるものを身につける頼もしさが、子供達の服の世界にも当たり前になったらいいな、と思います。

さ、明日はいしがき、お手伝い。

ゆっくり、あたたかくして眠りましょう。

おやすみなさい、またあした。





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