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夏休み④

坂を転がり落ちています。

夏休み初日に事故った料理人の店に、せっせと通っています。32年間生きてきて、最も自堕落な夏休みです。

信頼する友達に「一生のお願いだから料理人の連絡先消して」と言われたのに、それをあっさり反故にしてクズに会いに行くとは、わたしこそクズです。


閉店後に呼び出され、ホイホイとめかしこんで向かい、手際よく料理するのを「すごいすごい」と褒め、麻婆豆腐だの油淋鶏だの餃子だのを「おいしいおいしい」と食べたりして。「熱いうちに食べてくださいね」とにっこりされるとクラクラしたりして。わたしは心底、安くてちょろい女です。

その後、「バーに行きましょうよ、ご馳走してくれます?」と言われ、わたしはすべての判断能力を失っているのでもちろんYES、あやしいバーでカクテルを飲みました。同じバーを2回訪れ、お会計9,600円、14,000円。お母さん、うちはこんなことをするために大学院まで行かせてもらったわけやない、ごめんなさい。

料理人はいけしゃあしゃあと「今日も奢ってくれるの?なんで?」と言い、わたしが「顔がかっこいいから」と返すと、ますます調子に乗り「ホストにハマるタイプやん!僕、昔ホストしてたことあるの!」と言い、わたしの二の腕や乳をかなり強い力でつねりました。下品。

料理人は何度も電話で中座したので、隣席のあやしいおじさんに読書の話に付き合ってもらいました。(村上春樹、三島由紀夫、夏目漱石、レイモンド・チャンドラー。久しぶりに読書の話ができて、とてもたのしかったです。マスターのカクテルのうんちくもおもしろかったし、近所にこんなバーがあったら毎週通うのに。)ふと、「あの男どう思います?」と尋ねると、「お嬢さん、あきませんよ、僕だったらバーに1人でほったらかしてこんな長いこと電話しまへん、すぐに電話切ったらよろしいがな」とまともな回答でした。ですよね。(お嬢さんって呼んでくださってありがとうございます!)

長電話の料理人を待っていたら終電を逃し、「ねえ、なんで帰らなかったの?わざと終電逃したの?」などと言われながら料理人の部屋に行きました。本来ならば、こんな屈辱的なことを言われたら、間髪入れずにビンタするぐらいの気位の高さを見せたいところですが、酔っ払ってうにゃうにゃ絡んできてかわいいなと聞き流しました。

料理人はわたしの14,000円をトイレにゲーゲー吐き、床に寝転んで「僕酔ってるから何もしてあげられへんよ」などと言いました。洗面台に先週はなかったはずのシュシュがありましたが、やはり今回も「妹が来た」の一点張りでした。

こんなクズはさっさと切ったほうがよいということは承知していますが、どうにもそれができません。仕方ない、ホストにハマるよりはお手頃価格だと思うことにしました。

わたしは一生結婚なんかできない、仕事だけは大事にしよう、と痛感するのですが、こんなクズと遊んでいたらすぐに仕事に支障をきたすことでしょう。来週からまた仕事です。


※画像は2013年のバリ島のビーチ。夕陽が沈むのを眺めながらピニャ・コラーダを飲んだことを思い出しました。昨夜のバーでも注文したのですが、ココナッツミルクが切れていたようで飲めませんでした。村上春樹「ダンス・ダンス・ダンス」を読んでから、ピニャ・コラーダには強烈な憧れがあります。

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