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敢えて"ひとり"

日本国内でも海外でも、ひとりで旅行をしていると話し掛けられる機会が増える。

近所のスーパーに買い物に行ったって、知らない人から話し掛けられることは滅多にないだろう。

というか、わたしの自宅から半径5㎞圏内にスーパーはないし、あっても農協の直営店と良心市(野菜や花を売っている無人の棚店)。コンビニもないから、話しかけられることはない。

とはいえ、街中でショッピング中に、偶然、昔の同僚や知り合いに出くわすこともある。

「お久しぶり~」とか言いながら、内心では「誰やっけ?」と焦りながら脳内記憶を検索しては、老化を思い知る。

若い頃には、京都の街中をひとりで歩くと、ナンパやらスカウトやら、人並みに声も掛けられて自己満足に浸れたが、ある年齢からはピタッと止まった。

ひとりで行動する、取り巻きが不在、味方がいないという状況は、危険もあるが、色んな人に近づいて来てもらえる。出会いの機会が増えるということだろう。

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海外旅行中もひとりだったわたし。無防備なわたしに現地の人や、同じようにひとりで旅する人たちが話し掛けてくれた。

「ひとりで夜道を歩くのは危ない」と、手を繋いで滞在先まで案内してくれた男性。

今なら絶対にやらないが、若さという無謀も手伝って、手を繋いで歩いた。

「せっかくだから家に泊まっていきなさい」長距離バスの中で知り合った、見知らぬ女性からの誘いで、彼女の家に2泊。

着ぐるみ剥がされて、荷物も取られて、放置されても仕方がないような無防備さだ。でも楽しい時間を過ごした。

長距離バスの移動で疲れていたわたし。見知らぬ女性の家族と一緒に食事をし、見知らぬ女性のベッドで目覚めた時は、そんな現実がおかしかった。

中国で腕を折って手術。派手な三角巾で腕を吊っていた日本女性がひとり。もし、周りに援助する味方がたくさんいたら、「日本まで荷物を持ちますよ」な~んて声を掛ける人はいないだろう。

素敵な出会いと危険は隣り合わせだ。でも、若いうちにかすり傷ですむ危険を経験して、危険回避能力を身に付けておくのは悪くないだろう。

敢えてひとり。敢えて味方を作らない、孤軍奮闘な生き方は、人生の可能性を広げるし、人生を豊かにする。

ただ、人を見極める目は養っておかないと、狩られて終わりだ。


イラストは、318sioさんのものです。