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ダウン症マオリの発達ストーリー第9話。何が家族を幸せにするのか。

*これは一般法人Maorisができあがるきっかけになった一人のダウン症をもつ少女と、アメリカ帰りの療育セラピストとの発達促進ストーリー第9話(当時2歳5か月)です。
*娘の発達を、アメリカで特別支援教育を学び、現地の療育の現場で経験をつんだ先生の考え方やテクニックなどを織り交ぜながらご紹介します。
遊びは学びです。お母さま方には、その遊びを通してどういったスキルが習得できるのかといった読み方をしていただくことでより参考になるかと思います。
最後に母の感想があります。よろしければお読みください。

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2016年1月度の発達促進教室でのプログラムと娘の様子

1. 遊び
① 上下・前後の動き
② ロケット発射
③ 鈴、マラカス
④ ボールを筒の中に入れる
⑤ Row your boat(前後の運動)

  :ペンをあえて反対側に渡しても自分でしっかりと見て変えて書くことができている。物の上下の理解が深まってきている。模倣が上手になってきたので、歌や踊りを通してさらに上下、前後の運動を練習していく。


2. 微細運動
① お絵描き《殴り書き、両手描き、スタンプ、シール貼り、色鉛筆、マジック、クレヨン、チョーク》

:様々な道具や色々な紙を使って、すべて両手でお絵かき。今は「〇〇を描こう」といった指示をださず、色々な道具を使っての体験をたくさん積むことが重要。


3. 粗大運動
 :今月は粗大運動の提案は行わず。人形やお料理遊びに興味があるので、そちらを優先。

4. 身体づくり
① 体幹体操
② 体幹マッサージ
③ 足裏マッサージ
④ クロス運動

:マッサージをされることに対しての拒否がほぼなくなった。

5. 歌
① 頭、肩、ひざ、ポン
:人形の目、鼻、口を指すことができている。

6. ごっこ遊び
① 赤ちゃん人形遊び
② クッキング
③ ハッピーバースデー
④ 散歩
⑤ 電話

  :ごっこ遊びのバリエーションが増えた。遊びながら色々なことを考えているのがわかる。(子どもは毎日家族《父、母、きょうだい》や友達を見ている。それをごっこ遊びで再現しながら自分の生活を理解する。)
ヘッドフォンに興味を示したので、それを猫にくくりつけ、トトロの歌をうたいながら散歩ごっこ。途中で自分から猫の綱をソファーに縛り付ける真似(きっとどこかで見たにちがいない)。

7. 言語
  :今月の中で一番伸びたところ。今まで難しかったハーモニカや少し難しい笛も吹けるようになってきた。

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一か月で見せた変化

・言葉がとても増えた。
・言葉がとても増えたので、当初予定していた「発音の練習」を見送り。発音を指摘されるよりも、話をすることの楽しさをどんどん感じてもらうため。
・笛などの遊びを取り入れることで口の筋肉の活性化が少し見られた。

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今あの日々を振り返って(母の感想)

ちょうどこの頃、身内に不幸があり、急遽山口県に住む妹夫婦のところに行くことになりました。家族で急いで新幹線に飛び乗ったことを覚えています。私の実家が関西にあるので、子どもたちは新幹線に乗り慣れてはいたものの、この時は新横浜駅から広島駅まで新幹線のぞみで約3時間半、それからこだまに乗り換えさらに15分、長い長い電車の旅となりました。

ダウン症で知的障害を伴う2歳5か月の娘が果たして公共の場でじっとしていられるのかといった大きな不安と隣り合わせでしたが、いくら退屈でも泣きわめくことなく、周囲に迷惑をかけることなく、当時4歳の兄と一緒に電車に乗ることができ、達成感に近い自信を感じたものです。

この時、「いくら定型発達でも、我慢できずに泣いてしまう子どもだっているよな」と思ってしまった自分がいました。いつも娘を周りの子ども達と比べないように心がけていたにも関わらず、それは自分の娘が劣る時だけであり、優位にたつ時にはすすんで比較をしてしまった自分がいました。インクルーシブとは程遠い過去の私の姿です。

まだコップで水をごくごく飲み干すというスキルは身についていなかったものの、この時にはだいたいの物は食べられるようになっていたので、ストロー付きのコップと娘専用のキッチンばさみ(食べ物をザクザクと簡単に切れるもの)さえ持っていけば外食を楽しめるようになっていました。

この時の旅行で、それまでのとても長かった歩けない期間、食べられない期間(ダウン症の子どもは離乳食期間がとても長いのです)からやっと「卒業できた」ことを実感しました。

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「公共の乗り物をつかって旅行に行けること」「外食を楽しめること」。
人によって、心が豊かになる基準は違うと思いますが、我が家にはこれら2つが「できる事入り」したおかげでさらに「生活の質」が向上しました

この時ちょうど、発達検査で知的障害が重度のまま大人になっても、専門職に就き、休みの日には自宅で料理を作り、家を掃除し、家族で海外旅行に行き、テレビを見て笑って楽しめる生活を送る自閉症の方に出会いました。
親御さんのサポートのおかげでたくさんの「できる事」を増やして大人になった方です

発達検査の結果は家族を幸せにしてはくれないが、生活の質が上がればその分だけ家族に幸せな時間が増えることに気づきました

あきらめたらそこで立ち止まってしまう。
前に進むには、明るい未来を信じてコツコツと努力するのみだと


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*Maoris組織の詳細やメンバーについてはHPをご覧ください。https://maoris.jp/
Maorisは発達促進を学ぶサークル活動をnoteにて行っています。セラピストを含む専門家からの情報発信、コメント欄を通してのセラピストとのコミュニケ―ション、そして定期的にセラピストとメンバーでのZOOMお茶会を開催しています。身体の機能を高めることで脳を育む方法を学びたい方、メンバー募集中なのでぜひおすすめです


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