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【レオマブ考察】さらざんまい9皿目まで(ネタバレ)

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さらざんまい9皿目、久慈兄弟のお当番回。
とはいえ、当記事はレオマブについて考察するものである。前回同様、玲央と真武を中心に、ネタバレと独断を盛り込んで考察していく。

前回の記事の後半で、レオこそが本作でもっとも欲望にまみれた人物であると考察したが、それが決定的になったのが9皿目であったと思う。
思わず初見で「ヒッ」と声を挙げてしまった場面の数々、一旦冷静になって考えていきたい。

1.マブが取り戻した「熱」?

さて、まず前半で出てきたのが、カワウソの人形焼を過去マブと同じ味で作れるようになったマブと、それに感動するレオ。やたらと脱がされるマブだが、今回はレオまで半裸で抱き合っている。これは…糖度が高いぞ


この衝撃的なシーンで全てを忘れそうになるが、よく考えてみれば「人形焼ごときで、なぜレオはマブを信じられる?」というのが謎である。真贋の判断基準としては、かなり怪しいではないか。
前回も言ったが、これはやはり「欲望」が重視されているためではないかと思う。レオはマブを偽物と判断するのもまた、食べ物絡みが多かった。6話の朝食シーンでも、焼きそば+ブロッコリーを苦しげに食べるマブを見て、彼が偽物であることをなじっている。いわば食欲というのは、生きることに直結する部分。根源的な欲望の復活度合いをそこではかるのは、たしかに判断基準としてはアリかなと思う。食欲の復活を感じたレオは、半裸になってマブと抱き合い、じかにマブの生命エネルギー(熱)を確認したのでは…

2.マブの心臓を掴む「手」

しかし…マブの心臓は機械。今回初めてこの心臓が大映しになったため、スクショをとってみた。

部品に「UXTSUSOOOOO」と書いてある。
これ、この機械が「嘘の心臓」という意味だけではないと思うのだ。
動きからしてここの部分がポンプになっていそうであるが、血液が循環してる様子が見えない。私はむしろ、この直前の電気ショックみたいな鼓動の際に見える、その周辺の筋肉部分を「握っている手」こそが問題なのではないかと思うのである。

つまり、マブの心臓をコントロールしているのは、機械の心臓だというのはダミー(嘘)で、実はその「手」が、マブをどうにかしていると…

そしてその手は、おそらく「レオの手」なのである。
言い換えれば、「レオの欲望」である。それが9皿目で明らかになった、レオマブの最大のポイントであろう。カワウソはレオの欲望を映し出す鏡だったのだ。(カワウソバァの戸を開ける手がカワウソになっているあたり、芸が細かい)

レオが「マブを強制的に生かそうとしている」手なのか、あるいは、「過去マブを覚醒させないようにしている」手なのか。私は両方の意味があろうと思うのである。欲望と愛によりつながる「縁」の二つの側面を表そうとしているのではないか。

3,つながりのダブルバインド


それは今回並行して描かれた久慈兄弟のダブルバインドに表れていると思う。久慈兄は、弟のおかげで裏の世界に足を踏み入れ、いわば表の社会では死ぬことになった。その一方で、それでも生きていたのは、弟がいたからなのである。兄を世界に繋ぎ止めたのは弟だ。それは死ぬ直前に回想されるシーンからもわかる。「お前のせいで死ぬ」、でも「お前のおかげで生きられた」、のである。

さてこれをレオマブに置き換えてみよう。
地下街のバーで見たマブともう一人のレオ。
「マブを支配したいと思っているのはお前だ。この空虚な機械の心臓に口づけしたいと思っていたのも」

というカワウソのセリフ。つまり、レオは本当のマブを取り戻したいのではなく、「自分に都合のいい(あるいは、自分を愛してくれる?)」マブを得たいだけなのだ、ということではないか。だから過去マブではなく、今マブの心臓に口づけしたいのだ。それは、今マブだからその行為を…平べったく言ってしまえば執着や愛を受け入れてくれるからである。


カワウソはマブに「お前にとって大切なものは何?」とたずね、マブは「あなたが必要=マブへの支配欲の権化レオが必要」と答える。これは、7皿目でマブが「必要とされる私に早くなりたい」と言っていたことと付合する。「必要とされる」=「欲望」である。今マブは、誰かに欲望を向けられることで、この世界に繋がっていられるのだ。だから権化レオを失うわけにはいかない。つまり今マブには、レオの「つながりたい」気持ちは伝わっていない…とレオは判断した。サブタイトルの回収である。
このあと、サブリミナル的に、乙女チックなレオのスチルが挟まれる。
これはなんなのか…よくわからない。今は完全に攻めポジションにあるレオが、かつては逆の立場だったということの示唆なのか。

マブの答えを聞いてレオは、自分の欲望を否定。「自力で本物のマブを取り戻す」と宣言している。今マブに欲してもらえなかったのだから、当然の反応である。これはもう決定的だろう。レオは自分が理想とする、つながって、欲望を受け止めて、愛してくれるマブを作ろうとしている。それは過去マブとけっしてイコールではない。

言うなれば、レオはマブを生かしたいから、過去マブも今マブも殺そうとしているのだ。それが、今マブの心臓を鷲掴みにするレオの「手」である。
マブの死は、レオがこの世界とのつながりを手放すことも意味している。やはりレオは本作でもっとも欲望にまみれた人物である。ゾンビ化は近いだろう。床も真っ黒になってしまったし…

前回も考察したが、過去マブは決してレオに従順ではなく、レオが持っていた仄暗い欲望のようなものを受け入れる人物には到底見えなかったのではないか。つまり欲望に無縁の人物(にレオには見えた)。レオが信じているのは、マブが自分を助けてくれたという事実から透けて見える「つながり(=欲望)」である。
ただし、それは本当に一瞬で…マブの真意を問いただすことはできなかった。レオは自信がないのだ。本当の過去マブが、自分とつながってくれるかどうか。だから、彼の中でのマブ像が揺らいでしまっている。自分の理想通りに支配したいと思ってしまう。
人の心は見えない、見えないから不安で、コントロールしたくなる。でも決してコントロールできるものではない。カワウソはハートマークで欲望はコントロールできても、心はできない?あるいは、マブは欲望が抜かれてしまったから、できない……?
いずれにしても、レオがコントロールを諦めた瞬間、真のマブの心が復活し、機械も、鷲掴みの手も吹き飛ばして、レオと繋がってくれたら…きっとレオは救われるのだろう。そういう結末を願ってやまない。

長文にお付き合いいただきありがとうございました!

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