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24年の世界穀物生産は過去最高の見通し 地域別では明暗

国連食糧農業機関(FAO)は7月8日、2024年の世界全体の穀物生産は28億5420万トンとの予測を公表しました。過去最高だった前年を0.1%上回り、再び過去最高となります。供給から消費を差し引いた在庫も増加する見込みで、世界全体では需要の伸びに対応し、生産が着実に増えていると言えそうです。しかし、アフリカ南部が干ばつの影響で大きく落ち込むなど、地域別では明暗が分かれています。
 
世界全体の穀物生産が前年を上回るのは6年連続です。在庫も前年比1.3%増の8億9430万トンと、5年連続で増える見込みです。干ばつや豪雨など異常気象による生産減少や、紛争による飢餓といった問題を各地で抱えながらも、世界全体として安定した需給を維持できていると言えます。

穀物の生産、消費、在庫の推移

2024年の穀物生産の内訳は、コメが0.9%増の5億3510万トンと2年連続で前年を上回り、過去最高となる見通しです。小麦も0.1%増の7億8910万トンと、2年ぶりにプラスに転じる一方、トウモロコシなど粗粒穀物は0.1%減の15億3000万トンと、わずかながら2年ぶりのマイナスが見込まれています。
 
2024年の穀物生産見通しを地域別にみると、以下の通りです。単位は百万トン、カッコ内は前年比増減%です。
 
アジア  1298.3(+1.2)
アフリカ  194.1(-3.0)
中米・カリブ 39.2(-5.0)
南米    249.2(+1.0)
北米    513.3(-1.0)
欧州    513.3(-1.0)
オセアニア  46.7(+9.8)
世界全体 2854.2(+0.1)
 
北米が減少するのは前年の大豊作の反動といった側面があり、過去5年平均は4%以上も上回っています。欧州も、干ばつや戦争の影響でロシアやウクライナが落ち込むものの、欧州連合(EU)は3.2%増の2億8330万トンと、増産の見通しです。アジアでは、中国やインドをはじめ、多くの国で前年以上の豊作が見込まれています。
 
これに対し、アフリカは異常気象や紛争の影響で前年比3%、過去5年比2%減と、低迷が続く見通しです。中でもアフリカ南部が前年比18.6%減と深刻です。エルニーニョに伴う干ばつの影響で、南アフリカやザンビア、ジンバブエなどでトウモロコシ生産が激減すると見込まれています。
 
FAOは、所得や食料自給率が低く、食料を輸入に多く頼る国を低所得食料不足国(LIFDCs)と定義し、現状を分析しています。現在はアフリカやアジアなど44カ国がLIFDCsに分類されており、2024年の穀物生産は合計で前年比0.4%減の1億4200万トン、穀物消費は0.6%増の1億9180万トンとなる見通しです。
 
この結果、在庫は5.4%減の4200万トンとなり、需給は一段とひっ迫する見込みです。輸入依存がさらに強まり、食料安全保障が一段と脅かされることになります。FAOは、特に深刻な国・地域として、アフリカ南部と、紛争が続くスーダンを指摘しています。

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