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8. アラベスクに取り憑かれた強迫病者

強迫症的なオレンジ色の部屋

8. アラベスクに取り憑かれた強迫病者 2

 人間的な欲望と情動も、自然への崇拝も、形而上学への信奉も、愛について語りあうことも、結局のところすべてが退屈だ。

 だが、退屈でいつづけることにはもう飽きた。わたしは退屈を紛らわすために、街を眺めることを好むようになった。

 世界の叙事詩は、いつしか人々から紡いだ寓話になっていった。

 わたしはアラベスクに取り憑かれている。そしてこれからも言葉の大海と論理の宇宙との境界に幽閉されつづける。さもなければ、この呪われた強迫病的な魂は、その存在をこの世界に繋ぎとめておくことができない。

 それでもわたしは、混沌をあまりに愛している。だから退屈しのぎの寓話をかきつづけなければならない。そして無秩序を語りつづけなければならない。なぜなら、人生は長いのだ、狂おしいほどに長いのだ。

 いつからだろう、愛とは死の花嫁で、アラベスクへの信仰こそが真実だとおもいこんでいたのは。

 オレンジ色の城塞はなおも堅牢だ。

 どうかだれか、これからもわたしに寓話をみせてくれないか。

 あるいはどうか、この夢想する強迫症的なオレンジ色の部屋から、わたしを解放してくれないか。ふたたび、愛について語るために。

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