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読んだ本

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読んだ本の感想です。基本、ネタバレはありません。
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#畠中恵

【読書】長編のほうがうまい~『いつまで』(畠中恵)~

畠中恵の「しゃばけ」シリーズ第22弾です。 ↑kindle版 今回はいつもの連作短編ではなく長編で、何と若だんなが5年後の世界に飛ばされてしまう話。やはり畠中さんは、長編のほうがうまいと思います。とはいえ結末の、なぜ若だんなが5年後の世界に飛ばされたかの謎が分かり、元の世界を目指そうとする部分は、ちょっと時間軸など、おかしい部分・都合がよすぎる部分がありますが。畠中さんは、ちょっと物語の結末が上手じゃない時がありますね。 今回騒動を引き起こすのは、己の不運を嘆き、人の幸

【読書】お寿ずさんなら……~『おやごころ まんまことシリーズ9』(畠中恵)~

畠中恵の「まんまこと」シリーズ第9弾です。 ↑kindle版 持ち込まれる厄介ごとを麻之助が片付けていくのが、シリーズのテーマとはいえ、何だかシリーズを追うごとに、勝手なことを言う登場人物が出てくることが増えており、そこはうんざりします。特に「たのまれごと」のお駒は最悪。友人の夫に、どのタイミングで入荷するか分からないレアな袋物をお願いするなんて、ありえません。「久方ぶりに前々からのお友達に会って、頼み事をされたんで、嬉しかったんです」(p.57)とお和歌は言っていました

年に1度のお馴染みの世界~『こいごころ』(畠中恵)~

畠中恵の「しゃばけ」シリーズ第21弾です。 ↑kindle版 マンネリもマンネリ、もうこのシリーズは読むのをやめても良いかなと思いつつ、新刊が出ると、一応チェックしてしまいます。とはいえ買わずに、図書館で借りて済ませているので、たいてい読むのは1年後くらいなわけですが。 今回も、何だか謎解きの詰めが甘い話があったりして、ちょっともう一つでした。中でも「せいぞろい」は、そもそもなぜ千両箱が川の中にあったかが説明されておらず、もやもやしました。まぁ私が読み落とした可能性もあ

若だんな抜きでがんばる妖たち~『またあおう しゃばけ外伝』(畠中恵)~

文庫オリジナルの、しゃばけシリーズ外伝です。 ↑kindle版 外伝ということで、すべての話が若だんな抜きで進行します。若だんながいなくても、問題解決のために一生懸命がんばる妖たちが健気です。特に屏風のぞきは、「若だんなであったら、こう考える」といって、いつになく(?)鋭い推測を表題作の「またあおう」で見せます。 「はじめての使い」は、戸塚だの品農坂だの境木だの保土ケ谷だの、横浜市民にお馴染みの地名が出てきて、楽しかったです。とはいえ楽しいだけではなく、とら次が自分の未

そろそろシリーズの終わりを考えても良い気もする~『もういちど しゃばけシリーズ20』(畠中恵)~

「しゃばけ」シリーズ第20弾です。 ↑kindle版 今回は若だんなが天の星の代替わりに巻き込まれ、何と赤子に戻ってしまうところから話が始まります。元の年齢に戻っていく過程で、病弱で思うように過ごせなかった子ども時代を、「もういちど」生き直すことになります。 とはいえ例のごとく様々な騒動に巻き込まれ、妖たちの助けを借りつつ事件を解決していくという流れは健在です。赤子に戻ったことで、なぜか丈夫になった若だんなが、いつもよりは自分の身体を使って事件解決に奔走できていますが。

明治という時代~『御坊日々』(畠中恵)~

毎度おなじみ畠中恵の時代ミステリーです。主人公のもとに厄介ごとが持ち込まれ、それを解決するというスタイルもお馴染みですし、連作短編が本全体で1つのお話を形成するというのも、いつものパターン。 ↑kindle版 ただし今回は、主人公がお坊さんというのが初めてのパターンですね(相場師でもありますが)。周囲の大勢の人間に助けられるのはお馴染みですが、ワトソン的な弟子が付いているというのも、珍しいかも。 割とするする読める作品ですが、ちょっと嫌になったのは、厄介ごとを持ち込む人

みんな麻之助に頼りすぎ~『いわいごと まんまことシリーズ8』(畠中恵)~

畠中恵の「まんまこと」シリーズ第8弾です。題名が『いわいごと』で、表紙が綿帽子をかぶったお嫁さんであることから分かる通り、主人公の麻之助をはじめ、様々な登場人物の縁談がこの巻の主テーマです。 ↑kindle版 今巻は、近年の畠中作品に稀にみる読みやすさでした。たまたま事故渋滞に巻き込まれたバスの車内で、まとまって読む時間が取れたというのもありますが、3日ほどで完読することができました。 ただ、読んでいるうちに、次第に疲れてきました。みんな、麻之助に頼りすぎなのです。町名

若だんなに、商人の跡取りらしい顔が出てきた~『いちねんかん しゃばけシリーズ19』(畠中恵)~

しゃばけシリーズの19巻目、1年遅れで読みました。 18巻目の『てんげんつう』も1年遅れで読んだんですよね。図書館で借りて読んでいるもので、予約してずっと待っていると、こうなってしまいます。ちなみに先月、20巻目の『もういちど』が出ているのですが、これまた読むのは1年後かもしれません(^-^; 今巻では、若だんなの両親が九州に湯治に行ってしまい、その留守を若だんなが預かる1年間が、例のごとく連作短編で描かれます。 この一節に、にやっとしてしまいました。何せ事件は起きても

楽しく読みすすめたものの……~『猫君』(畠中恵)~

*この記事は2020年10月のブログの記事を再構成したものです。 畠中さん得意の、江戸時代の妖ものです。とはいえ「しゃばけ」シリーズをはじめ、他の江戸時代の妖ものとは完全別物です。同じキーワードから、別のシリーズをいくつも作れるのはすごい! ↑kindle版 今回の主人公は猫又で、なかなか楽しく読みすすめました。日本史上有名なあの人たちが実は猫又、という設定は、ちょっと面白かったです。隠れテーマとして、「訊きたいことは正面からちゃんと訊こう」というのがあった気がします。

作品の出来が、安定してきた~『てんげんつう しゃばけシリーズ18』(畠中恵)~

*この記事は2020年9月のブログの記事を再構成したものです。 「しゃばけ」シリーズの18冊目、1年遅れで読みました。 ↑kindle版(*2021年6月24日に発売されます) 私が散々、作品の出来にムラがあると書き続けてきた畠中恵ですが、小説家デビューから約20年にして、去年出版のものぐらいから、ようやく作品の出来が安定してきた気がします。 今回の『てんげんつう』だけでなく、以前レビューした『わが殿』(上下巻)も、よく出来ているので。 今回はどの短編も登場人物が多

大河ドラマにしてほしい~『わが殿 下』(畠中恵)~

*これは2020年8月のブログの記事を再構成したものです。 『わが殿』下巻、読了しました。 ↑kindle版 上巻の終わりではまだまだ残っていた借金ですが、下巻の割と早い段階でほぼ返済の目途がつき、びっくり。「わしの打ち出の小槌」と殿に呼ばれた七郎右衛門の手腕、半端ないです。 ただ、もちろんそれで終わりではありません。時は幕末、移りゆく世に合わせ、大野藩も西洋のものを取り入れたりして、出費がかさんでいきます。そしてこんなに奮闘しているのに、それに伴う七郎右衛門の出世を

果たして借金は完済できるのか~『わが殿 上』(畠中恵)~

*この記事は2020年8月のブログの記事を、再構成したものです。 私が知る限り初の、畠中恵の上下巻からなる長編です。実在の人物をモチーフにするのも、初めてだそうです。 ↑kindle版 越前国にある四万石の大野藩が抱えた九万両の借金の返済に向け、八十石の家柄の七郎右衛門が奔走する話です。主君から打ち出の小槌呼ばわりされる七郎右衛門が借金返済に向けて奮闘しても、従来通りのやり方を捨てられない保守勢力から足を引っ張られたり、文字通り山から突き落とされたりします。 何とか道

面白くなってきました~『かわたれどき まんまことシリーズ7』(畠中恵)~

*この記事は2020年7月のブログの記事を再構成したものです。 畠中恵の「まんまことシリーズ」第7弾です。主人公の麻之助もようやく亡くした妻のお寿ずの名を口にしなくなり、いよいよ後添えをもらう話が本格化してきます。 ↑kindle版 と思ったら、冒頭であっさり、後添えの有力候補だったおこ乃ちゃんの嫁入りが決まります。でもじきに別の有力候補が、しかも二人も登場! お寿ず亡き後の「まんまことシリーズ」は正直あまり好きになれなかったのですが、ここにきて面白くなってきました。

沙羅のポイントが下がった~『若様とロマン』(畠中恵)~

*この記事は2020年6月のブログの記事を、再構成したものです。 畠中恵の「若様組」シリーズ第3弾です。いよいよ近づきつつある戦争を回避しようと、若様組の保護者の一人である小泉家のご当主が編み出した手は、なんと若様たちのお見合い! 結婚を通じ、戦争回避を目指す運動の味方を作ろうというのです。 ↑kindle版 お見合いが成功することもあれば失敗することもあり、それなりに楽しく読んでいたのですが、小泉家の一人娘であり、若様たちのマドンナでもある沙羅の夢が絡んできたあたりか