2023年J1リーグ展望① 【2022年1位~5位】

日本代表が台風の目となり世界を驚かせたカタールワールドカップが終わり、はや2か月。

ワールドカップ終了直後の12月末からは各国欧州リーグが再開。
2月11日には国内リーグもシーズンに突入。昨年王者×天皇杯覇者のスーパーカップが行われ、そして2月17日にはいよいよ2023年J1リーグが開幕。前年度王者・横浜Fマリノスと準優勝・川崎フロンターレという最高のカードでシーズンの火蓋を切る。

今季も例に漏れず激戦必至のJ1リーグ。オフシーズンの各クラブの移籍動向を中心に、2023年の展望をしていきたいと思う。

まずは2022シーズンの1位~5位まで。


★横浜F・マリノス(2022シーズン優勝)

2022シーズンは、Jリーグクラブとして最高地点ともいえるハイプレス×ハイインテンシティの攻撃的フットボールを見せ、勝ち点差以上の強さで王座を奪還した。スタイルの定着度を考えると、今年もリーグの中心チームの1つになるのは間違いないだろう。

戦力面の最も大きな変化は、昨年度JリーグMVPの岩田智輝(→セルティック/スコットランド)の海外移籍。昨年フィールドプレイヤーの中で最長の出場時間をマークし、センターバック・ボランチで守備の中核を担った彼の離脱はかなりの痛手だ。

しかし、ボランチの層の厚さは元から国内随一。昨年も主力だった面々、キャプテン喜田拓也、日本代表経験者の藤田譲瑠チマ、渡辺皓太、昨シーズン高卒ルーキーながら存在感を見せた19歳の山根陸に加え、下部組織から明治大学を経て今季から加入したハードワーカー木村卓斗と質も量も問題無し。
CBには即戦力の上島拓巳(←柏レイソル)を獲得し、畠中慎之輔、角田涼太朗、エドゥアルドらと共に、岩田の穴を埋める。

岩田と同様に大きな影響を与えそうなのが、GK高丘陽平の海外移籍。移籍先は決まっていないものの、先日チームからの離脱が発表された。
ナイジェリアハーフの193cmオビ・パウエル・オビンナと、古巣復帰となった飯倉大樹(←ヴィッセル神戸)あたりのポジション争いとなるが、昨年の高丘のパフォーマンスを考えると不安要素になるのは間違いない。

攻撃陣では2019年リーグMVPのWG仲川輝人(→FC東京)、昨年11得点のFWレオ・セアラ(→セレッソ大阪)が移籍し、宮市亮の復帰もまだまだ時間が掛かりそう。

エウベル、アンデルソン・ロペス、水沼宏太への負担は大きくなりそうで、怪我や不調が絡むと昨年の爆発的な得点力は鳴りを潜めるかもしれない。新戦力のブレイクか、夏の補強は連覇への必須項目だろう。


★川崎フロンターレ(2022シーズン2位)

昨年の終盤、怒涛の猛追劇で最終節まで優勝争いを演じるも、またしても3連覇を逃してしまった川崎フロンターレ。6年ぶりに無冠で終わるという悔しいシーズンとなった。
鬼木体制7年目。今季は今いちど日本を牽引する最強クラブになるための節目の年になるのは間違いない。

その理由の1つは、長らく川崎の最終ラインに君臨した前キャプテン・谷口彰悟(→アル・ラーヤン/カタール)の完全移籍。精神面・プレー面どちらもかなりの影響を与える実に大きな変化だ。
川崎のようなポゼッションに重きを置くチームにとってセンターバックは幹といえるポジションで、当然谷口ほどフィジカルに秀で、ボールを扱えて、経験豊富なディフェンダーがそう簡単に見つかる訳がない。全員で谷口のいないフロンターレを再構築する必要がある。
車谷紳太郎、ジェジエウはもちろん、即戦力として新加入した大南拓磨(←柏レイソル)に大きな期待がかかる。

長らく無風状態だったGKのポジションには、上福元直人(←京都サンガFC)が加入。日本人随一の足元の技術と、プレーエリアの広さ、神がかったシュートストップで、正守護神チョン・ソンリョンと熾烈なポジション争いを繰り広げる。

攻撃陣は瀬川祐輔(←湘南ベルマーレ)の獲得と、宮代大聖(←サガン鳥栖)のレンタルバックに動いた。特に宮代は抜群のシュートセンスを武器に昨季出場22試合ながら8得点で鳥栖のチーム得点王となった。昨年課題となったセンターFWの得点力不足を解決する躍進に期待したい。

圧倒的な強さで優勝した2020シーズンから比べると、三苫薫、旗手玲央、守田英正、田中碧、谷口彰吾と実にフィールドプレイヤーの半数が海外移籍。
馴染みの4-3-3から3バックに変更するという情報もある。文字通り、チームが生まれ変わる為の1年となるだろう。


★サンフレッチェ広島(2022シーズン3位・ルヴァンカップ優勝)

2022年はドイツ人監督ミヒャエル・スキッベが就任し、走力と勢いを武器にしたトランジションの速いフットボールで就任1年目からタイトルを獲得。夏のE-1選手権では6人が日本代表に選出されるなど、充実のシーズンを過ごした。
リーグ優勝を本格的に狙う今季、主力選手の大きな流出も無く間違いなく優勝候補に数えられるチームだ。前年のスタイルを基本形としながら如何に練度を上げて勝ち切れるチームを作れるかに注目だ。

昨年の主力級で移籍が決まったのはDF野上結貴(→名古屋グランパス)とMF藤井智也(→鹿島アントラーズ)。野上は安定した対人守備で昨季25試合出場し、荒木・佐々木・塩谷の日本代表トリオとポジション争いを繰り広げた。
藤井は爆発的な加速力とスプリント回数で前半戦大活躍したが、夏以降は出場機会が減り移籍となった。

加入は大卒ルーキーやJ2からの個人昇格がメインで、J1での実績があるのは志知孝明(←アビスパ福岡)のみ。昨季のシステム継続であれば、志知を左WB、柏好文を右WBを基本にした3-4-2-1が予想される。

ACL出場権を得たことで厳しい日程を戦うシーズンになるが、レンタルから復帰した松本大弥(←ツェーゲン金沢)や、川村拓夢、棚田遼など、ブレイクの香りのする若い力が多数いるのは心強い。

昨年大卒1年目で大ブレイクを果たした満田誠、元スイス代表FWベンカリファ、昨夏に加入しルヴァンカップ優勝へ導いたキプロス代表FWソティリウらの攻撃陣に、2桁得点をマークするような選手が現れれば難なく2強に割って入る事が出来るチームになるだろう。


★鹿島アントラーズ(2022シーズン4位)

昨季は前半戦で首位を走るも、夏以降に連敗・監督交代と急降下してしまった鹿島アントラーズ。
シーズン途中から監督に就任した岩政大樹監督の下、必ずやタイトルを奪還し、”常勝鹿島”を取り戻す。そんな意志が見えるシーズンオフの補強が発表されている。

Jリーグファンを驚かせたのは、何といっても昌子源(←ガンバ大阪)、植田直通(←ニーム・オリンピック/フランス)の再加入。2016年にリーグ優勝を果たし、クラブワールドカップでレアル・マドリードとも戦った鹿島の最後の黄金時代を知る2人を引き戻した事にクラブの覚悟が伺える。
昨年はセンターバックの固定化に苦しみ、最終ラインのミスからの失点も目立った。その中で、センターバックにコンバートされ存在感を放った三竿健斗(→CDサンタクララ/ポルトガル)も海外移籍。日本代表経験も長い日本人トップクラスのセンターバック2人の力で、安定した守備の構築を図りたい。

そして昨年夏の上田綺世(セルクル・ブルッヘ/ベルギー)の移籍後から深刻な決定力不足に陥ったFW陣には鈴木優磨の相棒として、知念慶(←川崎フロンターレ)を獲得。垣田裕暉(←サガン鳥栖)がレンタルから復帰し、注目株の大卒ルーキー・師岡柊生(←東京国際大学)も加入。既に実力を証明済みの荒木遼太郎や染野唯月と戦力は十分。

実力派のFWが揃った一方で、鹿島には珍しくブラジル人ストライカーが不在。ジーコ氏のテクニカルダイレクター退任に伴い昨年から掲げた「脱ブラジル路線」が表れた形だ。
優勝の味を知る監督・選手を揃え、新たな”常勝鹿島”の復活元年を目指す。


★セレッソ大阪(2022シーズン5位・ルヴァンカップ準優勝)

小菊昭雄監督が開幕から指揮した2022年のセレッソ大阪は飛躍のシーズンを過ごした。高い位置設定のディフェンスと、そこからの速攻という明確なスタイル、GKも含めた安定感のあるビルドアップを築き上げ、シーズンを通して上位で戦うことに成功した。
補強面でも昨年は非常に高い評価を受けており、J2から獲得した毎熊晟矢、中原輝、鈴木徳真、上門知輝らが躍動。派手さは無いがパーフェクトな補強で、J1クラブの強化のモデルタイプを作ったとも言える。

一方で今季はジョルディ・クルークス(←アビスパ福岡)、レオ・セアラ(←横浜Fマリノス)といった破壊力抜群の外国人選手を補強。
ジョルディ・クルークスは、松田・毎熊・中原で形成されるセレッソ自慢の右サイドに厚みと違いを生み出す事が期待され、レオ・セアラは絶対的ストライカー不在というセレッソ唯一の弱点をカバーしてくれるだろう。
ジェアン・パトリッキ(→ヴィッセル神戸)、アダム・タガート(パース・グローリー/オーストラリア)の移籍の影響は懸念されたが、補って余りある戦力を手にした。

日本人選手もU-21日本代表・藤尾翔太(←徳島ヴォルティス)のレンタルバック、高校No1司令塔・大迫塁(←神村学園高校)、ユースから飛び級でのトップ登録となった17歳の怪物・石渡ネルソンと魅力的な若手選手が入団。
そして最後の仕上げに、レジェンド・香川真司(←シント=トロイデンVV/ベルギー)の復帰が決定。

堅実なチーム作りは昨年まで。今季はゲームモデルも戦力も申し分無し。
本気でタイトルを狙いに行くシーズンになりそうだ。


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