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第49回:化粧品をカガクします!

 物理ネタが尽きてきたので、私が苦手な化学の話。 受け売りの部分が多いので、間違っていてもご愛嬌で許してください。 専門分野以外の知識って、そんなもんですよね。

メーキャップ用化粧品(wikipediaより引用)


 さて、予防線は十分張ったので化学の話、化粧品の話です。 1990年代半ばまで、化粧は厚ぼったく、一目見ただけで「化粧をしている」と分かるものでした。

 しかし、その常識もナノ粒子と光の分散技術によってひっくり返されてしまいます。つまり人間の眼は、8K解像度を理解できないように(詳細は下記のリンク)、ナノレベルの物質を認識することは困難なのです。だから名のレベルのものを塗っても、人は何も塗ってないように錯覚しまうのです。これが世にいうナチュラルメイクです。

 で、ナチュラルメイクをもう少しだけ化学の眼で読み解くとこんな感じになります。

 肌に塗布したナチュラルメイク化粧品は膜となって顔表面を覆います。そして、その中に含まれている酸化チタン、酸化鉄などの微粒子がシミなどを隠しながら光を散乱させ、白く綺麗に見せるのです。

 ただ、このように綺麗に見せるためには条件があります。つまり、名のサイズの化粧品の粒子の粒の大きさが揃っていないと、光の反射が不均一になり、ナチュラルに見えないのです。それをナノサイズ(コピー用紙の厚さと同等以下)で粒子の大きさをそろえ、均一にした粉末を出しているのがナチュラルメイクなのです。ね、化粧品って、めちゃくちゃハイテクでしょ?

 でも、これだけじゃないんですよ。化粧品の進化はまだまだ続いているんです。まず 肌のシミを隠すことができたら、次はシワと毛穴ですを隠したいと思うじゃないですか? そして、これを隠すために完成したのが、ソフトフォーカス効果と言われる技術です。

 具体的には、光を散乱しつつ透過もするという高度な技術です。例えば水面に光を当てると、「透過する光」と「反射する光」に分かれますよね? これをナノレベルでやるのです。そして、この技術をさらに前進させたのがシリコーンゲルの微粒子です。 これにより、光をある程度透過しつつ、散乱させて白く見せるのです。そうやって地肌のまま美しくしてくれるのです。


シリコーンゲルの微粒子(wikipediaに引用)

 さて次はファンデーション、肌色の調整です。これはパール顔料を使うのですが、原理はこんな感じです。主にマイカ、いわゆる雲母の板状結晶の表面を酸化チタン粒子でコーティングしたものをパール顔料として使います。ちなみクルマの塗装で使うマイカも同じ雲母ですが、 化粧品に使うものは「粒度」が「ナノレベル」で大きさがほぼ同じという化け物レベルの加工技術です。

 ちなみにこの顔料、干渉光によって赤・青・緑・黄や金・銀など、コーティングの厚さを調整することで多彩な色を出すことが出来るのです。 これにより微粒子のコーティング厚を調整することが出来るようになり、メイクアップの技術は大幅に進歩します。

 次にお話するのが日焼け止め。 日焼け止め化粧品のサンスクリーン剤には、紫外線を吸収する物質も含まれています。具体的には紫外線を吸収して熱に変換します。 これ、いわゆる吸熱材です。これをナノレベルで「個人レベルの肌のバラツキ」も考慮して「適度」な吸熱をするのです。

 前述した酸化チタンも、紫外線を散乱させる散乱材としての働きを持ちます。吸収と散乱によって、肌を紫外線から守っています。 微粒子、特にナノサイズはとても凝集し易いため、均一に分散させるための様々な工夫が凝らされているのです。なぜなら上手く分散していないと、粒子の塊が発生し、白浮きなどの原因になってしまいます。

 そこで、これをうまく分散のさせるために界面活性剤や機械分散技術が活用されており、使用する物質によっては、水性成分と油性成分をエマルションにして均一にしたりします。


エマルションの過程(wikipediaより引用)
A 相I, IIは、互いに混じり合わない
B. 攪拌すると、相IIが相Iに分散する
C.分散後に放置すると、徐々に分離する
D.界面活性剤(粒子の周りの輪郭)を添加することにより安定する

 また、クリーム状の化粧品を塗り易くするため、チキソトロピー性を持たせているものもあります。 ちなみにチキソトロピー性とは、普段は流動性の無いゲル状の物質なのに、力をかけるとチューブから押し出るとか、塗って広がるとか、そんな流動性を持った液状になる特性です。 この性質は品質保持にも効果的です。力を加えていない、つまり容器に入っているときはゲル状のため、微粒子や紫外線吸収剤などが均一に分散された状態を維持出来るんですね。

チキソトロピー性(wikipediaより引用)

 てなわけで、どうでしたか? 受け売りの部分も多くて、理解が薄いので専門用語だらけになってしまっていますが、これが最先端化学の世界です。 ある意味では、女性の化粧品のマーケットの大きさを物語っているエピソードなのかもしれませんが、 良くも悪くも、化学の進歩は女性用化粧品にあったと言えます。

 そして、そのパイを最先端化学企業が奪い合っているといっても過言ではないのです。

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