アディショナル考

ロスタイム、すなわち「失われた時間」と呼ばれていたものはアディショナルタイム「加えられる時間」に変化した。
アディショナルタイムとはサッカーの試合における規定時間90分間のプレー中に空費された時間分を前後半の45分間にプラスして試合を続行するものである。
怪我人の治療や時間稼ぎなどで費やされた時間を45分間経過後に「付加して」互いに不利益がないようにしてあげるアディショナルタイム。

VARの普及によって空費された時間がより正確に近い値で算定されるようになり、前半で平均2分、後半で平均4〜5分、1試合平均しても、まぁ約5分でしょうね。とされていたアディショナルタイムが本田圭佑さんが思わず絶叫するほど延長されてしまうことに。

カタールW杯の1試合の平均時間(延長戦除く)は「100分23秒」※
つまり、平均アディショナルタイムは10分を超えてしまっている。
プレーが途切れない「インプレー率」は57.3%※で、1試合のうち約6割しかプレーが連続していないという衝撃の統計結果。
欧州5大リーグにおいては1試合平均時間最長はスペインのラ・リーガで「98分16秒」で、インプレー率は54.6%(5大リーグ中最低)
フランスのリーグ・アン(96分25秒)が最短時間で、インプレー率は最も高い58.1%となっている。※
【※サッカーキングWEB記事「サッカー1試合の本当の時間は? 欧州5大リーグのインプレー時間に注目」より】

ということは、リーグアンの試合が最も密度が濃く、ラ・リーガの試合が最も退屈。そこまで言ってしまうと失礼だが、象徴的なチームであるバルサがポゼッションを志向するわりに、インプレー率が低くロスタイムが多いというのがスペインリーグの特徴となってしまっている。

今まではVARで正確に測るなんてことをしてなかったので「8分追加」なんて表示を出そうもんならスタジアムのサポーターからブーイングを浴び、アディショナルタイム中に逆転されて負けた監督からは「ホームチームに有利な数字を審判が掲げていて驚いた。」なんて批判される始末。

しかしながら、今は前半戦のアディショナルタイム7分と表示されても、あまり驚かなくなったよね。
さて、VAR前後で計算してみると平均5分→平均10分の5分間の差がある。規定時間の90分間を厳密に守れていなかったころは5分間を差し引いた、正味85分間しか選手たちはプレーしていなかったことになるのでは。みなさん結構サボってた感じですね。。。
規定時間”ちゃんと”プレーするためのルールではあるものの、このまま、まともにアディショナルタイムを追加されてしまうと、今季リーグカップCL3冠に迫るマンチェスターCのハーランドがCL決勝含めて年間出場数59試合なので60として、さらにハーランドは出てないけどW杯の試合だって今年あったので、代表戦のアレコレも含めて70試合として計350分、年間で4試合弱のアディショナルタイムが追加される!
そう、あのVARの厳密さによって!!!

オフサイド考も後で気が向いたら書こうと思うけど、そもそもオフサイドの定義というかルールが定められた経緯や趣旨と、VARによるテクノロジーの厳密さに乖離が起きている。どうも魔道の兵器ってのが好きになれんのだよなぁ。
90分間ちゃんと戦え!走りぬけ!という趣旨のもと定められたアディショナルタイム。厳密に付与することで両チームの公平性は保たれるかもしれないが、より過密日程を選手に強いることで怪我のリスクが高まってしまうのではないか。代表に選出されるような優秀な選手であるほど摩耗していく。厳密に冷徹に加えられていくアディショナルタイムによって。

厳密なことは本当にいいことか?
怪我のリスクが増えて治療に時間を費やして、その空費した時間をアディショナルタイムに加えて、また怪我のリスクを上昇させていく・・・
テクノロジーに任せる部分と人間が判断する部分を整理しなおす必要があると思うなぁ。

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