見出し画像

初めての緊急入院、手術(3)「不可能を可能にしたリハビリ奮闘記」

大学病院に入院していた時、「どこまでの回復を望むか?」と相談員に聞かれ、「自活(一人暮らし)」と伝えた。相談員は顔を曇らせた。寝たきりで、声も出せず口をパクパクさせている状態を見て、「無理」と思ったのだろう。

リハビリ病院に転院した主治医との最初の面談の時、「退院後は施設に入る」選択もあることを告げられたけれど、「家に帰りたい」と伝えた。散らかしっぱなしで出てきてしまった我が家へ帰りたかった。

2019年11月16日 緊急入院
2019年11月22日 手術
2020年1月8日  リハビリ病院に転院

転院時、ほとんど寝たきりだった私は、2020年6月14日、両手杖で歩いて退院、我が家に帰り一人暮らしを果たしています
今回は寝たきりだった私が「良くなることしか考えず」5ヶ月間、リハビリに励み、不可能を可能にした奮闘記です!

リハビリ病院には奇蹟的な回復をされている方が複数いて、思うのは“奇蹟はいくらでも起こり得る”ってこと。

前回はこちら↓

甘さとの戦いで念願の普通食に

手術から約1ヶ月半、2020年1月8日にやっとリハビリ病院に転院できた。大学病院とは違い、穏やかな空気が流れていてホッとしたのを覚えている。

ナースコールを押せば、必ず看護師さんが来てくれるのにも感動。大学病院は忙しすぎて、何度鳴らしても来てくれないことがあったから。

リハビリ病院に転院後も、大学病院と同じく3種類のリハビリが受けられた。それぞれが平日は60分ずつ、土日祝日は20分ずつ(大学病院では平日20分ずつ、土日祝日は無し)。

・理学療法(PT:Physical Therapy)…足のリハビリ
・作業療法(OT:Occupational Therapy)…手のリハビリ
・言語聴覚療法(ST:Speech-Language-Hearing Therapy)…言葉(飲み込み)のリハビリ

転院当初、ST(飲み込み)のリハビリは楽しみだった。口から食事ができなかったけど、訓練でスプーン1杯の水や小さい氷を口に入れてもらえたから。

1月後半、口から食事が摂れるようになった。

初めは「なめらか食」と呼ばれるゼリー状の食事。忘れもしない、入院してから初めて口にした食事のメニューは「豚の生姜焼き」。本物ではなく、豚の生姜焼き風味のゼリー。

主治医の先生、訓練士さんがじっと見つめる中、約2ヶ月半ぶりの食事。美味しかった。感激しながら食べた。

口からの食事が始まると、PT(足のリハビリ)、OT(手のリハビリ)でも力が出るように。自分でも、体の内側から元気になるのがわかった。

なので、これは声を大にして言いたい。口から食事を摂ること、滅茶苦茶大切です。カロリーさえ摂っていればいいってわけじゃない。口から食べて、消化することで、全身の機能が働いて、元気になるんです。

「なめらか食」も慣れてくると、カロリーを高くするための甘~いゼリーを完食するのがつらくなってきた。半端ない甘さのゼリーが、なんと2つ以上ついてくる。

「修行だと思って頑張ってください! この次のステップに行くために!」
訓練士さんに励まされ、必死に完食した><

結果、1週間で「なめらか食」を卒業。やわらかご飯食に。その後、約1週間後の2月5日、普通食にステップアップ! 同時に喉のチューブも抜け、話せるように!\(^o^)/

2020年2月25日、平行棒内で歩く

普通食が食べられるようになったので、ST(飲み込み)のリハビリは卒業、その分の時間が振り分けられ、PT(足のリハビリ)が100分、OT(手のリハビリ)が80分、1日に受けられるようになった。

初めは車椅子に座った状態から、平行棒を両手でつかんで立ち上がる訓練をしていたのですが、2月25日、両手で平行棒をつかんだまま、平行棒の中を初めて歩いた

平行棒って、こういうの↓(モデルは私ではありません)

画像5

久しぶりに歩いた感動は忘れられない。「歩くって、なんて楽しいんだろう!」って。思えば私は歩くことが好きだった。

「すごく楽しそうにリハビリしてますよね」
入院仲間に言われた。入院中のリハビリは汗だくにもなったけれど、やめたいと思ったことはなかった。むしろ動けることが楽しくて、もっとたくさんやりたかった。

2020年3月6日、歩行器での訓練が始まる

3月6日には、歩行器での訓練が始まった。使っていたのは、一歩ずつ持ち上げながら歩く歩行器。下に車輪がついている歩行器の方が楽な気がしたけれど。

歩行器って、こういうの↓(モデルは私ではありません)

画像1

歩行器での訓練が始まったのは嬉しかったけれど、少し経つと、ぐらぐらして倒れそうで、「歩行器で歩くの怖い」と感じるように。

入院後数日で広がった痺れは、術後に軽くなったとはいえ、今でも残っている。痺れていても動けるので、「痺れていても動かすのだ!」と思い、やってきた。「痺れているので動かせません」なんて言ってたら、先に進めないから。
しかし足の裏も痺れているから、歩いていても感覚が鈍く、雲の上を歩いているみたいにふわふわする

「怖い」と思うと、腰が引ける。訓練するのも憂うつになる。もったいない。筋力がなくて思うように歩けないのは訓練するとしても、自分の中の恐怖心が歩く妨げになるなんて。

恐怖心をなくさなければと思い、簡単な方法を試したところ、成功。話が長くなるので、この方法については次回書きます。

「立ち上がる」にはどうしたら?

「椅子に座った状態から立ち上がる」
健康な時は、意識せずにできていたこと。
しかし、できなくなってみると、「歩く」のも「立ち上がる」のもどうやっていたのだろうと考えてしまう。

できないことがあると、ひたすら考えた。どうやったらできるのか? できていたのだから、できるはず。できるイメージが浮かんだら、イメージしながらインプット。できるイメージトレーニングをするの、メチャ大切

例えば「歩く」には、
1.片方の足を前に出し、かかとから地面につく
2.かかとからつま先に重心移動
3.つま先で蹴ると、もう片方の足が前に出る
(1.に戻って繰り返す)

「椅子から立ち上がる」簡単な方法は、
1.浅めに座る
2.手は膝の上
3.リラックスして(意気込みすぎると固まってしまう)
4.頭を、ぐっ、いーん!
⇒ぐっ、いーん! は、まず頭を前に突き出して、そこから上にあげていくこと。

画像5

2020年3月30日、両手杖で歩く

3月30日にはロフストランドクラッチという杖を渡され、訓練を始めた。2本の杖を両手に持った。

ロフストランドクラッチって、こういう杖。↓

画像3

私はこの両手杖で歩いて退院した。
今後、片手杖になり、フリーハンドになるのを目指している。

2020年4月5日、フリーハンドで立つ!

3月後半には、平行棒を自主練習する許可を得た。平行棒を使って立ち上がりや歩く練習が一人でもできるように。

クールな担当看護師さんが、
「転院してきたとき、歩けるようになるまで3ヶ月かかると思いました。でも2ヶ月半経ったとき、一人で歩いていましたね」
と話してくれた“2ヶ月半”の頃、私は平行棒内を一人で歩けるようになっていたのだ。

しかし実は、平行棒を持てば立ったり歩いたりできていたものの、フリーハンドで立つことに苦戦していた。

だって、冷静に考えてみてください。小さな足の裏だけで、縦長の体を支えて立ったり歩いたりって、すごく難しくないですか? 健康な時は難なくできてましたけど。

フリーハンドで立つと、前に傾いたり後ろに傾いたりと、悪戦苦闘。訓練後に必死に考えた。「どうしたら、バランスをとって立てるのか?」

バランスをとりやすい姿勢として、重心を落とす(腰の位置を低くする)を思いつく。

学生時代、所属していたバスケット部で言われていたこと。「腰を落とせ! 突っ立ったままの姿勢では、敵にぶつかられた時、すぐに倒れてしまう」

膝を曲げ、腰の位置を低くすることで、倒れにくい姿勢になる。そっか、中腰か! 中腰で安定して立ってから、少しずつ膝を伸ばしていけばいいんだ。

しかし平行棒を持ち、それを引っ張って立つ姿勢から、安定した中腰の姿勢になるのは難しく……。

う~ん……、と悩んでいましたが、ある日、突然フリーハンドで立つことに成功! 4月5日のこと。

座っている車椅子の手すりを使って立ち上がることを教えてもらったので、それを実践。そこで。
「ん? 中腰の姿勢になってる」

座った状態から、肩より上の位置にある平行棒をつかんで、引っ張るようにして立ち上がるのではなく、肩より下の位置にある車椅子の手すりに手を置き、体を持ち上げるように立ち上がる途中で、安定した中腰の姿勢になっていることを発見。さらに、そっと手を離してみると、フリーハンドで立てている!

そこから静かに腰を上げていき、中腰から膝を伸ばした姿勢になっても、立てるようになった。

バスケット部で教えられたイメージも大きかったですが、もっとわかりやすい?イメージとして、サルが原始人になり現代人になって二足歩行ができるようになった図。↓

画像4

手足を使って4本足で歩いていた姿勢から、腰を上げていき、二足歩行でもバランスがとれるようになった。このイメージ。

フリーハンドで立てるようになったときは嬉しくて、平行棒内で腰をフリフリしてみました(笑)

2020年5月6日、フリーハンドで歩く!

「立てたけど、フリーハンドで歩けないとなあ」
と思い続けていた、忘れもしないゴールデンウィークの最終日、5月6日。

平行棒での自主練習中、「なんとなくできそう」と、そっと手を離して歩いてみることを試すと、できた! なんとフリーハンドで歩けた! よちよち歩きですけど!

近くにいた入院仲間も「おぉ~♪」と喜んでくれた。

この時の感動も忘れられない。ここまでくれば大丈夫、と思った。ここからは練習して、もっと良い姿勢で歩けるようになるだけだから。

5月6日はフリーハンドで歩けた記念日。前かがみ気味ですが、少しずつ姿勢は直せるし!

なんで、いきなりできたのか。
たぶんバランス感覚が身についてきたからかと。例えば、バランス感覚を培うのにいいという、平行棒を両手で持って、「腰だけ左右にゆらゆら揺らして重心移動」を毎日やっていたから、かな?

退院前の約1ヶ月間、階段猛特訓

自宅は2階。一段21㎝の急な手すり無し階段を上り下りできなければ、部屋の出入りができない。

退院前の1ヶ月間は、階段の訓練最優先、猛特訓をした。両手に杖を持って。

階段を下りる時、最初、両手の杖を一段下に置くように言われた。その姿勢から足を下ろしていくようにと。

しかし、想像してみてください。
階段の下りで両手に持った杖を一段下に置くと、スキーのジャンパーみたいな姿勢になってしまう。
健康な時だって怖いであろう階段の下りで前かがみの姿勢をとり、不安定な足を下ろしていくって、すごく大変。というか無理><、

そこで「どうしたら両手に杖を持って階段を下りれるか?」を考えた。

入院仲間の「片方ずつ杖を下ろしてみたら?」が最初のヒント。そしてもしも健康な時、両手の杖を活かして階段を下りることになったらどうするか?を考えた。

編み出したのが、下記の方法。
1.右手の杖を一段下につく
2.右足と右手に重心を置く
3.左足を一段下におろす (へっぴり腰にならないことがポイント)
4.左足裏にまんべんなく重心が置けたことを確認
5.右足を一段下におろす
6.左手の杖をおろす

上るときの手順はこちら。
1.右足を一段上に置く
2.左手の杖を一段上に置く
3.右足を主に使い、左手杖も使いながら、まっすぐ上に伸びるように上がる(前のめり注意)
4.左足を一段上に置く

猛特訓の成果があって、退院して、我が家の出入りに必要な階段の上り下りに成功! 根気よく指導してくれた訓練士さんに感謝TT

OT(作業療法:Occupational Therapy)の訓練士さんはNO.1!

OTでは主に手の訓練。そのほか、生活に必要な動き、例えば服の脱着、お風呂に入る動作なども訓練する。

OTの訓練士さんは病院の都合で3回変わった。4月から担当してくださった訓練士さんは、最高だった。

手だけではなく、全身のストレッチを行い、体の調子を整えてくれる。お蔭様で、できることがぐんと増えた。
例えば↓
・爪切り
・髪の毛をゴムでまとめる
・左腕が上まであがる
・四つん這いで歩く

「四つん這い」について。
「這ってでも進め」と言うことがありますが、這う姿勢=四つん這いって、実は普通に立つよりも難しい。健康な時は気づかなかったけれど。

退院前の最後の訓練の時、伝えられてよかった。「私にとって、NO.1(の訓練士さん)です

リハビリ病院を退院し自宅へ

リハビリしてきて思うのは、最初はしんどいと思うことでもやることが大事ってこと。

例えば私は大学病院時代、歯みがきすらもしんどかったったけれど、リハビリになるからとやっているうちに苦も無くできるようになった。

再び、クールな担当看護師さんの言葉。
「有言実行できる人で、今まで診た中で、いちばん努力家で、いちばん回復が早く感じられました」
これ、「あのクールな看護師さんが言った?」と思うから、感動もひとしお。

「有言実行できる人」というのは、「家に帰り一人暮らしをしたい」を実現した意味かもしれない。看護師さんも当初、「一人暮らしは無理」と思っていたのかも。

努力家というのは、平行棒での自主練が許可されてから、毎日欠かさず朝練をしていたから? でも入院仲間、皆さん努力してますけどね。回復が早い方もいますし。

自分のことですもん、努力するのは当たり前。
思うように動けない体に寄り添ってくれた看護師さんたちや訓練士さんたちのおかげで、家に帰ることが実現した。自宅に帰った今だって、ヘルパーさんたちに助けられている。

「一人暮らしは無理」というところから不可能を可能にした奮闘記、でも実は、たくさんの力を貸してくださった方たちに恵まれて、ここまでこれた感謝の記録

<続く>

(次回、最終回は、首から下、全麻痺でもへこたれず回復してきた精神論?について。)

↓続きを書きました。


ご覧いただき、ありがとうございます!楽しんでいただけたら、スキしてもらえると、テンション上がります♡