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タモリさん

 私が初めてタモリさんを見た時は『笑っていいとも!』と『ミュージックステーション』だった。最初に言っておくと、タモリさんは、さん付けしないと呼べない。タモリなんて絶対呼べない。呼ぼうものなら、その無礼さがタモリさんに伝わってしまうような気がする。

 サングラスをかけてこの二つの番組の司会をするタモリさんは子供心に「興味なさそう」という感想が強かった。たまに外国人風のモノマネや動物のモノマネなどをする時だけ、周りの空気や流れなど無視して急にイキイキするように見える。個人的な感想ではあるが、サングラスをかけているのにその温度差ははっきり感じるものだったので「掴みどころがない」というのが私の最初の印象だ。自分が興味のないことは事務的にさばいているようにも見えたので余計に得体の知れなさを感じていた。

 だからタモリ倶楽部の空耳アワーを初めてみた時は、タモリさんが他の番組ではあまり見せないような表情と自然さでコメントしていることに驚いたし、何より空耳アワーは当時の私の「大人像」を覆すような面白い大人たちが出ていて、そんな魅力的な番組があることや、そういう大人たちの存在に驚いた。

 ただ毎回お尻の行列にびっくりし、隣の母が渋い顔をしているのに気がついて何時この番組は見ちゃダメという禁止令が出るかヒヤヒヤしながらオープニングのお尻が過ぎ去るのを無言で眺めた。お尻さえ乗り越えてしまえばこっちのものだった。あとはタモリさんと安斎肇がなんとかしてくれる。今思えば空耳アワーは大人たちの遊び場だったのかもしれない。子供の私はそれを楽しみにしていた小さな侵入者だった。

 子供の頃からの願い、大人になりきらないことを選んだような面白い大人たちにたくさん出会えますようにという祈りは最近叶えられている気がする。

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