~10.29 第33節ガンバ大阪×ジュビロ磐田 観戦記~

10月29日(土)パナソニックスタジアム吹田。
最終節に近付くにつれて、より一層熾烈を極める残留争いにおいて最重要なガンバ大阪×ジュビロ磐田の試合を現地観戦した。

ホームで迎え撃つ16位ガンバ大阪は10月8日首位・横浜Fマリノスに2-0で勝利して以来3週間ぶりの試合と、かなり余裕を持てる日程。本拠地で勝ち点3を積み上げ、残留を引き寄せたい。

対する18位ジュビロ磐田は、痛み分けのドローとなった静岡ダービー以来1週間ぶりの試合。負けた瞬間に自動降格が決まる極限状態で、同じく残留争いをするクラブとの直接対決が続く。

残り2節。互いに敗けは許されない運命の1戦。秋風を吹き飛ばすほどの熱気に包まれた吹田のピッチを綴る。

☆凱旋、そして挑戦

上着を着ると汗の滲む快晴の13:40。千里中央駅で先輩芸人のしがしがさんと合流。しがしがさんはブルーとサックスブルーの中間のような色のスウェットを着ており、中立に見える出で立ち。

そこからモノレールに乗り換えるとガンバ大阪のユニフォーム姿の男女や子供たちで埋め尽くされ、地域に根付いた人気が良く分かる。

万博記念公園駅に着き10分程歩き、スタジアムの姿が見えた辺りで、既に太鼓の音と応援の声が聞こえる。スタジアムに足を踏み入れると、その圧はより一層強まり、この試合に向けたサポーターの覚悟を感じられた。やはり声出し応援のあるスタジアムは一味も二味も違う。

キックオフ時間の15:00が近付き、とうとう選手入場。
お互いに勝ち点3を手にする以上に重要なトピックスはないのだが、ファン目線だとやはり気になってしまうのは、ジュビロ磐田・遠藤保仁の存在。
移籍後初めてのパナソニックスタジアム吹田でのプレー、更に上原の出場停止もありスタメンでの出場。遠藤保仁が、宇佐美・東口・三浦らと対峙する、その姿だけで高揚感が高まった。

そして遂に、キックオフ。観客数は27988人。ホームゴール裏からは轟音の様な応援の声が鳴り響く。対する磐田サポーターも高く飛び跳ね、奇跡の残留に向けて力を与える。

先に主導権を握ったのはホーム・ガンバ大阪。地上では宇佐美、ファン・アラーノが、空中戦ではレアンドロ・ペレイラがボールを引き出し、サイドバックまで含めた分厚い攻撃で相手陣地に押し込む。

対する磐田も遠藤を中心としたパス回しから、右ウイングバック鈴木雄斗、左のセカンドトップのジャーメイン良がボールを前進させるが、ガンバ大阪の元代表トリオの最終防衛線を前になかなか決定機を作れない。

両チーム生死のかかった試合だけに、リスクを掛けすぎない前半を過ごそうという印象だ。

そんな中、違いを見せたのは宇佐美貴史。前半41分、細かいタッチで密集した守備者3人を躱しペナルティエリア深くに侵入。鋭いクロスはGKに弾かれ、フリーの小野瀬の足元へ。完璧な崩しから先制点かと思われたが、シュートは枠の上へ。

ホームゴール裏は、大きなため息の後、より一層声援が大きくなる。大きなミスもなく宇佐美を中心にゴールの臭いを感じさせたガンバ大阪優勢で前半終了。

ハーフタイムに入ったので、後半に向けてトイレへ。しがしがさんは席に着いたまま。しがしがさんは膀胱が強い。

運命の後半。
序盤は磐田がボールを保持する時間が多くなった。遠藤、山本康を経由しながらサイドを崩しゴールを脅かす。14分には中央でボールを受けた山田から右サイドに駆け上がった鈴木雄へ展開。グラウンダーのクロスにフリーの遠藤が合わせるもシュートは大きく枠の外へ。

磐田が主導権を握りつつ、ビッグチャンスを逃したこのタイミングで、ガンバ大阪・松田監督が先に動いた。食野、パトリックを投入し、いよいよ本格的に得点を奪いに行く。

そして交代策がいきなり実を結ぶ。
後半21分、若干前掛かりになり間延びした磐田のライン間で山本悠がボールを受けると、投入直後の食野へパス。中央での1対1は、鋭い持ち出しで足を出させた時点で勝負あり。DFの股を抜くグラウンダーシュートで見事な先制ゴール。

食野の3か月ぶりのゴールがこの局面で出た。スタンドに向かって喜びを爆発させ、360度囲まれたスタンドも波打つように呼応する。

一方、苦しくなったのは2点が必要になった磐田。ここからはよりポゼッションを高め右サイドから何度もゴールに近付くが、ゴール前中央の堅い守備を破れない。

後半30分が近付き、磐田ベンチ前には金子、松原、古川が準備。総力を投じた攻撃の準備をしたその時。
ガンバ大阪・斉藤がペナルティエリア内に入れた浮き球をパトリックが豪快なバイシクルシュート。勝ち点3を引き寄せる追加点を決めた。

やはりパトリックは点を取る。総合力では他に優れたFWがいるかもしれないが、前節・横浜FM戦に続きこういう場面でしっかりと追加点を挙げる辺りが、彼の最大の特徴だろう。

ここからは勿論、最後まで逆転を狙う磐田、跳ね返すG大阪の構図。古川の突破や、コーナーキックでチャンスは作るが、東口のビッグセーブも飛び出しスコアは動かない。2-0でゲームは終了。

3冠戦士のパトリック、ユース出身の食野。違った形で濃いガンバの血が流れる2人が勝負を決めた。最終節はアウェーでの鹿島戦。難敵だが、前半戦ほどの風格は感じない。総力戦で勝利し、残留そして来季の躍進を期待したい。

ジュビロ磐田は1年でのJ2降格となった。
終了の笛が鳴り、うなだれる選手たち。アウェーの地まで応援に来てくれたサポーターに挨拶し、ドレッシングルームに引き揚げるが、1人の選手のみピッチに残った。遠藤保仁。

グラウンドを1周し、約2年振りのパナスタに凱旋の挨拶。スタンドからは大きな暖かい拍手。現在のガンバ大阪を創り上げたともいえるレジェンドには、ガンバサポーターも感謝しかないのだろう。そして、こんな形での再会で無ければ良かった、そんな想いも感じ取れた。

遠藤自身も来季はJ2での戦いとなるが、自陣でのゲームメイク、1本で最終ラインを突破する縦パスのクオリティはまだまだ国内随一だった。
黄金世代の引退が続く中、このレジェンドのプレーが生で見られる事に感謝しなければいけないとも思った。

苦難の時期が続いている名門ジュビロ磐田だが、かつてのガンバ大阪同様に、これからレジェンドの植え付ける”何か”が、近い将来芽吹くだろう。

エレベータークラブの称号を得てしまったかつての名門で、42歳の大ベテランの新たなチャレンジがスタートする。

サポートをしてくれたら、そのお金で僕はビールを沢山飲みます!