孤独なお母さんも、つながればきっと大丈夫
マーガレットこどもクリニックの医師 吉野ラモナです。月曜日と金曜日の診察を担当しています。私は先日9月18日に第一回を終えた育児サロンの報告とそこでの気づきについて記してみたいと思います。
私が勤めるマーガレットこどもクリニックで育児サロンがスタートした。
その名も「ぎゅっとタイム」
子ども、家族、自分をぎゅっと抱きしめてほしい、仲間とぎゅっと手をつないで支え合って欲しい、そんなスタッフの想いがぎゅっと詰まっている。
第一回目を終えて、私はこういう活動をする為に小児科医になったのかもしれないと思うくらい、気持ちが満たされた。参加して下さった方々、そして下準備や裏仕事で関わってくれた全てのスタッフに、この場を借りてお礼を言いたい。
新型コロナが流行りだした頃、3年前に放送されたNHKの番組をみた。現代の日本の育児は「不安と孤独」であり、「ママ達が非常事態」だと報道されていた。
かつての自分の孤独育児の辛さが蘇ってくると同時に、コロナ禍でさらに孤独状態になっているはずの世の多くの親子を心配せずにはいられなかった。
そんな折、院長から「育児サロンをやってみない?」と声をかけられた。クリニックはコロナ禍で患者数が減り、閑散としていた。空いた時間に院長はスタッフとともに、うちのクリニックだからこそ提供できる価値を熟考した。
その一つが、この「ぎゅっとタイム」。子育て不安に寄り添い、正しい情報提供をするだけでなく、クリニックを拠点に保護者同士が繋がる場を提供しようというミッションであった。
先の私の心配に対して、育児サロンという形で自分なりの働きかけができる機会が得られた喜びと、院長が私に任せてくれた喜びで、準備から当日まで私の心はずっとわくわくしていた。
ご参加くださった方々は、想像していた通りコロナの影響で自宅に閉じこもりがちで、仲間を求めていた。参加後の意見交換やアンケートでは、
「勇気を出して参加して良かった」
「参加できた事自体が自信になった」
「これをきっかけに外へ出てみようと思えた」
「クリニックが身近に感じられ、居場所が見つかった」
「この活動を継続してより多くの親子に届けて欲しい」
などの嬉しい感想を沢山いただいた。
(当日の様子 写真右が吉野医師)
お母さんって何だろう、母子関係ってどんなだろう。
私は幼い頃からずっと考えてきた。外国人である私の母は、1歳の私を日本に残して母国へ帰ってしまった。だから私は母というものを知らない。その代わりに、父や祖父母をはじめ、近くに住む親戚や知人が私を気にかけてくれ、たくさんの愛情をもらい不自由なく育った。友達にもとても恵まれた。
けれども心は脆くて不安定な子だった。周囲の人の感情にとても敏感な子だった。心の不調が身体の不調になりやすい子だった。
そんな私が小児科医になったのは、子どもの心に寄り添いたかったからだ。
そして、医師生活4年が過ぎて母となった。母になれた喜びは人生でこれまで感じた事のない大きな喜びだった。我が子は本当に可愛くて仕方がなかった。
それにも関わらず、母親業だけの日々は私を苦しめた。それまでの仕事中心の生活から、急に家庭に入った変化も大きかったが、何より辛かったのは孤独だった。夫の勤務の都合で、知り合いが全くいない土地での育児生活だったのだ。夫は早朝出勤の深夜帰りで、ほとんど不在だった。
そんな日々が辛くて早く仕事復帰したい気持ちと、初めて勤務する大学病院で両立していけるのか不安な気持ちとで葛藤をしながら、1年間の専業主婦生活を終えて仕事復帰をした。この頃は母としても医師としても中途半端でとても苦しくて、その苦しみを共有できるママ友もいなかった。
ところが、第二子が産まれて再び休職し、その後に転居した先で、近所に多くのママ友ができ始めた。「ちょっと子どもを預かって」とお互い気軽に頼み合えた。ファミリーサポートのおばちゃんも本当に心強い存在で、彼女がいたからこそ安心して仕事が続けられた。
気付けば子育てが楽しくて仕方がなかった。人との繋がりがこれほどまでに私を変えてくれた。そして育児と両立しやすい今の職場にご縁をいただき、第3子も授かり、なんと人や環境に恵まれた人生だろうかと、もう感謝しかない。
正直なところ、医師としては半人前のまま年齢だけを重ねているのではないかと不安になる時もある。でも一方では、町のクリニックの小児科医としては、まずまず良い経験が出来ているとも思える。
なぜならお母さん業にどっぷりはまって悩んだり苦しんだりした経験が、育児支援の場で役にたっているからだ。子どもの心に寄り添うのはもちろんだが、それを下支えする為にも、育児不安のお母さん達にきちんと寄り添う医師でありたい。
今になってふと思う、私の母も孤独だったのだろうと。
一回の診察や育児サロンで出来る事はほんの少しだけれど、お母さん達がその人らしく成長できるように、私は安全な居場所でありたい。孤独なお母さんを一人でも無くしたい。
今回の「ぎゅっとタイム」をやってみて、ますますその想いが強くなった。
<マーガレットこどもクリニックでは不定期で「ぎゅっとタイム」を開催しています。開催の詳細は以下よりご覧ください。>
********
マーガレットこどもクリニックWebsite
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?