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読書ノート 『いちばんの願い』

作品:いちばんの願い
作者:トーン•テレヘン
訳者:長山さき
 絵:祖敷大輔
出版:新潮社
頁数:176
単行本:2023.12.14

願いが実現しないかぎり、願いは存在しつづける

ホタルは太陽のように輝きたい。
クマは二度とケーキを食べたくない。
アリはリスと真剣に話したい。
カメはカタツムリにやさしくされたい。
フクロウは願いなんかもちたくない――。

63のどうぶつそれぞれに、まったくばらばらの奇妙で切実な願いがあり、その奇妙さがわたしたちの心を映しだす。
大人気のシリーズ最新刊。

新潮社HPより

『ハリネズミの願い』
『きげんのいいリス』
『キリギリスのしあわせ』
テレヘンさんの《どうぶつ物語》第4段

この世界では動物や虫たちのサイズ感はみんなおなじ。
それぞれの特徴がしっかり出ていて、会話の内容が面白い。


探検家であることが夢のツチブタは茂みを探検旅行していた。
茂みの隙間から現れたコオロギは、毎日この茂みを散歩しているというではないか。
ショックを受けて家に帰ったツチブタは、明日は海にいこうと考える。
無人島をみつけて、砂浜に「発見済み」の看板を立てるんだと意気込んでいる。
自分が発見したと誰かが勘違いしないように。

昭和の少年はこんなやついっぱいいた。
昔を懐かしく思う歳になったんだなあと実感してしまう。


目立ちたいと考えるトカゲは、鏡に映る平凡な顔が嫌だった。
アリに話すと、誰でも目立たないという。
僕が目立ってるとこ、ある?と聞いてきた。
トカゲは、ないと答える。
その答えにアリは満足して去っていく。
ライオンのように叫んでみても、目立っていないといわれたトカゲは、ジャケットと山高帽を捨てて家に帰る。
翌朝もう一度鏡を覗きこんでから投げ捨てた。

自分が気にしているだけで周りはまったく気にしていない。
だいたいそんなもんだよね。
それでも周りを意識してしまうし、意識しなくなったらそれはそれで困ったことになる。


モグラ限定で訪問を望むミミズ。
2度とケーキを食べたくないクマ。
フタコブラクダを見下したいミツコブラクダになりたいヒトコブラクダ。
ビューティーコンテストで優勝したいゴキブリ。
自分の背中でパーティをしたいクジラ。
世界でもっともありふれたどうぶつになりたいマンモス。

このような話が63編も収録されている。
それぞれに懐かしさがあり、教えがあり、繰り返し読みたくなる1冊。


願いといえば聞こえはいいけれど、願いを持ちたくない願いもあるし、願いが持てない苦悩もあるだろう。

願いの詰まった童話となっており、もし孫が産まれたらプレゼントしたいと思う。

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