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カンヌライオンズ2021開幕&速報① デザイン、アウトドア、プリント部門等グランプリ発表

いよいよ始まりましたCannes Lions 2021。昨年の急遽中止を経て、1年ぶりの開催となりました。全てオンラインでの開催となるのは寂しいところですが、例年通り各部門の授賞発表が行われます。正式には、2020/2021となり、2年分の作品を審査することになります。それ故に密度の濃い、クオリティの高いアイデアに出会えそうです。

総エントリー数は、29,074と世界的コロナ蔓延が影響し2019年から約6%のダウンとなりました。ネットワーク系のエージェンシーがエントリーを絞る中、インディペンデント系エージェンシーからのエントリーが14%、プロダクションからが19%増加しています。
部門別では、Titanium部門で+15%、Social&Infulencer部門で+14%、Creative E-commerce部門で+12%、それぞれエントリーが増えています。対して、Creative effectiveness部門で-38%、Creative Strategy部門で-20%と、長期的な視点で考えにくい不透明な時代を反映したものとなりました。
部門数は、Creative Business Transformation部門が新たに加わり28に。毎日グランプリ発表があり大忙しの5日間となります。

早くもデザイン、アウトドア、プリント&パブリッシング、ヘルス&ウェルネス、ファーマの各部門でグランプリが発表になっています。

デザイン部門のグランプリは、2020年は"Notpla"が受賞。世界では年間800万トンものプラスティックごみが捨てられ、海洋汚染の原因となっている。そこで、海藻を原料にしたそのまま食べられる、生分解性の液体用パッケージを開発、様々な飲料ブランドが使用を始めるなど環境問題へのソリューションを示した。パッケージングカテゴリーからの受賞。

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2021年は、ファッションブランドH&Mの"Looop"が受賞。87%の服が使用後ゴミになっている現実に、水や化学物質を使わず、使用済みの服から新たなデザインの服を再生するテクノロジーを開発、ストックホルムのフラッグシップストア内では、その再生過程を観ることができるようにしたもの。Retail Environment&Experience Designカテゴリーからの受賞。

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この部門、日本からは、江崎グリコ・ポッキー "Pocky The Gift"(電通)がゴールドを受賞。NHK・浮世絵 Edo-life "The Hidden Essence"(NHK)とサントリー・天然水 "CPR Training Bottle"(博報堂)がショートリストに残りました。

プリント&パブリッシング部門のグランプリは、スキンケアブランドDoveの"Courage Is Beautiful"が受賞。長くDoveがブランドとして掲げている"Real Beauty"、美しさは見かけではなく何をするかに宿るというそのコンセプトを体現しているかのような、コロナ禍で闘う医療従事者を登場させたシリーズ。肌に刻まれたゴーグルの跡などが現場の過酷さを物語る写真は、実際に登場する人々が撮ったセルフィーで構成、クライアントへの提案から4日という短期間で制作、リリースされた。キャンペーンはカナダで開始され、世界16カ国へと拡がりを見せた。また、登場した人たちの勤務する医療施設近くのOOHにも重点的に掲示するなど、医療従事者を称え元気づけることも目的とした。

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この部門、日本からは、NHK・浮世絵 Edo-life "The Hidden Essence"(NHK)がブロンズを受賞しました。

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アウトドア部門のグランプリは、2020年はバーガーキングの"Moldy Whopper"が受賞。自社製品に保存料等の人工添加物(artificial ingredients)を使うことを止めたことを告知するため、看板商品であるワッパーを35日間に渡って微速度撮影、保存料が入っていないことを証明するカビのはえた(Moldy)ワッパーをキービジュアルとしてムービーやOOHに展開し、話題となった。広告を見た人の88%が好意的に受け止めたそうで、品質イメージが26%アップ、売上も14%上昇した。84億というとてつもないインプレッション数を獲得した。

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2020年からのもう一つのグランプリ、ルノーの"Village Electrique"。離れた距離を走るには不便というステレオタイプが強く、電気自動車への移行が進んでいないフランス。そこで、Appyという片田舎の村に住む人たちの車を全て自社のルノーZOEに変えてもらい、100%電気自動車が走る村に。自動車が不可欠な村でも、電気自動車が問題ないことをデモンストレートした。カルチャー&コンテクストカテゴリーからの受賞。

2021年は、ハイネケンの"Shutter Ads"が受賞。コロナ禍で休業を余儀なくされた世界の5,000軒のバーのシャッターを屋外広告スペースとして利用、媒体費として約750万€(約10億円)がバーの収益に還元。触発された競合ブランドも始めるなど拡がりを見せた。

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この部門、日本からは、NHK・浮世絵 Edo-life "The Hidden Essence"(NHK)がショートリストに残りました。

ヘルス&ウェルネス部門のグランプリは、2020年がイギリスの石鹸ブランドBECoの"#StealOurStaff"が受賞。イギリスでは100万人以上の障害者が仕事を見つけることに悩んでいる。そこで、80%の従業員が障害者であるBECoは、我々の従業員を奪って(steal)下さいと有名企業に向けメッセージ、OOHや商品パッケージに従業員の履歴書(CV)を載せるなどし、問題提起と雇用促進を計った。

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2021年は、生理用品ブランドBodyfoam/Libresseの"#WOMBPAINSTORIES"が受賞。"Blood Normal"、"Viva la Vulva"などで今まで語られてこなかったタブーを描いてきたブランドは、今回pain(痛み)にフォーカス。女性の10人に1人が悩んでいると言われる子宮内膜症(endometriosis)や腺筋症(adenomyosis)など、おおっぴらに話したり相談できないが故に知識の得られなかったテーマを明るみに出しすことで、話題にしやすくしたり、悩み解消の一助となることが目的。話題を誘発するものとして、傷みを比喩的な言葉やアートで表現したPain Doctionaryやリサーチ結果をまとめたPain Report、ヴァーチャルの博物館Pain museumなどを様々なコンテンツを制作、拡がりのあるキャンペーンを構築した。

この部門、日本からは、DREAMS・Pocket Soapの"30sOAP"(TBWA\HAKUHODO)がブロンズを授賞しました。

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ファーマ部門のグランプリは、Woojerの"Sickbeats"が受賞。アメリカには、嚢胞性線維症(cystic fibrosis)という消化器系と呼吸器系に異常をきたす難病に悩む子供たちが3万人もいる。その治療に使われる器具(ベストのようなもの)は、子供たちにとって我慢を強いられる非常に退屈なものだった。そこで、ゲーム機器ブランドのWoojerは、40ヘルツの音波振動を与えるその治療法に着目、音楽配信サービスのSpotifyと連携し、何千もの楽曲を治療に使えるようにできるベストを開発し、子供たちの治療を少しでも楽しいものに変えた。

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また、国連とも連携しセレクトされるグランプリ・フォー・グッドは、イギリスのCentral Office of Public Interest(公共広告機構のような団体?)の"ADDRESSPOLUTION.ORG"が受賞しました。大気汚染は健康に深刻なダメージを与えているにも関わらず、見えないため軽視されている。そこで、イギリスの15億もの場所(20平米ごと)の大気汚染データをみんなが関心を持つ土地の価格と紐付け、可視化することで話題に。不動産業者は、その土地の大気汚染情報を開示しなければならないという法改正にも至った。

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