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「やばい」戦争

「やばい」って汎用性高過ぎるんですよね。全ての形容詞要らなくなるんじゃないかってレベルでみんな「やばい」って言いますもんね、私も言います。すごいし危ないし、可愛いしかっこいいんだよ?やばすぎ。

何でも「やばい」って返しとけば大体相手が意味を勝手に脳内変換してくれるから楽だし。たとえば自分が「新しい服なんだけど、どう?」って笑顔で言って、相手が「えー、やばーい!」って返してきたら「えー、おしゃれー!」「えー、かっこいいい!(かわいい!)」だと思うじゃないですか。「えー、やばーい!(ださーい!)」だとは思わないじゃないですか。だから、リアクションする側としてもめっちゃ使い勝手いい。楽。

語彙の抽斗なんて錆び尽く。思考なんてする必要ない。現代を表すのにぴったりな、全てを網羅した言葉ですね。

先日ネット配信を観ていたら、私と友人どっちがやばいかみたいな話に一瞬なって。MCの人は友人の方が「やばい」と。私からしたらそのやばいの意味がどの意味かわかんないからきょとんとして観ていたんですけど。その根拠として挙げたのが「ピアス二十個あいてて、昔のヘアカラーがシルバーだった」から。ピアスいっぱいつけてヘアカラーが奇抜ならやばいのか~。じゃあ私はやばくないな~。みたいなね。その発言をした時点で、MCの方の言う「やばい」は「外見の奇抜さ」に落ち着いてしまうんですよね。他の「やばい」なら私の方が「やばい」可能性を含んでいるし、逆にやっぱり友人の方が「やばい」かもしれない。

大体、さっきも述べたように「やばい」は全てを網羅しているから「どっちがやばいか」みたいなのには不向きな話題なんですよ。「可愛い」なのかもしれないし「頭がおかしい」なのかもしれないし(後者の表現もまた曖昧なのでどんどん突き詰めないとその意図はわからない)。

否、そもそも。そもそもですよ? 「やばい」に否定的なニュアンスが含まれているのだから他者に急に「やばい」とか言っちゃだめなんですよね。「やばいね、キミ!」ってあなたが「可愛いね!」と思って発言したとしても、相手は「ブスだね!」って思う可能性を鑑みました? 傷ついたり、怒ったりすることだってある。だって、「やばい」はそれだけ多様な意味合いを含んでいるんだもの。


ハリウッドザコシショウの「ヤバいサラリーマン」ていうネタ。めっちゃ好きなやつなんですけど、あれって、ザコシ(大好き)の見た、もしくはイメージした、色々なことに対応しきれなくて、大人だからもうどこにもぶつけられなくて、みたいな、複雑な要素を絡めたサラリーマンのモノマネなんですよね。現代社会を生きていて、どうしようもなく切羽詰まって、おかしくなっちゃった人じゃないですか。あれってマジで一言で説明するなら「ヤバいサラリーマン」なんですよね。「怒った」とか「怖い」じゃだめなんですよ。誰もが「ヤバい」って思える対象だから。ザコシ(バティオスくらいの箱で単独ライブやってほしい)は今まで出会った「やばい」の使い方史上最適な使い方をしていると思います。


まあでも、「やばい」って言葉は好きですよ。前述した通り使い勝手が頗るいいので。何より、嘘をつく必要がないのが最高。「ださい」「かっこ悪い」と思っても、「やばい」って言えば嘘をつかずに相手を喜ばせる可能性があるので。野党が与党にヤジで「やばーい!」って言ったら、与党は「ありがとう」と答えちゃうくらい。

「やばい」という言葉が急になくなったら、日本では紛争が起きます。嘘をつける人は疲弊して、つけない人たちは対立します。ネットはあちらこちらで大炎上。いずれは戦争です。「やばい」戦争。


なんて、極論を言う人が一番やばくて無理なんだよな~。

あ、これは嫌いって意味です。お粗末様でした。

来世は幸せ。