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クラウドソーシング・クライシス!(4)

 1話2話3話に続いて、クラウドソーシングに登録した俺の奮闘記を綴ろうと思う。
 今回で最終回。1話で登場したブログで稼いでいる、クラウドソーシングでWebライターを雇う側の友人から連絡がきて会うことになった。興味ある人は読んでみて。

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 飲み屋に入ってビールで乾杯するなり、友人は切り出した。
「Webライティング始めて半年くらいだろ? どんな調子?」
「稼げないし、変なクライアントの仕事やっちゃうしで、もう辞めようかと思ってるよ」
「ちょっと待った!」
 友人は、ジョッキを置いて俺を見た。
「その半年の経験を活かして、俺の仕事を手伝ってくれない?」
 友人は多くのWebライターを抱えているが、忙しくて管理ができないのだという。
「納品してくる記事のチェック、修正依頼なんかをしてくれればいいんだよ。俺のとこで書いてるライターは初心者が多いから、半年の経験があるなら充分対応できる」
 ライターやってるより報酬は高いと言われて、とりあえずやってみることにした。

 帰宅すると、早速、友人から「この記事、チェックしといて」と、記事が送られてきた。
 下記が、その記事の概要。

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「ジャンル:出会い系」
「キーワード:出会い きっかけ」
タイトル:まるで別人!?不細工女性と出会い付き合うことになったかわいそうな俺
見出し1:出会い系アプリでの出会い
見出し2:やり取りの末、実際に会ってみると!
見出し3:不細工な女性と付き合うことに

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 え、これ、そもそもタイトルにキーワードが入ってないんだけど。しかも、なんだか一方的に、不細工な女性を蔑視している嫌な男の言い分で感じ悪いんだけど。

 友人に確認すると、
「刺激的な内容って依頼で、タイトルと構成もライターにやってもらってる。修正が必要なら、直接やり取りして」
 とのこと。
”刺激的”にしようとしたら、こういう内容になっちゃったってわけか? っていうか、これ、どこをどう修正してもらえば、質を上げられるんだよ。

 とりあえず、ライターさんにメッセージを送り、タイトルにキーワードを入れてもらうように修正依頼をした。その反応で、記事の内容も修正してもらおうかと。

 結果。
修正前:まるで別人!?不細工女性と出会い付き合うことになったかわいそうな俺
修正後:まるで別人!?出会いのきっかけはアプリ!不細工女性と付き合うことになったかわいそうな俺

 あのぅ……。確かに修正はされてるけど、タイトル長すぎるし、どうしたらいいんだ。どう修正をすれば。

 結局、俺は納品された記事を元に、自分で記事を書きなおした。

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 次の納品記事。

「ジャンル:出会い系」
「キーワード:出会い 占い」

タイトル:占い師の予言は的中!出会い系で付き合えることに!
見出し1:恋人がいなかった私
見出し2:占い師に占ってもらう
見出し3:出会い系に登録して彼氏ができた

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 出会い系の宣伝というより、占い師がすごいみたいな記事内容になっているけど、これでいいのか?
 しかも、謎の改行しまくりや、展開が不自然すぎるんだけど。

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 記事の一部↓

 私は、もう、恋人ができないんじゃないかと思い込んでいました。
 でも!
 でもでもでも!!!
(謎の改行が5行続く)
 諦められなかったので、占い師さんにみてもらうことに!
 そこで、まさかの~~~~!
 あ、ちなみに、占い師さんは男性でした。でも、その占い師さんと付き合うことになったっていうことにはなりませんでした。
 ところで、占い師さんは言いました。

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 俺は頭が混乱して、友人に確認した。
「このライターさんたちに、いくらで執筆してもらってるの?」
 友人から、「1文字0.1円」と返ってきて、俺はガクッとうなだれる。
 低単価案件を受けているライターの気持ちもわかりすぎるくらいわかるから、思ってしまった。「なら仕方ない。できる限り俺が修正しよう」

 もちろん、友人にライターさんの単価アップを交渉したさ。この単価で、高い質の記事を求めるのは無理ってもの。
 しかし「予算ないんだよ。頼むわ」という一言で、一蹴されてしまった。

 連日、友人から記事のチェック依頼がやってくる。ライターさんの中には、修正依頼をしても返事が来ない、納期を平然と破る人もいて、対応に大忙し。低姿勢で修正をお願いしても、
「どこを直せばいいのか、意味不明です!」
 とキレるライターも出現。胃が痛い。体調悪い。

 俺は必死に、チェック、修正依頼、自分で修正、締め切りを過ぎているライターさんへの催促を行った。

 もう、無理。ライターやってた時より、しんどい。寝る暇もない。寝ても、夢の中で記事チェックをしてる。

 友人に「辞めたい」と告げるも、
「えー! 今は困るよ! もう少しがんばって欲しい! 少しだけど報酬アップするからさ!」
 懇願され、続ける羽目に。報酬アップって言ったって、寝る暇もなく作業していて、月に10万ちょっとって、ブラックだろ。俺の手際が悪すぎて、効率が上がらないのか?

 もう少し、もう少しだ。もう少しやったら、辞めよう。懇願されたって、負けてはいけない。辞めるんだ。クラウドソーシングで大きな報酬を得ている人もいるっていうのに、なんてザマ。こんなんだったら、時給でバイトしていたほうが気楽だよ。

 抜けだそう、クラウドソーシングから。俺には向いていないんだ。抜けるんだ、抜けるんだ、抜けよう!

 ピコン、とスマホの着信音が鳴った。
 納品記事チェックのお知らせだ。自然に体が動き、パソコン画面に向き直った。

 これは、あれだ。きついことでも、習慣にしてしまえばできるようになるっていう。俺の体は既に、納品記事チェックを習慣化してしまっているのだ。続けていれば、まともに稼げるようになるのか? 本当に? 本当にぃぃいいぃ!?

 1つの記事チェックをしている間にも、次の納品あった知らせが入る。クラウドソーシングのブラック・ループ!

※実話じゃないです。フィクションです。

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