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過去問解説『34回16番』(ホルモン・サイトカイン)

人体の構造と機能及び疾病の成り立ち

栄養・代謝に関わるホルモン・サイトカインに関する記述である。
最も適当なのはどれか。1つ選べ。
(1)グレリンは、脂肪細胞から分泌される。
(2)GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)は、空腹時に分泌が増加する。
(3)アディポネクチンの分泌は、メタボリックシンドロームで増加する。
(4)グルカゴンは、グリコーゲン分解を抑制する。
(5)アドレナリンは、脂肪細胞での脂肪分解を促進する。

(わからなくても、考えて答えを出してみると効果的です!)

・どんな話か?

ヒトのカラダの代謝は、ホルモンやサイトカインと呼ばれる物質たちによって調節されています。
この調節をしているホルモン・サイトカインが、どこから分泌されて、どんな働きをしているのか知っていますか?という問題です(^^

答え 5


・前提知識

「ホルモン」
内分泌細胞から血中に分泌され、目標とする場所にたどり着いて代謝を調節する物質。

「サイトカイン」
細胞から分泌される生理活性物質の総称。
明確にホルモンとは区別されていないが、ホルモンのように「この場所でのみ作られる」とは決まっていないことが多い。また、作用が局所的であることが多い。代謝を調節するという点では同じ。


(1)グレリンは、脂肪細胞から分泌される。

× グレリンは、主にから分泌される。

ホルモンには、「食欲を調節する」という仕事をしているものがいます。
この代表が、
・食欲を促進するグレリン
 (主に胃から分泌される消化管ホルモン)
・食欲を抑制するレプチン
 (脂肪細胞から分泌されるホルモン)
の2つです。

今回の問題は、この2つのホルモンの分泌場所を知っていますか?という質問です。

ホルモンの名前と分泌場所(登場人物の名前と出身地)は暗記になりますが、食欲の促進は消化管自体がやっている!食欲の抑制は意外と脂肪細胞がブレーキをかけている!という印象も持っていただけると、覚えやすくなると思います。


(2)GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)は、空腹時に分泌が増加する。

× GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)は、満腹時(食後)に分泌が増加する。

GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)とは、インクレチンというホルモンの種類の1つです。

「インクレチン」
小腸などから分泌される消化管ホルモン
血糖値が上がると分泌が促進される
インスリンの分泌を促進するという作用がある
(ホルモンがホルモンの調節をしている)
(インスリンの応援なので、血糖値を下げる側のポジション)

・GLP-l (グルカゴン様ベプチド-1)
・GIP(グルコース依存性インスリン分泌刺激ボリペプチド)
という種類がある。

今回の問題は、このホルモンがいつ分泌されるでしょう?という質問です。

GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)はインクレチンのことでした。
そしてインクレチンは、血糖値を下げるという仕事をしていました。
よって、分泌が増加するタイミング(仕事をするタイミング)は、満腹時(食後)となります。

血糖値を下げる側なのに、空腹時に分泌されても意味ないよな、とツッコミが入れられるとグッドです。


(3)アディポネクチンの分泌は、メタボリックシンドロームで増加する。

× アディポネクチンの分泌は、メタボリックシンドロームで減少する。

アディポネクチンは、脂肪細胞から分泌されるアディポサイトカインの1つです。
(アディポは脂肪という意味なので、「アディポサイトカイン」は脂肪細胞から分泌される生理活性物質の総称。)

インスリン感受性を高める(インスリンを効きやすくする)という仕事をしています。

今回の問題は、このサイトカインがメタボになったらどうなるでしょう?という質問です。

アディポネクチンの仕事である「インスリン感受性を高める」は、単純に考えると嬉しい作用です。(少しのインスリンで、よく効くようになる。この感受性が低下することで、糖尿病などが発症する。)

そんな物質が、メタボになって増えるでしょうか?
もし増えるとなると、メタボが喜ばしい状態になってしまいます。

実際は増えるのではなく、「分泌量が低下」します。

メタボリックシンドロームという好ましくない状態では、嬉しい物質は減ってしまう。そんなイメージがもてると判断しやすくなります。


(4)グルカゴンは、グリコーゲン分解を抑制する。

× グルカゴンは、グリコーゲン分解を促進する。

グルカゴンは、膵臓から分泌されるホルモンの1つです。
主に血糖値を上昇させるという仕事をしています。
(インスリンとは逆のポジション)

今回の問題は、そんなグルカゴンが、グリコーゲン分解をどう調節しているでしょう?という質問です。

グリコーゲンは、カラダに蓄えられた糖の貯金です。
(グルコースがたくさんつながってできている)
(主に肝臓に蓄えられている)

糖があまったときには合成を促進し、血液の糖が減ったときには分解して使います。
つまり、血糖値が下がってしまったときは、グリコーゲンを分解して血液に糖をもってくれば、下がった血糖をもとに戻すことができます

グルカゴンの仕事は、「血糖値の上昇」でした。
もし血糖値が下がってしまったら、グリコーゲンを分解して、糖を血液中にもってきます。

つまりグルカゴンの仕事内容から考えると、「グリコーゲン分解を促進する」となるはずです。

もしグリコーゲン分解を抑制してしまうと、下がった血糖値を上げられないじゃん!とツッコミが入れられるとグッドです。


(5)アドレナリンは、脂肪細胞での脂肪分解を促進する。

〇 アドレナリンは、脂肪細胞での脂肪分解を促進する。

アドレナリンは、副腎髄質から分泌されるホルモンです。
(別名エピネフリン)

一般的なイメージの通り、血圧を上昇させるなどカラダを活発にする作用があります。
また、食事関係でみると、血糖値を上昇させる脂肪を分解してエネルギー源にするという作用があります。

今回の問題は、アドレナリンにはどんな作用があるでしょう?という質問なので、仕事内容を覚えるしかありませんが、イメージとしては、カラダに蓄えているものを分解して使うという方向性になります。

・血糖値を上昇させる
→グリコーゲンを分解する
・エネルギーを作る
 →体脂肪を分解して材料にする

ポジションとしては、蓄えているものを使うホルモン。そんな印象が持てるとグッドです。


暗記用まとめ

・グレリンは、主に胃から分泌される。
・GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)は、満腹時(食後)に分泌が増加する。
・アディポネクチンの分泌は、メタボリックシンドロームで減少する。
・グルカゴンは、グリコーゲン分解を促進する。
・アドレナリンは、脂肪細胞での脂肪分解を促進する。

ホルモンの名前と仕事内容を知ってあげると、このタイミングは分泌増えるべきだよね!(もしくは減るべきだよね)と、考えて判断できる問題が増えます(^^♪

今日も勉強おつかれさまです。
marcy

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