見出し画像

ウクライナが農産物禁輸で東欧3カ国をWTO提訴

ウクライナのスヴィリデンコ第一副首相兼経済相は9月18日、国境を接するポーランドとハンガリー、スロバキアを世界貿易機関(WTO)に提訴したと発表しました。これらの東欧3カ国がウクライナ産農産物の輸入を禁じたのは国際ルール違反だと主張しています。当初はロシアの侵攻で苦しむウクライナの支援で結束していた欧州連合(EU)ですが、一部の国がウクライナと貿易紛争に突入するという予想外の展開になりました。

2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻以降、小麦やトウモロコシ、ヒマワリ油といった同国産農産物の輸出を支援しようと、欧州連合(EU)は同年5月、「連帯レーン」を設けました。これは、黒海を経由した海路での輸出が滞ったため、ポーランドやハンガリーなどウクライナと国境を接する東欧諸国を経由して陸路での輸出を増やそうというものです。

EU諸国を経由しながらも、最終的にはウクライナ産農産物をアフリカなど貧しい国に届けるものでしたが、陸路での輸送がスムーズに進まず、ポーランドなど東欧諸国で多くの農産物が販売されてしまいました。東欧諸国の農家は、安価なウクライナ産農産物に売り先を奪われて生活が苦しくなり、不満が高まりました。抗議行動も行われ、各国政府は対応に乗り出さざるを得ない状況になりました。

事態を重く見たEUの欧州委員会は2023年5月2日、ポーランドとハンガリー、スロバキア、ブルガリア、ルーマニアの東欧5カ国を対象に、市場の混乱を防止するための一時的な措置として、9月15日までウクライナ産農産物の輸入を禁止することを決めました。起源となる9月15日、市場の混乱は解消されたとして、欧州委員会はこの禁輸措置を延長しないことを決めました。

しかし、ポーランドとハンガリー、スロバキアはこの決定を不服として、独自に禁輸措置を継続することを決めました。ウクライナはこれに猛反発し、3カ国の措置は国際ルール違反だとして、WTOに提訴しました。

スヴィリデンコ第一副首相は声明で、「個々の(EU)加盟国がウクライナ産品の輸入を禁止できないと証明するのは、われわれにとってとても重要だ」と強調する一方、「これらの国々が輸入制限を撤廃し、長い時間をかけて裁判で決着をつける必要がなくなることを望んでいる」とも語り、東欧3カ国の歩み寄りへの期待も示しました。ウクライナの農産物輸出業者は、禁輸措置によって苦しんでいるとも強調しました。
           
WTOによると、ウクライナの提訴は9月21日に加盟国に通知されました。WTOの手続きでは、まずは当事者間の話し合いで解決できないかを探り、協議が不調に終われば、紛争処理小委員会(パネル)を設置して判断を仰ぐことになります。

スヴィリデンコ第一副首相兼経済相(ウクライナ経済省ウェブサイトより)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?