[今だけ無料]自分勝手さは大事な自分の一面ーー見せない選択は、大事な存在を傷つける|ジブン解決マドリンネ婦人 File.0002-5
「『つまんねー』……これはあなたの勘違いを紐解くヒントだわ」
「ハッ? っつーか、正直つまんねーと思うぜ、こういう会話とか。特に恋愛状態の相手になんか……」
……早坂さんに一票。
「違うわ、そこが違うのよMr.早坂。恋愛は、お互いにまっさらの自分にたどり着くところまで、ジブンを見せていく過程よ? もちろん、言い方やタイミングはあるけれど。そしてあなたは、その道のりを順調にたどっていた。でも、途中で相手の不快に触れそうなジブンを隠し始めた。思いやってのことなのでしょうけれど、実は、それは制限付きの押し付けを相手に与えていたも同然。……だからなのよ? あなたが感じていた、相手への苛立ち、自分への嫌悪感」
……まっさらの自分にたどり着くところまで、ジブンを見せる? ありえない! どうしても、このマドリンネ婦人の言い分は否定したい。
だって、そんなの見せられても迷惑だもん! っていうか、間違ってる。そんなことしなくたって、付き合ってるカップルなんて山ほどいる。恋愛はイチャイチャするのが目的であって、そんな……すべてを出していったら、関係性は破綻するに、決まってる……。
だいたい、人間関係において、そんなまっさらなところまでさらけ出していったら……理解し合えるはずなんかない。そうしてしまうことで、どれだけ崩壊する人間関係や、不快とか迷惑を感じる人間がいることか……! マドリンネ婦人ともあろう人が、それが、わからないの?!
……ハッ。いや、今のは、もう恋愛の枠、外れてる話かも、だけど……。
「……つまり、あんたは俺に、もっと身勝手に振る舞って、ウザくて細かくてめんどくせー俺を出せと?」
「Exactly!」
「ありえねぇー! ないない、ぜってー違う! 身勝手が肯定されていいはずがねぇ」
「なぜ? なぜ、そんなにかたくななの?」
「ハ? 常識だろ」
「そう……1つ見つかったわね。勘違い」
「何?」
「Mr.早坂、自分勝手さは大事な自分の一面よ? 本当に大事な相手には、見せていいもの。いえ、見せなければ……きっと仲は深まらないし、時にその選択は、大事な存在を傷つける。だから、恋愛ではそれを出していく勇気がとても大切。……面白いわよね、身勝手すぎて嫌われる人がいる一方で、全く見せられず、恋愛の面白みに触れられずにいる人もいる」
……わからないな、マドリンネ婦人。ここまでは、彼女の言い分に何度もハッとさせられてきたけど……ここは、どうしても解せない。
早坂さんが正しいと思う。だって、本当に大切な相手だからこそ、困らせたくないし、振り回したくないだけ。だから、ジブンをちゃんと制御して礼儀正しく接する早坂さんは、正しい……私にはそうにしか思えない。
「違う違う、それはぜってー違う。んなわけねーし」
「なぜそう思うの?」
「……ジブンの身勝手で、相手を傷つけるのはいいことじゃねーだろ」
ホントそれ。
「傷つける……なるほど。あなた、傷ついた経験があるのね?」
「……は? 何言ってんだあんた」
「傷ついた経験がないと、その単語は出ないわ」
あ……。
「いや、一般常識だろ」
「いいえ。経験のない人に、そんな含みのある言い方はできなくってよ? Mr.早坂」
……確かに。
「は? 誰がいつ、ンなこと……」
彼は否定するかもしれないけど、確かに、世の中には『傷つく・傷つける』という意味がわからない人も少なからずいる。私はそういう人達を知ってる。そういう人は、自らの勝手さがどんなに相手を傷つけてるか、全く気づけない。痛みがわからない。だから、さっきみたいな発言は絶対できない。
……そっか、彼も私も、身勝手さに振り回されて傷ついた経験があるんだ。だから細かいし、だから相手に配慮して礼儀正しく接することを正しいと信じて、徹しようとする。あぁ……そこかもしれない。会って間もない、話したこともないこの彼を、私がとても近く感じる理由は。
それも……ふと浮かんだ。あれだけジブン嫌いってことは……傷つけられた痛みを知ってる上、誰かを傷つけたことも、あるのかもしれない……過去の私のように。今、マドリンネ婦人が言った言葉がそういう意味だとすると……そして彼が、それを悔やんでるとしたら……。
フッ、考えすぎ、かな……この清い彼に、そんな過去なんか、あるはずないよね……私みたいに。
「……あなたは、とても大切な人の自分勝手さに、傷ついた記憶があるのよ。もしかしたら、自覚すらないのかもしれないけれど……」
あ……やっぱり。
「知らねぇよ、ンなの……。とにかく、世間一般的に、大事な人間になればなるほど、自分勝手さはメーワクなだけ。見せるべきじゃない。っつーか、見せていいことなんかぜってーねぇし」
……あれ? 特に深い。今の発言……あれ? 本当に、私みたい。
「家族かしら? そんな傷を負わせたのは」
ハッ! ……ビックリした。私のこと、言われてるのかと、思った……。
そっか、そうだ、彼のコトだ……。そして、今の彼の肩の小さな反応……。
「……知らねーっつってんじゃん。さっきから何言ってんだ? あんた」
「抵抗が強くなった……どうやら正しいようね」
「ハァッ?!」
……確かに。私だってそう。会話を聞いてるだけなのに、自分が過剰に反応して……。
きっと彼、嬉しい反面、気持ち悪いんじゃないかな、今……。だって、これはジブンの話。特にジブンの内面の、ずーっと奥に隠してある、封印しておきたい嫌な話。触れられたくないって思う気持ちも、すごくよくわかる……。もしかして、だから抵抗が強い……?
「ご両親、仲良いかしら?」
「それ、答えなきゃいけないわけ?」
「負のループから解放されたいなら……おまかせするわ。選択は、各個人が持つ特権ですもの」
あ……マドリンネ婦人、また仕掛けた。
ジブン解決に必要なのは、本音と選択。今、彼はまた、選択の前にいる。
……どうするんだろう?
「……崩壊したよ、ずっと前にな」
……強い。ジリジリして、嫌がってる態度は全開で出てるけど……それでも、向き合うことを選んだ。
To be continued..
この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。
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