見出し画像

意外と挑戦できた。多拠点生活を送るチセさんが語る、「旅する暮らし」のリアル

「多拠点生活」「アドレスホッピング」という言葉を知っていますか?
言葉通り、固定の家を持たずに各地を移動しながら暮らす生活を意味します。

「旅をしながら暮らしてみたい」「地方移住をお試しで体験してみたい」など、いろいろな理由から多拠点生活を始める人が増えています。
日本全国を旅する自由気ままな生活には、憧れる人も多いでしょう。

とはいえ、多拠点生活はまったく新しいライフスタイル。固定の家を持たないとなると、思いつきだけで始めることはできません。
「実際はどんな暮らし?」「大変なことは?」など、いろいろなことが気になりますよね。

そこで、2021年の7月から多拠点生活を始めたチセさんに、実際の暮らしの様子、メリット・デメリット、始めたきっかけなど、多拠点生活のリアルをたっぷり伺いました。
多拠点生活が気になっている方は、ぜひ最後まで読んでみてください。

cosaのコピー2

【チセさんプロフィール】
大阪出身。2021年7月から多拠点生活のサブスクリプションサービス「ADDress」を利用して多拠点生活を実践している。多拠点生活の開始にともない、住んでいた家は解約し会社も退職。たくさんの人に出会う多拠点生活の様子を、「人見知りがこっそり楽しむ、旅暮らしのススメ」というコンセプトでYouTubeInstagramで発信中。

多拠点生活って、実際はどんな暮らし?

ーーさっそくですが、今はどちらにいらっしゃるのですか?

今は、大阪の此花区というところにあるゲストハウスにいます。3週間ほど滞在しています。

ーー3週間もひとつのゲストハウスに滞在できるんですね。

はい。多拠点生活は、月額4.4万円で日本全国住み放題の「ADDress」というサービスを使ってしています。
ADDressはひとつの場所に1週間まで滞在ができるので、基本は1週間ごとに移動するのですが、ゲストハウスのマンスリープランを併用してもっと長く同じ場所に滞在することもあります。

住民票は大阪の実家に置いているので、大阪に滞在するときは期間を長めにして、あれこれ用事を済ませるようにしています。

ーー滞在する場所も期間も、ご自身で自由に決められているんですね。毎日、どんな生活を送っているのですか?

なるべく「普通の暮らし」を心がけています。例えば外食より自炊を多くしたり、会社に行くのと同じような時間に起きたり。
日中はライティングの仕事や、自分のYouTubeやInstagramの投稿作りなどの作業をしています。基本的には滞在場所のWi-Fiを使えるので、作業をするのには問題はないですね。

ワーケーション

ーーいろいろなところに移動しているけど、「旅行」というよりも「生活」という感じなんですね。普通の暮らしを心がけているのはなぜですか?

多拠点生活を長く続けたいからですね
始めたときは移住先を探す目的が大きかったのですが、始めてみたらこの生活が気に入って、今はできるだけ長く続けたいと思っています。
なので金銭的にも、自分が疲れないためにも、普通の暮らしを心がけています。

1年悩んで、多拠点生活をスタート

ーー「移住先を探す」という話がありましたが、多拠点生活は、どのような経緯で始められたのですか?

ADDressの広告を見て「多拠点生活」という暮らしかたを初めて知り、憧れを抱いて、それから1年くらい検討を重ねて決断しました
実際に多拠点生活を始めるには、仕事、家、人間関係などたくさんの課題があったのですが、それをひとつずつクリアしていって、最後は友人に背中を押してもらいました。

ーー具体的にはどんな課題があったのですか?

一番の課題は仕事でした。多拠点生活をしながら続けられる仕事ではなかったんです。
ただ「仕事をやめたいな、やめても別にいいんじゃないか」と思うようになったことで、その課題はクリアできました。

他には、家のことや人間関係ですね。
当時は引っ越したばかりだったので、家を解約するのはもったいないと思っていました。
あと、大阪で暮らしているパートナーがいて、多拠点生活をすることで離れ離れになるので、理解してもらえるかどうかがとても不安でした。

ーー実際に、パートナーからはどんな反応がありましたか?

本当に始めると決断したときは驚かれましたが、初めて伝えてみたときは「面白そう」みたいなポジティブな反応でした。
周りの人に自分のやりたいことを応援してもらえるかどうかは私にとって大事なことだったので、良かったです。

また、始める半年くらい前から話題にあげていたからこそ、決断したときもすんなり受け入れてもらえたのかなと思います。
前もって伝えておくことは大事だなと感じましたね。

ーーそれで課題をひとつずつクリアしていったんですね。

はい。ただ、課題を全てクリアした後もなんとなく踏み切れずにいる時期がありました。
そんなときに高校時代の友人に相談したら、「あなたは昔は挑戦するタイプの人だったと思うよ、だからやりたいなら飛び込んでみたらいいんじゃない」というようなことを言われて。
昔から私をよく知る人だからこその言葉が心に響いて、決断することができました

ーー周りの人にたくさん相談して、たくさん検討を重ねてスタートしたのですね。

面白い出会いがたくさんある

ーー実際に多拠点生活をする中で、よかったと思うのはどんなことですか?

まずは、絶対に誰かが近くにいることです。
ADDressの拠点はゲストハウスだったり、一軒家のようなタイプだとほかのADDress会員も同時に訪れていたり、必ずほかの人がいる環境なんです。

社会人になると新しい出会いは減るし、コロナ禍では人と話すこと自体少ないですよね。
そんな中で、無理やり出会おうとしなくてもナチュラルに人と会って話すことができるのがよかったです。

ーー面白い出会いはありましたか?

たくさんありましたね。
これは多拠点生活ならではだと思うのですが、初対面にもかかわらず、自分の人生や価値観といった深い話ができるんです。自分とは違う考え方の人と話すのはとても面白いです。

多拠点生活をしている時点で、どこか変わった考え方をもっている人が多いんですよね(笑)。始めたきっかけを聞くと、自然と人生や価値観の話になります。

ーー多拠点生活を始めるって、ある意味人生を変えることですもんね。逆に、大変なことや困ったことはありますか?

一番大変だったのは荷物ですね
最初はできる限り持っていこうとしたのですが、重くて自分が持ち運べなくて。
1ヶ月ほどの間、移動しながら少しずつ減らしていきました。

本が好きだけど持っていくのを諦めたり、自分のYouTube用の撮影機材をメルカリで売って撮影はiPhoneでしたりと、最低限に減らしました。

ーー実際、いまはどれくらいの量の荷物で移動されているのですか?

7泊分くらいのサイズのスーツケースと、リュックひとつです。けっこう余白もありますね。

画像3

ーー最初に比べるとだいぶ身軽なんじゃないでしょうか。他に、生活の中で困ることはなにかありますか?

書類系ですね。保険や税金など、公的な書類は住民票がある大阪に受け取りにいかないといけないので、それがネックで思うように旅ができないと感じることもあります。

あとは、ADDressの拠点にある調味料の種類が少なくて自分の好きなご飯を作れないことがあるとか(笑)。
でも本当にそれくらいですね。思ったより困っていないです

ーー始めるまでは不安が大きくても、やってみたら案外大丈夫だったんですね。

多拠点生活でマインドが変わった

ーー大きな決心をして多拠点生活を始められたと思うのですが、始める前と後でどんな変化がありましたか?

マインド面の変化が大きいです。
人の目を気にしなくなりました。誰かが常に近くにいて、朝起きたばかりの姿でも顔を合わせたりするので、自然体で振る舞えるようになりました

あと、人見知りがずっとコンプレックスだったのですが、コンプレックスを受け入れられるようになりました。挨拶や相槌をしていれば人を不快にさせることはないし、無理に話そうとしても疲れてしまうと思い、いい意味で開き直れました。

ーーいつも周りに人がいる環境で、逆に1人になりたいと思うこともありますか?

あります。そういうときは自分の部屋にこもったり、カフェに行ったりしています。
ご飯に誘われることも多くて嬉しいのですが、気が乗らないときには誘いを断ることもできるようになりましたね。
出会う人たちは同じように移動しながら暮らしているので、「今日は移動で疲れたのでもう寝ます」と言うと、すんなり理解してもらえます。

ーーチセさんのnoteで「人生に余白が欲しくて、仕事や家を手放した」といった内容を拝見したのですが、チセさんにとって「人生の余白」ってどういうものですか?

時間の余裕と心の余裕でしょうか。
それまでは毎日仕事をして寝るだけの生活をしていたのですが、趣味や好きなことに時間を使えることは大事だと思います。

また精神的に追い詰められていると、周りのことに興味を持てなくなってしまうというか。ちゃんと好奇心が機能するためには、心の余裕が必要だなと思いました。

ーー余裕がないと、日々の何気ないことに気づけなかったりしますよね。多拠点生活を始めて、「人生の余白」はできましたか?

仕事をやめたのもあり、時間の余裕は圧倒的にできました。
逆に、お金の心配や定職についていない不安もあり、そろそろ就職しないとと少し焦っていたりもします。
100点満点ではないですが、それでもまあいいかと思いながら楽しんでいますね

ーーお話を聞いていると、おおらかになった気持ちの変化を感じられます。

興味があるなら、まずは挑戦してみて

ーー多拠点生活が気になっている人に向けて、実践者として何か伝えたいことはありますか?

もし多拠点生活に興味や憧れを持ったなら、まずは挑戦してみるのがいいと思います。
私自身、始めるまで1年も迷いましたが、いざ始めてみて感じたのは「意外と簡単にできるな」ということ。
いろいろな場所に移動したり、たくさんの人と出会ったりしながらも、自分のペースで生活することができると感じています。

いきなり家を解約して旅を始めるのが不安な場合、ゲストハウスやサブスクリプションのサービスには短期間利用できるプランもあるので、まずは1週間や1ヶ月だけ試してみるのもいいと思います。
案外ハードル低く挑戦できる、ということを伝えたいです。

ーー実際に1年間も迷った上で挑戦したチセさんだからこそ、説得力がありますね。本日はありがとうございました。

まとめ

家も仕事も手放し、多拠点生活を始めたチセさん。始めるまではいろいろな葛藤があり、コンプレックスにも悩んでいたけれど、多拠点生活という自由な暮らしを始めたことで心のモヤモヤが晴れおおらかな気持ちになる。チセさんのそのマインドの変化が、生き生きと話す姿からも感じられました。

実際に多拠点生活をしてみて、意外と困難もなく生活できるという実践者の生の声も、多拠点生活に憧れる人にとっては背中を押されるものではないでしょうか。
チセさんが仰るように、興味があるならまずは挑戦してみてもいいかもしれません。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?