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一日分のアイラービュー

寝る前に「アイラービュー!」と伝えるようにしている。
できるだけポップに。
だけど、まるごとぎゅっと抱きしめるつもりで。

こどもが泣きながら眠りに付くのが苦手だ。
こどもにとって、いやなこと、かなしいことがあって、それが解消されないまま、泣き疲れて眠る。
それが嫌だ。

たとえ、こちらがこどもを叱ったことが原因で泣いていたとしても。
まだ親のほうが許す気持ちになれていないような時でも。
失意のまま、不快感を抱えてこどもが寝るのが嫌なのだ。
そうやって眠った中で、見る夢はどんなものだろう。
途中目が覚めたらどんな気分だろう。

もし泣きながら寝かせてしまって、夜のあいだになにかあったら?
できるだけ、安心した気持ちで寝かせてあげたい。
いつの間にかそう願うようになっていた。

寝ているあいだに何があるかわからない、という気持ちがある。
今はどうしても、まだ幼いこどもたちのからだを心配する度合いが大きい。
でも自分だって、夫だっていつ何があるかと思ってしまう。

避けられるものならもちろん避けたい。
5歳になろうとしている次男は、つい最近までぴよぴよと赤ちゃん味が強かった。
私が守らなければという気持ちが強いからか、夜中に数回目が覚める。次男がちゃんと息をしているか確認してしまっていた。
最近では次男はいびきがうるさくなってきたので、私が身体を起こして目をこらさなくても、ひとまず呼吸の確認はできるようになった。いびきはいびきでまた違う心配もあるが…

10歳になった長男は、寝相はやや悪いものの、やたらと静かに眠っている。それはそれで不安になる。10年分の信頼関係があるとはいえ、ときどき胸あたりの布団がちゃんと上下しているかを、見届けてから寝るような夜がある。

気を付けても、気にかけても何か起きるときは起きてしまうのだろう。
そうだとするなら、私はせめて後悔はしたくないなと思う。

「だいすき」
「かわいいね」
「〇〇ちゃんはママの宝物」
息子たちには、伝えてきた。
昼間一緒に絵本を読んだあとも、寝る前も。
しかし毎日言うには、多少重たい。
本来は、重たくていいのかもしれない。
だけど日によってはちょっとだけ、しらじらしい。
それでも、後悔しないためには、隠しておかずに伝えなくちゃなぁ。

そこで「アイラービュー!」にした。
ポップに言う。

こどもたちは最初は「それなに?」と言っていた。
説明すると「ふーん」「へへへ」と笑う。
伝えても、正しい返事が何なのかわからない、というようなこどもたち。
すっぽり布団にくるまりながら、
母からの「アイラービュー!」を受ける。
「ふふふふ」と夢の世界に入って行く。

毎晩「アイラービュー」を言ううちに、そんなこどもたちも変わってきた。
聞きかじりで「アイラーブー!」と言う次男。
長男にいたっては「アイニージュー」と返してくるようになった。
意味わかってんのかなぁと思うけど、つじつまは合っている。
小4男子に「あなたが必要だ」と言われると、まぁそうだろうねとも思ってしまう。
ごはんがないと困るー、宿題丸つけ誰がするとよーという感じだろうか。
細かいことを言えば、アイラービューで返してほしいものだがそこは置いておく。
必要とされていることは尊い。

「アイラービュー!」
一生言うために、これにしようと決めた言葉だ。
これなら思春期でも、社会人になっても、将来息子たちにいるかもしれないパートナーの前でも言えそうだ。
ケンカした日も、熱がある日も、おばあちゃんになっても。

響きはふざけている。
でも母はね、一生、ちゃんと、ひるまずに愛を伝えることを決めたんだよ。

今日もいてくれてありがとうと、重苦しくなく、手渡せる言葉。
毎日口にしてもすり減ることのない言葉。

ちなみに夫にも言ってますが、呼吸音みたいな空気で返事されています。
恥ずかしいのね?
恥じらいを捨てない系ね、はい、了解!

これからも、わたしは言うんだ。
我が家の愛すべきメンバーに。
あと回さず、面倒がらず、恥ずかしがらずに。
きょうも。
あしたも。
できるだけ、軽やかに。
一日分の「アイラービュー」を。

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