見出し画像

北の暴風域【北海道コンサドーレ札幌】

3月の代表ウィーク明けで最も「派手」だったクラブは北海道コンサドーレ札幌だろう。
第6節川崎フロンターレ戦は3-4、第7節セレッソ大阪戦は3-2と、取っては取られる壮絶な打ち合いを演じた。リスクを軽減しながら点を取るフットボールがトレンドになりつつある現在のJリーグにおいて、”超攻撃的”を信条とするクラブは希少だ。

得点数はリーグ2位タイの13点、逆に失点数はワースト3位の13失点の攻撃的なスタイルで、北の地から今年もJリーグを沸かせ台風の目となっている。


成熟のペドロヴィッチ体制

北海道コンサドーレ札幌は他の地方クラブの例に漏れず、J1とJ2を行き来するエレベータークラブの1つだった。しかし2017年のJ1昇格後、2018年にミハイロ・ペドロヴィッチ監督が就任するとクラブ歴代最高の4位でシーズンを終え、そこからは残留争いとは無縁の中堅クラブとなった。

ペドロヴィッチ監督の代名詞は「ミシャ式」と呼ばれる3-4-2-1ベースの可変システム。ポゼッション時には4-1-5に形を変え、流動的に動く超攻撃的な戦術である。広島や浦和で指導を受けた選手達も「攻撃をデザインする事に関しては世界トップクラス」と声を揃える程、オフェンシブなチーム作りに定評のある名将なのだ。

昨年は最終順位が10位ながら、失点数はリーグワースト2位。もちろん守備の立て直しは必要なのだが、この唯一無二なスタイルがフットボールファンを惹きつける所以だろう。

躍動する新戦力

そんなミシャ式にピッタリの個性を持つ2人の新戦力が今季、躍動している。

1人目は小林祐希。オランダやアメリカで活躍し、日本代表キャップも8試合ある名手だ。
開幕から3試合は途中出場が続いたが、第4節横浜Fマリノス戦・第5節ガンバ大阪戦の”0トップ起用”は札幌の可能性を大いに広げるものだった。
トップの初期位置から味方にスペースを空けながらボールに関わり、持ち前のテクニックと視野の広さを発揮。札幌の武器であるシャドーとウイングバックが飛び出していくスペースを作りながら、ゲームメイクに参加できる小林の加入はミシャのフットボールに質の高いオプションを与えた。

2人目は浅野雄也。カタールワールドカップでも大活躍した浅野拓磨の実弟である。
兄同様、瞬間的なスプリントと決定力が武器で、この浅野と小柏というスピードに秀でた2シャドーが相手最終ラインの裏を常に狙っているのが今季の札幌の攻撃の注目ポイント。
元来、ペドロヴィッチのサッカーは1トップ、2シャドー、ウイングバックの5枚で相手の最終ラインのギャップを突くのが特徴で、この役割を与えられた浅野が自らのストロングを爆発させている。
この2人の加入で、より最前線に動きの多いアグレッシブなチームになっている印象だ。

他にも試合を決める左足を持つ菅大輝、福森晃斗の両レフティや、得点力とドリブル突破による局面打開力を兼ね備える金子拓郎など、明確な武器を携えるアタッカーが札幌には多く存在する。
彼ら魅力的な攻撃陣がリスクをかけてゴールに向かっていく様は、本当にエキセントリックで刺激的だ。

激しい打ち合いに引き込まれると強豪クラブといえどひとたまりもない。

今年もコンサドーレ札幌はリーグの台風の目であると同時に、”暴風域”のようなフットボールでJ1の舞台をかき乱す。

サポートをしてくれたら、そのお金で僕はビールを沢山飲みます!