クラウドソーシング・クライシス!(2)
前回に続き、クラウドソーシングに登録した俺の奮闘記を綴ろうと思う。
今回は、未払いクライアントに遭遇しちゃったっていう話だ。興味ある人は読んでみて。
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クラウドソーシングには、タスクと固定報酬制の案件がある。
タスクっていうのは、単発の案件、固定報酬制っていうのは継続になる可能性がある案件。
とにかく、できる案件をガシガシやっていた俺だったが、ある時、継続案件の依頼がやってきた。3500文字以上のライティングで、経験が浅い俺は不安になったけど、とりあえず1記事やってみようと思った。
1記事で契約成立。報酬は1,000円。
クライアント様は丁寧な言葉遣いで、メッセージをくれて、信頼できそうだと感じた。
契約後、ごっそりとマニュアルが送られてきた。
目を通していると、
「ん?」
いくつもあるマニュアルのひとつに、気になる記載が。
『報酬について』
のところ。
『報酬のお支払いは、1万円以上からになります』
と、小さな文字で。
え? ちょっと待て。
俺が契約したのは、1記事、1,000円。
1万円以上って、えーと、どういうこと?
俺はすぐに、クライアント様に問い合わせをした。
「これは、つまり、1,000円×10記事=10,000円にならないと、支払いがないということですか? 契約したのは1記事だけですが」
しかし、クライアント様からは返事なし。
繰り返し、メッセージを送ると、やっと返事が来た。
『そのような形になります』
えー! 聞いてないよ! と思ったけれど、一旦、契約しちゃってるだろ。これ、納品しないと悪い評価つけられちゃうんじゃ?
実績が少ない俺は、怯えた。
そして、とにかく10記事、納品すればいいんだろと思った。さっさと納品して、このクライアント様との取引は終わりにしよう。10記事ごとの支払いなんて、俺には重たすぎる。
その案件に関することは、ほかのライターも参加しているグループチャットでやり取りをしていた。
そしてある日、クライアント様グループのリーダーから、爆弾が落とされた。
「皆さんにお知らせです! コピペ納品がありました!」
どっかーーーーーーん!!
どうやらライターの誰かが、どこからかコピーした記事を納品したらしかった。
しかし内容を見ると、聞いたこともない人物の説明の一文が、ウィキペディアから引用されたってことだった。しかも、まるっきりコピペじゃなくて、工夫して書き換えている努力が見られた。
「これは、明らかにウィキペディアを参照しています。コピペ納品をしたライターは、今までの納品記事の報酬も無しにさせていただきます!」
クライアント様リーダーのヒステリックな言葉が続いた。
ひえー、このクライアント様、やべえって思った。きっと、支払うときになると、こういうふうに因縁つけて払わないつもりなんじゃないか? そもそも1記事の契約だったのに、契約後に報酬支払の基準を変更してくるなんて、おかしいし。
俺はすでに3記事納品していた。納品した記事は、問題なくネット上に公開されていたが、あと7記事、執筆する気持ちにはなれなかった。納品したところで、支払ってもらえない可能性もある。
元々、1記事の契約だったこともあり、俺はクライアント様に、メッセージを送った。
「すみません、3記事は納品しましたが、これ以上は執筆できなくなりました。つきましては、納品した記事分の支払いをしていただけませんでしょうか?」
返事はすぐに来たが、リーダー宛てに直接送ってくれということだったので、チャットでリーダー宛てにDMを送った。
返事が来た。
『お支払いは10,000円以上になっているので、できません!』
俺は食い下がった。
「でも、10,000円以上にならないと支払いにならないのは、マニュアルが送られてきて初めてわかったことですよね」
『契約前に、マニュアルをお送りすることはできませんから!!』
なんなんだ、このヒステリックな感じ……、と思いながらも、さらに食い下がった。
「では、納品してすでに公開されている記事を取り下げてもらうことはできませんか?」
『それは、かなり難しい問題なので、できません!!!!』
なにが、かなり難しいんだよ。
「最初の契約では1記事でしたよね。契約の画面にも、最小単位1記事ってなっていますが」
返事をした途端、チャットメンバーから外された。ちょちょちょ! なんだよ、これが噂の※地雷クライアントってやつか!
※地雷クライアントとは、悪質なクライアントのこと
いや、クラウドソーシングってのは、こういうときのために運営会社が間に入っているんだ。仮払い制度だって、そのためにあるんだ。せめて、最初の契約の1記事分だけでも支払ってもらえないものか。
俺は、運営会社のサポートに問い合わせをしてみた。返事が来た。
『そこまでは、こちらが取り締まることができない範囲になります』
……は?
力が抜けた。マジか。味方になってくれないのか。一緒に戦ってくれるんじゃないのか。
たかが1,000円。されど1,000円。俺にとっては、大きな原稿料だったのに。(3記事納品したんだから、正確には3,000円だ)
これがクラウドソーシングの洗礼なのか! オーマイガッ!!
未払いクライアントに遭遇し、ここで身を引けばよかったのかもしれないが、俺はさらなる闇の中に突き進んでしまったのだった。
※実話じゃないです。フィクションです。
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