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【エッセイ】だからロフトベッドを1人で組み立てるなとあれほど説明書に書いたのに

※この記事に書かれているのは失敗談です。真似しないでください。


部屋の省スペースのため、ロフトベッドを買ってみた。
通販で家具を買うと、大抵組み立て式。自慢じゃないが、家具の組み立ては結構手慣れている。

というのも、初めて一人暮らしを始めた時に買ったテレビ台が、あり得ないほど工程が多かったのだ。ネジの番号がAからZまであったし、ステップは30を超えていた。もはや組み立ての域を超えている。完成に6時間以上かかったし。
とにかくそれで洗礼を受けた。あれを作れたらもう何でもできるだろう。

だから、今回ロフトベッドを買った時も何の心配もしていなかった。なんなら、
完成形がでかい=部品がでかい=ネジもでかい=作業工程が少ない=楽勝だぜ!
とすら思っていた。

いざ、ベッドを組み立て!

ベッドが届いた。来たのがどデカくて激重ダンボールだったので、さすがに少し不安がよぎった。工程が少なくてもこれだけデカいと多少大変そうだ、と。
この不安はのちに生きるか死ぬかの選択肢に変わる…

組み立て前のパーツたち

大まかに言うと、ベッドの上半分と下半分に分けて作っていく流れだ。組み立て自体は横に倒した状態で進めるので、そこまで大変ではない。

説明書の完成図

私はベッドの上半分と下半分を作り終えた。あとはガッチャンコすれば概ね完成。という段階で、こんな一文が登場した。

「ベッドを縦に起こす」

「あっ」と思った。さっき、上半分の方を少し持ち上げようとしたら、全然動かなかった気がする。試しに両手でベッドを掴み、改めて持ち上げようとしてみた。

…ピクリとも動かない。

私はサーっと青ざめた。まずい。動かすことすらできないなら、私は一晩どこで寝たらいいのか。狭い部屋にドーンと横たわったベッドを見て絶望した。どうにかしなくては。
ベッドの色々なところに手をかけ、持ち上げようと何度も試みた。だが、どう頑張っても微動だにしない。

「どうしよう、動かない…」

困った時に頼れる男がいない

誰か人を呼ぶか?どう考えても男手が必要だ。
でもいきなり呼びつけて「ベッド組み立てるの手伝ってくんない?!」と言えるほどフランクな仲の男がいない。
あまりにもいないので、最終手段として私の頭に浮かんだのは行きつけの美容室の美容師だった。
「まだいるかな…」と考えた。「いるかな?」じゃねーよwと今では突っ込みたいところだが、この時はそんなあり得ない発想をするほど追い込まれていた。

いったん冷静になり美容師を頭から消し去った後、YouTubeで「ロフトベッド 組み立て」と検索した。
すると、同じような状況の女性を発見した。彼女は力ずくでなんとか起こせたようだ。が、それもかなり無理がある様子で、やはり1人で作業するのは危険だということだけ分かった。
誰も頼れないので、とりあえず同志を見つけて自分を励ました。

私は説明書の工程とは違うやり方をすることに。

説明書「横の状態で上に中を挿す→縦にして下に挿す」
私「先に縦で中を下に挿してから上も縦に起こして挿す」

要は、上半分・下半分と言ってはいたが、実際は3分の1と3分の2になっていた。真ん中のパーツを上に挿せば上が3分の2になるし、下に挿しておけば下が3分の2になる、といったイメージ。前者が本来の手順だが、後者に変更して進めるか試すことにした。
ここでの問題もやはり重いことだったが、今のところ手段はこれしかないらしい。私は腹を括った。

最終手段実行

上半分からパーツを減らして下半分に移した。すると、先程までピクリともしなかったベッドの上半分が持ち上がった。
これならどうにか…!と思ったが、ベッドの下半分が長くなったことによって、上半分を挿すには持ち上げる高さがかなり必要になってしまった。とてもじゃないけどそんなに持ち上げられない。説明書で下半分を3分の1にしていた理由はここにあった。

普通にやってもダメだというのはこの数十分で学んだので、下に大きいクッションを敷いた。数センチでいいから高くしたかった。

クッション、死なないでね

力ずくでグググ…と押し上げた。これでもかなり無理がある。持ち上げてしまった手前、一瞬でも気を緩めたらパーツとパーツに手を挟んで大惨事になるかもしれない。はたまた、ベッドが倒れて下敷きになるかも。。
なかなか上がりきらない。でも下ろすこともできない。
私はこう思った。

失敗して、壁に穴を開けてマンションの管理会社に賠償するか
自分がベッドに潰されて死ぬかー

走馬灯のように今までの記憶がよぎった。完全に死ぬ方を想定している。

しかし、奇跡的にベッドの脚2本がハマった。
片側がハマれば何とかなる!!


ガチャッ。


ハマった……
なんとかベッドが完成。脳内BGMは完全にロッキーのテーマだった。その場でバタッと倒れ込む私。

倒れたところに説明書が落ちていて、ある一文が目に入った。


「1人で組み立てないでください」


私はこの最重要項目について見覚えがない。記憶にございません。

人は、最悪の事態を見たり聞いたり体験しないと、リスクヘッジがいかに大切か学ぶことができないのか?
信号無視、煽り運転、飲酒運転をすればどのような結末が待っているかは教習所がビデオを使って教えてくれる。「こうならないように気をつけよう」と自分を戒める。
だが、「危ないから禁止」とだけ言われると頭に入らない。その下にちゃんと、ベッドの下敷きになる人間や壁に穴が空いたイラストを描いてくれないと。
…なんつーユーザーだ。もうこんなやつにロフトベッドを売らなくてよろしい。

とにかく、壁に穴を開けることも、自分が潰されることも、美容師に連絡することもなく無事に就寝することができた。美容師に連絡していたら、美容院の中で話のネタにされぐちゃぐちゃにされていただろう。
その時私につけられるあだ名は間違いなく「ロフトベッド」だ。

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