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屋久島、2泊3日ひとり旅~1日目移動編~

体調は万全ではなかった。


前日に会社の野球チームの練習に参加したおかげで体中がバキバキだった。『トレッキングに行くし体力つけておこう』と軽く思っていた自分を恨む。

そして前日からどうも胃の調子が悪かった。

いつもなら野球終わりにチームの人たちとレモンサワーで乾杯し、焼き鳥屋ら焼きそばを食べているところ、カルピス1杯しか飲めずお通しのキャベツの千切りすら手を付けなかった。

緊張からくるものだろうか…

当日の天気はいまにも雨が降り出しそうな曇り空。

フライトは羽田15:45発、屋久島空港到着は18:30だ。

とにかく明日の縄文杉までには体調を整えたい。
空港で胃にベールで有名なセルベールを買う。薬を飲むのは食後らしい。胃は痛いが何か食べないことには元気も出ないだろう。

そう思い空港内を探すが、時刻は15時。お弁当の棚は空っぽだった。飲食店もコロナの影響で客が少ないのか、閉まっているお店が多くあった。

やっとの思いで見つけたのは小さい唐揚げが乗ったおむすびが五個入ったお弁当。それも最後の2つだった。

食べ終えてセルベールを飲む頃には搭乗の時刻になった。


飛行機が飛び立ち雲の上に出ると、陽の光が機内に差し込む。

太陽ってこんなに気持ちよかったっけ…

すうっと胃の痛みが引いていくのを感じると、心地よい眠気に吸い込まれていった


気がつけば鹿児島空港に着陸していた。

乗り換えは到着したゲートの正面の搭乗口だった。出発までは50分もない。

明日のトレッキングのために自販機で水を買ってベンチで待っていたらあっという間に登場時間になった。

飛行機は日本エアコミューターの小さなプロペラ機。ちょうど窓からプロペラが見える席だった。

飛行機が飛び立つ頃には空はすっかり暗くなり、地平線に濃いオレンジが残る。

鹿児島の街を見下ろすと既に街は夜になっているようで、街灯や車の明かりが煌めいていた。1日の終わり、人々の帰路に想いを馳せた。


屋久島には18:30予定通りの時刻に到着した。

タクシーに乗り込み宿へ向かう。

「そのコテージはお得意さんだからね〜!」

15分ほど乗って、そう得意げに話すタクシーの運転手に案内されたのは、真っ暗な今はもう使われていないであろう呼び鈴。どう見たってさっき通り過ぎた手前の看板の明かりがついているところがコテージの受付だ。

呼び鈴を押すと案の定、手前の看板の灯りのついたところから宿の人が声をかけてくれた。


そういえばタクシー運転手さんはこの道中に関西や名古屋の人はケチだ。関東の人じゃないとお金を使ってくれないからな、とぼやいていた。

まさかメーターを少しでも稼ぐためじゃなかろうな…?

とにかく、宿には着いたのだ。
宿の周りで晩御飯が食べられるところは2件ありどちらも21時までとのこと。ゆっくり休む時間もなく、荷物を置くと早速晩御飯を食べに出発した。


宿の周りは真っ暗だった。

人っ子一人見当たらず、車も通らない。あたりからは虫の声だけが聞こえる。

街灯はほとんどなく、明りはたまに道沿いにある建物と信号だけ。歩道に無造作に生えた雑草を踏み分けていく。

すごく遠いところに来てしまった。

ふとそう思うと、急に心細さが襲ってくる。

徒歩8分で着くお店までの道のりが酷く遠く感じられた。

店内は天井が高く、木のぬくもりが感じられるような作りだった。

頼んだのはとびうおのひつまぶし。どうやら屋久島はとびうおが名産らしい。

甘辛く味付けしたとびうおをのせたご飯と、薬味の刻んだ味付け海苔・わさび・刻んだ大場・梅干し。さいごにあごだしをかけて頂く。

すごくおいしかった。

とびうおはほとんど食べたことがなかったがこんなに肉厚なのかと思った。

さっきまで胃が痛かったが、あごだしのおかげでするする箸が進んだ。

食べ終えてTwitterを見ると、さきほど心細くなりツイートしたものに様々な友人からいいねやコメントをもらっていた。

店を出て宿へ戻る。屋久島は東京よりも少し温かいことに気づいた。

早く明日の支度をしよう。

何せ明日は朝の5時に迎えがくる。

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