ダウン症マオリの発達ストーリー第7話。かわいがるも愛情。叱るも愛情。愛情の軌道修正をしたとき。
*これは一般法人Maorisができあがるきっかけになった一人のダウン症をもつ少女と、アメリカ帰りの療育セラピストとの発達促進ストーリー第7話(当時2歳3か月)です。
*娘の発達を、アメリカで特別支援教育を学び、現地の療育の現場で経験をつんだ先生の考え方やテクニックなどを織り交ぜながらご紹介します。
*お母さま方には、その遊びを通してどういったスキルが習得できるのかといった読み方をしていただくことでより参考になるかと思います。
*最後に母の感想があります。よろしければお読みください。
2015年11月度の発達促進教室でのプログラムと娘の様子
1. 遊び
① 上下・前後の動き
② ロケット発射
③ 鈴、マラカス
④ ボールを筒の中に入れる
:遊びや踊りを通して、体の上下・前後、目の上・下といった動きを身 体に学ばせる練習。ロケットは動きが速く目がついていかないが興味はある様子。
2. 物の学び
① 果物(かき、りんご、みかん)
:袋の中に本物の果物を入れ、一個ずつ取り出し、触り、香りをかいで学ぶ。食べたかった様子。
3. 微細運動
① 床でのプットイン(大・中・小・おはじき*難易度大)
:机の上での作業は上手にできるようになったため、あえて床での作業に変更。苦手な視野の方向である「下」を見る練習。
② お絵描き《殴り書き、両手描き、スタンプ、シール貼り》
:シールは少しずつ上達。表裏の理解はしている。今までペンに全く興味を示さなかったのが(ペンの蓋をとるのが難しかった)、蓋をとれるようになってきたためにペンにも挑戦している。
4. 粗大運動
① 大きいブロック(発砲スチロール)
:ブロックを積みあげて、「3、2、1」とカウントダウンして倒すという一連の流れができた。自分の身長より高いが、しっかりと上を見ることができている。
② 平均台(療育用)
:最初は足をどのように動かせばよいのかわからなかった様子だったが、足を前に出す事に理解をしだすと、一歩が大きくなった。又、あえてセラピストが支えるずに見ていると、一歩だけ自分で歩いていた。
5. 身体づくり
① 体幹体操
② 体幹マッサージ
③ 足裏マッサージ
④ クロス運動
:抵抗なくマッサージを受けることができるようになった。
6. 歌
① 頭、肩、ひざ、ポン
② 大きな栗の木の下で
:以前よりリズムがとれるようになった。
7. 言語
:以前より舌が動くようになっている。
一か月で見せた変化
・11月の成長は著しいものだった。
・特に目の動きが上達。以前よりも上や下のものが上手に見えるようになった。
・発音は不明瞭なものの、沢山話すようになった。
今あの日々を振り返って(母の感想)
長男が2~3歩ほど歩き始めると、あっという間に歩ける距離をのばし、すぐにマンションの外周をぐるりと歩けるようになったものです。
しかし娘の場合は、「低緊張」というダウン症が与えた影響のために、歩けるようになってからも中々足腰が強くなりませんでした。
生まれてからしばらくは、わが子の障がいの受容が難しく、無償の愛を注げなかった期間がありましたが、この頃はまるでその時を埋めるかのように、過剰といってもよいくらいの愛情を娘に注いでいたような気がします。
このため、2歳になってもまだ赤ちゃんのような娘がとても可愛く、その弱さを守りたい一心でした。そんな時にセラピストと出会ったことが、その後の娘の成長を左右する分かれ道だったように思うのです。
もし出会わなかったら、私は異常なほどに大きな愛情を、娘をかばうことにばかり注いでいたかもしれないからです。自分なりに厳しく育てていたつもりだとしてもです。
例えば足腰が弱く、歩けない娘に対して、セラピストは「バギーに乗らせてはいけない」という。歩けるようになったのだから、本人の足を育てるためにも歩く練習を行うようにと。嫌がって泣くからかわいそうだと言えば、「大きくなって思う存分歩けるようにしてあげましょう」という。「それがこの子のためになる」という。
バギーを押せば5分で済むところを、娘と一緒に30分かけて歩く面倒さ(こんな言い方をしてはいけないけれど!)。とにかく泣いても嫌がっても、歩く大事さを教え込みました。
歩くことだけではなく、他にも物事の道理をあきらめずに教える重要さ(これはまた今後!)などもセラピストに習いました。
歩くトレーニングをはじめて、その距離を徐々に伸ばし、4歳では毎日保育園まで往復2キロ弱を歩き、がんばって筋トレに励みました。こんなにやっても5歳の終わりまでは、雨などで濡れたコンクリートでは必ず滑って転んでしまうほど、足腰が弱かったです。これはまさにダウン症という障がいのせいだと言えると思います。
しかしこのおかげで小学校一年生になった今では、大人と一緒に5キロほどのウォーキングを楽しむことができるようになりました。そしてやっと転ばなくなりました。
何より、歩くことは脳を育てること。これを裏付ける科学的な証拠も今は書籍やインターネットで公開されています。
あの時、赤ちゃんのような2歳の娘を「かわいい」「大変」「仕方がない」だけで終わらず、「今大変だったらなおさらがんばろう」と改善の道を歩みはじめることができたのは、セラピストとの出会いがあったからだなと思います。
足腰が弱い障がいのある子どもに「歩く」ように言う。「叱る」ように言う。
これはやはり海外の大学院にて特別支援教育をしっかり学び、実地経験を積んだセラピストだからこそ言えることだと思います。多くの実績、そして科学的根拠にひもづけられた情報という引き出しの多さ。「さじ加減」ではなく、こういった「信頼できる情報」の持ち主だったから、私の娘に対する特別扱いのような愛情を、あるべき道へと方向転換できたのだと思います。
参考情報として2015年度マオリの発達目標
【短期目標】
・身体のケアを目的とした体操やマッサージを少しずつ取り入れられるようになること
・遊びのバリエーションとその時間を増やすこと
・遊びを通して物の名前や機能を学ぶこと
・音声模倣(言語)が上手にできるようになること
【長期目標】
身体の変化、安定した歩行、原子反射の統合、言葉の表出向上
*Maoris組織の詳細やメンバーについてはHPをご覧ください。
*Maorisは発達促進を学ぶサークル活動をnoteにて行っています。セラピストを含む専門家からの情報発信、専門家たちとの双方向でのコミュニケ―ション(掲示板やZOOM)で発達促進への学びを深めています。身体の機能を高めることで脳を育む方法を学びたい方、メンバー募集中なのでぜひおすすめです。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?