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「黒海穀物イニシアチブ」が3回目の延長 7月18日までの60日間

国連は2023年5月17日、ウクライナ産の農産物の輸出を支援する「黒海穀物イニシアチブ」(1)(2)について、7月18日まで60日間延長すると発表しました。ロシアとウクライナのほか、仲介した国連とトルコの4者によって2022年7月に合意されて以降、延長は昨年11月(120日)と今年3月(60日)に続いて3回目です。前回に続き今回もロシアが延長に難色を示していたようですが、決裂するという事態は回避されました。

国連のグテーレス事務総長は声明で「決定を歓迎する。継続されることは世界にとって良いニュースだ」とアピールしました。同時に、「未解決の課題も残っている。ロシアとウクライナ、トルコ、国連で議論を続けていく」と表明しました。国連やウクライナとしては7月18日以降も延長したい意向であるものの、ロシアがまた難色を示す可能性が強いため、交渉は難航が予想されます。

ロシアが延長に不満を示しているのは、ロシア産の農産物や肥料の輸出を促進する合意がきちんと実行されていないと考えているからです。この合意は、黒海穀物イニシアチブと同じ2022年7月に国連とロシアの間で署名されました。グテーレス事務総長は今回の声明で、黒海穀物イニシアチブのほかロシアとの合意にもわざわざ触れ、「これらの協定は世界の食料安全保障にとって重要だ。ウクライナとロシアは世界に食料を供給している」と語り、ロシアにも配慮を示しています。

同イニシアチブの延長を受け、ウクライナ政府も「トルコや国連の努力のおかげで、世界はウクライナから食料供給を受け続けられるようになった」と歓迎する声明を出しました。一方で、ロシアは4月中旬からこの取り組みを不当に妨害し、5月からは船舶の検査を拒否するなどして事実上ストップさせていると主張しています。

ウクライナによると、5月17日時点で3040万トンのウクライナ産農産物が出荷されましたが、70隻近くがトルコの領海で待機している状態だということです。「イニシアチブの継続を歓迎するが、効果的に機能しなければならないことを強調する」として、ロシアの妨害をすぐにやめさせるよう訴えています。

国連のウェブサイト(5月21日時点)によると、黒海穀物イニシアチブによる出荷は3028万8930トンとなり、この2カ月で500万トン余り増えました。トウモロコシがちょうど半分を占め、小麦が28%、ヒマワリミールが6%、ヒマワリ油が5%となっています。

国別では、中国向けが700万トンと全体の23%を占めてトップを維持しており、2位がスペイン(540万トン)、3位がトルコ(310万トン)、4位がイタリア(200万トン)、5位がオランダ(180万トン)となっています。2カ月前と順位に変動はなく、中国の爆買いが際立っています。



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