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愛される喜びを学ぶ重要性ーー知らなければ体現できない |ジブン解決マドリンネ婦人 File.0002-7


「ほぅら、やっぱり優しい」

「は? 別に……」

「……お母さんの事をかばう器量がある」

「ジブン以外の人間の、それも変えられもしねぇ過去の言動なんか、もうどうしようもねーじゃん、って思っただけ」

 ……大人だ。確かに言ってることは正しい。けど、でも……だって、繊細な幼少期に、すごく苦しめられたのに……なんで? なんでそれを責めずに……。

「……強いて言うなら、向き合う時間が少なかったのよ。そして、あなたはまだ無鉄砲でエネルギーレベルが不安定な『子供』だった」

「向き合う時間……か。それは……心当たり、ある。あの後一気に家族でいる時間が減って、あっという間に別居。ンで、気づけば離婚してた。特に俺は、父親に引き取られたから……なるほどな、時間、か」

 そっか、だからお父さんのこと、あんな風にズバズバと……。

「あら素敵! 客観視ね。……そう、向き合う時間があれば、別の可能性や体感を得ていたかもしれない」

 客観視? あ……そうか、確かに。彼はこれまで、ジブン中心の視点で話してた。でもさっきのは……確かに、冷静だった。当事者のジブンを、そうじゃない自分が冷静に見て、言ってるように聞こえた……。

 そっか、彼、ジブンのことも客観視できるようになったんだ……。すごい成長っぷり。初期は、完全に私と同じで、ジブンから見た状況を理解する思考しかなかったのに……。どんどん、遠ざかっていく……。

「ハッ。わぁーった、そっちはいい。ケド……なんだっけ? もう1つの……エネルギーレベル?」

「うふふ〜、今のあなたならわかるのではなくって? たとえ愛する家族のことであっても、仕事で疲れきっていると、聞く余裕がない時が、大人にはあるということ」

 沈黙。彼もわかるんだ……そうだろうな、これだけ察しのいい人間に、それがわからないはずがない。私も、日々そんなイライラでいっぱいだもん……。

 アレ? 待って……そっか。母親と仕事、両方に責任を持とうとするとかなり大変かもしれない……。あ! そうか、もしかしたら彼は、当時のお母さんの状況と心境を察して……だから、責めなかった? だとしたら……ホント、大人。

「見て、わかんなかったわけじゃ、ねぇ……気もするわ……」

「まーた。過去をさかのぼって、できたであろうことばかりを探して……それが後ろ向きの前進よ。それはしょうがないこと。何せ子供では無理よ、気づけなくて当然。受け入れてもらう喜びを学ぶことで必死な時代ですもの。子供は、愛されてその力の偉大さと素晴らしさを知る。その学びを、今度は大人として次の世代に伝えていくもの。その過程で高まっていくのが『エネルギーレベル』」

「……RPGかよ。……でー? だとしたら俺は今、どのエネルギーレベルにいるんだ?」

「そういう意味では、今、愛される喜びを学んでいると言えるわね」

「んだヨそれ、ガキ同然。終わってんじゃん……」

「困った人。誰だって、全く知らないことは語れないでしょう? 教えられないでしょう? 体現できないでしょう。それを知った風に装いプライドをかざしてジブンだけを守ろうとする事も、確かにできるわ。けれど無知から抜け出せるわけじゃない。だからいいのよ。知らないことでも、ちゃんと本質から学べばあっという間に変わるわ〜♪ 今、あなたは未来にかざすための貴重な経験の中にいる」

 なるほど。だからマドリンネ婦人は最初から……。

 確かに、その存在すら知らないことは、知る機会がなければどうしようもない。そして知ったフリをすることは、確かに世間でよく見かけるけど……私はそういう人が、好きじゃない。自身の嘘つきを棚に上げて何を? って思いもするけど……なぜか許せないって思っちゃう。でも、じゃあ嘘つきな私は……? あぁ、そうか……だから、私は嫌いな人物の中にジブンを含めてるんだ。そう、他人も嫌い、ジブンも嫌い……ホント、嫌気を通り越して、こんなジブンにはガッカリする……。

「……知らないくせに知ったかぶって、相手に尽くしてる気になって……よーやく納得。だから偽善者意識だったわけだ、俺……」

「あなたなりの解釈であれば、その表現も1つ、とは言えなくはないけれど……正しくは、それも違うわ」

「いいのか? 今の俺は、理性的にジャッジしたんだぜ?」

「だって、あなたはプライドを保つために数を打っていたわけではない。愛を知っているのに知らないフリをして、相手を騙していたわけではないわ。ただ……知らないから見つけ出したいという試みの途中にいたというだけ」

 ……良かった。マドリンネ婦人が、私と同じ意見で。

「……へぇ、めずらしー。俺のこと、フォローしてくれんだ?」

「アタクシはいつも自分の感じることを大事にしているだけ。言ったでしょう? 選択は、各個人が持つ特権だと」

 ……あー! だからなんだ! ……今、ようやくわかった。陽気過ぎるハイテンションも、ハッキリ断言だらけに感じるのも……嫌味でもなければ誇張でもない。演技でも、ましてやイタズラに挑発してるってわけでもない。ただただ、全部があの人そのものなんだ。自分の感じることに素直で、それを大事にしてるだけ。否定的な感覚を自分自身に対して持ってないから、その素直さが自信満々に聞こえがちなだけで……そっか、素直に生きられない私みたいな人間にだから、そう聞こえるだけ。本人に、そんな意図なんかないんだ……。そっか……。

 私って、弱いんだな。彼女を見てると、あまりに対称的だから、特にあらゆる言動に批判的になって……。でも、同時にここで彼女をもっと知りたいって思ってる自分もいる。ということは私も……そうなりたいって願望を、少なからず本質的には持ってる、ってこと?

「それにあなたは、『愛』のすぐ手前にいる。だから告白された時、相手に気持ちがあるかわからなくっても、断らないんでしょう?」

「……ん?」

 え……?



To be continued..


この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。



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