[今だけ無料]人が恐れを抱くのは、常に否定の先にある●に近づきたくないから|ジブン解決マドリンネ婦人 File.0002-8
「あなたは恋をした経験がない。つまり恋心がわからない。だからそれを断られる痛みがわからない。わからないから、相手をどれくらい傷つけてしまうのかがわからず、相手が負うであろう痛みが怖くて……それで、ジブンの思いがなくても、一旦は受けてしまう……違うかしら?」
「ハッ……どこまでもキレイゴトが好きだなあんた。ってか、そういう意味じゃ……逆も然り、だぜ?」
「うふふ。そう、あなたは付き合う中で、相手に恋する可能性を見極めたかった……? それもきっと、少なからずあなたが可能性を感じる相手にだけ、機会を与えて」
「ンだよ気づいてたのかよ……つまんね」
……あ。なんか、初めて……早坂さん、マドリンネ婦人に、進んでジブンの事を見せた、気がする! これまでは、質問されたことに応答してる感じだったけど、今の発言は……自分から、だった。
「誰しも、本来は純粋な存在。だから余計、悲しみの傷、特に幼少期に繰り返し味わった痛みは、残りやすい。だからあなた、他人を傷つけるのを極度に恐れるのよ。その痛みがまだ、あなたの記憶に体感として『残っている』から……いえ、『いた』から、かしら?」
……なんで、過去形? 痛みは、まだ彼の中にあるはずじゃ……?
「美しい話だな〜」
「だから、相手の気持ちを察しすぎてしまう……」
「……あ。今、よーやくわかった。大人のくせして身勝手に振る舞える人間の心理。あいつら、傷つけられた経験がないのか」
「傷つけられた経験がないか、傷ついたと認識していないだけか、『目には目を、歯には歯を』精神、もしくは……傷ついた経験を知りつつも、別の可能性を切り開く面白さを知っている挑戦者か」
……エ?
「傷ついたのに、また向き合おうとするヤツなんかいるか? 俺には……」
まさに!
「そこが、人間の面白いところなのよね〜! 案外、簡単なことなのよ?」
「簡単? そりゃ、言葉ではそーだろーな」
「一瞬の恥の先に、一生の宝」
「……は?」
「一瞬の恥を恐れず飛び込めば、その先に一生役立つ宝物を得られる可能性がある、とすれば……?」
「フッ、相変わらず飛びすぎ……。っつーか、そもそも傷ついた経験と恥って関係ねぇじゃん」
「と思えるでしょうけれど。傷ついた心を守ろうとするのが、プライドよ。ヒトは本来、肯定を喜び、否定に怯える生き物。否定の先にあるのは、恥だもの。だから、傷ついた経験に似た状況を感知すると、必ずあなたの中にあるプライドが、あなたを守ろうと立ちはだかってくる。あなたに正当な理由らしきものを持ちかけて、傷ついた心を解放しないように……恥に近づかないようにってね」
私……知ってる。そういうジブン、よく出てくるもん。手が、背筋が……嫌な汗をかき始めてる。なんだろ……怖い。
「そりゃそーだろな。傷つかないように守ろうとする、いーじゃん」
「そこがトラップ。やってみなければ未来はわからない」
「は?」
「つまり、次の経験ーーまた違う結果を見い出せる可能性がすぐそこにあるということ。未来は、常にあらゆる可能性を含めてあなたにやってくるのだから」
「まーた、未来から過去に流れるっつー、謎めいた例の時間の話か」
「実際、違う可能性に触れたら、あっという間に過去の記憶や信念は変わるもの」
「……そりゃ、言葉では簡単だろーな」
ホントにそう。時々、やっぱりマドリンネ婦人の言葉はキレイゴトに聞こえる。でも……でも、本当にただのキレイゴト? 今となっては、なんだか……ジブンが正しいのか、彼女の主張が実は正しいのか……わかんなくなってきた。
「そう、今あなたが思っていること、『言葉では簡単だけど、現実はそううまくいくはずがない』ーーその考え方こそがプライドよ。あなたはこれ以上ジブンが傷つかないように、ジブンを守ろうとしてる。信じて違ったら、また心理的に傷つくから、と次なる行動を抑制して……。この心理的に傷つくことが、あなたのプライド的に言えば恥に該当している。もちろん、プライドの選択に従うこともできるわよ? けれどその場合、傷ついた経験以外の可能性に触れることなく終わってしまう。本当は、すぐ目の前にあるのに……」
「っせーな! だから! 毎回毎回可能性には乗っかってきただろ?! で、数打って全部ダメで……。もうどうせ……いちいち言わせんなよ……」
「そこが逆なのよ」
「……逆?」
「そう、あなたは確かに数を打ったかもしれない。けれど、そもそもジブンの解放は、ようやく始められたばかり。『恋人』相手には、まだ1度もやっていないじゃない」
……確かに。
「さっきの、『恋愛とは』ってやつか。フッ……まだそれを言うつもりかよ、身勝手全開の俺を出して、さんざん相手を悩ませろって?」
あれ? ……何でだろう? 私、今の言葉に引っかかってる……。アレ?
だって今……。
「違うわ、それはあなたの価値観でしょう? 相手が悩むなんて、アタクシ一言も言ってなくってよ?」
……それだ! 私がさっき引っかかったところ。身勝手に振る舞っても相手が悩むかはわかんない、気がする……。でも、なんで私、そう感じるんだろ? アレ……?
「ハァッ?!」
「あなたが本音で向き合おうとした時、同じように本音でちゃんと向き合ってくる人間が、少なからずいると言っているのよ〜♪ それが起こるかを試みるのが、恋愛」
……でも、これは恋愛に対して言える……こと?
「ンナわけ……」
「あなたがイメージしている、世間一般にいうイチャイチャはその後よ。まぁ、世間では全く違うように捉えられてしまっているようだけれど……でもだから、みんな後からこじれて、人間関係で苦労しているじゃない。当然よ、お互いにちゃんと向き合える土台を作る方が、うーんと大事なんだもの。その土台があれば、お戯れは何倍も面白いものになるのよ? けれど土台がないと、あっけなく壊れてしまう……それはまるで、砂上の楼閣。あなたの恋愛はこれから始まるのよ。大丈夫よMr.早坂、あなたは最短最高ルートを行こうとしているんですもの〜」
「……意味わかんね。身勝手をぶつけられて、嬉しいヤツなんかいるはずねぇーだろ?」
「あなた……まだ気づかないの?」
あ、マドリンネ婦人……含みのある笑顔。まさか……彼に何か、仕掛けてた?
「は?」
あ。早坂さんも、だ。私と同じ。何のことか……心当たりがない。
「ぜーんぶ、思う存分吐き出して、むき出しのジブン状態で……どう? それを、アタクシが迷惑がっているとでも? 嬉しくない楽しくないと……本当にそう思うの?」
その言葉を聞いて、彼の肩がピクッと反応したのを、私は見逃しませんでした。
何だろ……この感じ。彼の背中から、抜けていくのが見える……毒素みたいな、強くこわばりの原因だった、何かが。
あ……。それも、マドリンネ婦人のニヤッとした口元の笑み。
一気に、空間の雰囲気が……変わった。
To be continued..
この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。
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