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融資期間50年の住宅ローンから学ぶマンション購入と借金についての考え方

こんにちは。Xでマンション好きの外資コンサルという名前のアカウントをやっています。本業の傍ら、主にタワマンの購入や売却を細々と投資兼趣味でやっており、東京と大阪で計8回の購入と2回の売却を経験しています。

今回は、Xで昨日話題になった京葉銀行の50年返済の住宅ローンを題材に、住宅購入初心者向けの記事を書こうと思います。題材は以下の私のポスト。

引用元は京葉銀行が50年の住宅ローンを提供開始という日経ニュースなのですが、引用リツイートを見てみると見事に反応が割れています。多くの人は「一生負債を背負うなんてあり得ない」とか、「若者を食い物にするな」、みたいなことを書いていますが、マンション好きな人は全員「俺たちの京葉銀行イエえええええい✨!!!」みたいな反応で、あまりの温度差に笑ってしまいましたw

ここまで解釈が割れるのは背景の考え方に致命的な断絶があるためですが、これを題材に「マンションを買っている人が借金に対してどのような考えを持っているのか」を記事にしたら、マンションでローンを組むのが不安な人の背中を押せるかな?と思いつき記事にします。

マンションに詳しい人達には当たり前すぎて記事にするのも憚られるのですが、初心者向けの前提で何故50年返済の超長期住宅ローンが良いのかについて結論を書きつつ、何故私たちが借金を愛して止まないのかについても後半で記述します。


50年ローンの何が最高なのか

結論から行きましょう。
世間の人は「50年間借金を背負う」という捉え方をしていますが、マンション界隈の人々は「50年間借金を返す義務がない」と捉えており、これを「期限の利益」と呼びます。この捉え方の違いが今回の温度差の全てです。
50年ローンの良さは以下の3つに集約されます。

①毎月の出費が抑えられる

通常35年かけて完済するローンを50年で完済すればいいので、当然毎月の支出が抑えられます。例えば30歳年収1000万円のサラリーマンAさんが1億円の住宅ローンを変動金利0.5%(50年だと+0.1%)で借りると仮定すると月々の支出は・・・

 35年:259,585円/月
 50年:192,956円/月

で、なんと7万円弱も安くなります。
資産形成は投資元本の大きさと、運用期間の長さ(≒残りの人生の時間)で決まるので、若いうちのフリーキャッシュフローを増やすのは極めて重要です。若い時からこのお金を投資することで、福利の力が長期で働いて後々大きな資産になります。以下は投資信託の「eMaxisslimオールカントリー」に35年間月7万を投資した際の期待値を計算したものですが、投資元本に対する35年後の期待値は+1.1億円ほどになっています。

このように、ローン返済の繰り延べ(期間を延ばす)で月々の出費を抑えられることの資産形成上のメリットがよく伝わったのではないでしょうか。
ちなみに、もっと金利が高い世界を仮定すると、ローンを出来るだけ早く返すことが正当化されます。元本の返済が進めば進むほど、支払う金利も減る(元本に対して金利がかかる)ためです。金利が低い日本では、ローンを借りるための資本コスト(金利)を、それによって浮いた現金を投資に回したときの期待利回りが大きく上回るため、出来るだけ返済を遅らせることが正当化される、というわけです。住宅ローンの資本コストを前提にすると、前者が0.5%で、後者が4%くらいはあるので、仮に1%程度金利が上がってもまだまだ全然返済を遅らせる方が得です。


②毎月の出費が抑えられることで、背伸びしやすくなる

マンションクラスタ的にはこちらがよりしっくり来ると思います。
①で1000万円の年収の人が1億円借りることを例に出しましたが、35年返済の場合はこれは無理しすぎの水準です笑

一般的に住宅ローンの返済は手取りの30%以内に収めるのが推奨されますが、手取り年収約725万円に対して、返済は312万円/年に上り、43%を住宅ローンの返済に充てていることになります。一方、50年ローンにした際の返済は226万円/年になり、31%ですので、概ね無理のない上限値に収まってきます。ちなみに35年ローンで31%の返済に抑えるには概ね7200万円ほどになります。

つまり、50年ローンの提供のおかげで、Aさんは2800万円分背伸びして1億円の物件が買えるわけです。これはマンション購入において極めて重要な武器になります。

マンションは、安物買いの銭失いをこの上ないほど体現した市場です。多くの人が欲しがり高騰している物件を買うほど、結果的にその後も値上がって得する可能性が高く、リスクオフで万人に手の届きやすい物件を買うほど、値下がりして結果的に損をするリスクが高まるという、中々難しい市場です(マンションに限らず、クルマなど高額かつ機能価値以外の感性価値の比重が高い商品は大体これが当てはまります)。

その文脈では、私は東京や大阪など大都市の出来るだけ中心部の大規模駅近タワーマンションを買うことを推奨していますが、当然そう言った高付加価値の物件は値上がりしているのでサラリーマンが買うのは日に日に難しくなっているのが事実です。(推奨する理由は以下の記事をご覧ください)

50年ローンはそんな難しい状況に置かれた若手サラリーマンの強い味方です!残念ながら、今の東京で7200万円の予算では「ここなら資産価値安心だね」という物件は消滅しています。この予算帯で相談されても東京だと僕は何も提案できません。一方、1億円出せれば有明の大規模築浅タワマンや、勝どきや豊洲の築10年ちょいのタワマンの2LDKくらいはまだ買えます。2024年の2月に、僕もがっつりお手伝いしてパークタワー勝どきの1LDK1億円をマンション初購入で買った友人夫婦がいますが、その物件は半年後の今で時価1.3億円ほどです。

50年ローンというと、死ぬまで返済に追われるイメージを世間の人は持っているようですが、人気の大規模駅近タワーを買えば2~3年後にライフステージが変わったときに値上がった自宅を売って引っ越すことも可能になり、50年どころか3年で完済して次の家に向けたお金が残ったというシナリオの可能性も高いです。もし景気ショックが来て売り辛い情勢になったとしても、返済可能な範囲の額で借りていれば給与が続く限りはその家に住み続け、景気回復をまで粘り勝ち出来るのも自宅投資の強みです。

若手サラリーマンの皆さんは、清水の舞台から飛び降りる気持ちになるかもしれませんが、出来るだけ長い返済期間を武器に、大規模駅近タワマンを買うのを個人的にはお勧めします!

手の届きやすい中途半端なマンションを7000万円で買うより、誰もが欲しがる大規模駅近築浅タワーマンションの狭い部屋でも背伸びして買った方が結果的に損しません!


③病気のリスクを保険会社が多く取ってくれる

最後は病気のリスクについてで、これはまさにマンションならではのユニークな論点です。自宅用でも投資用でも、個人で金融機関からローンを借りて不動産を買う際には必ず団体信用生命保険という保険に加入します。

ご存じの方も多く説明は蛇足ですが、簡単に言うと病気や死亡などで返済不能な状態に陥った債務者の残りのローンを保険会社が肩代わりしてくれるものです。死亡or癌に罹患するとローンの全額が返済されるものが多く、不動産市場の安定化を図る素晴らしい制度です。

病気のリスクは当然、高齢になるほど高まり、その期間に保険会社が背負うリスクは当然に膨らみます。そろそろお察しかと思いますが、50年ローンは30歳で借りて80歳での完済を条件にしている通り、高齢まで借りることが前提の商品のため、相対的に保険会社が通常の住宅ローンより高いリスクを取り、その代わりの対価(病気リスクへの備え)をユーザーに提供している状態なのです。

30歳で1億ローンを借りたAさんが悲しいことに70歳で癌になってしまったとしましょう。その際に35年ローンと50年ローンの残債を比較すると、

 35年:ローン残債0万円(←自力で完済済)
 50年:ローン残債2,246万円(←これが保険でチャラになる)


ということで、なんと2,246万円の借金が保険で清算されます。実は私の父も団体信用生命保険が下りており、実家マンションは1000万円超の残債が清算された経験があり、本当に庶民にとってはありがたい制度だと思います。

この素晴らしい制度が成り立つのは、多くの団信加入者は病気にかからずに完済して保険会社に利益のプールがあるためで、借金が嫌で出来るだけ返済期間を短くしたり、前倒し返済して若いうちに完済を急ぐ人たちの努力の賜物です。
そう言った行動に感謝しつつ、我々は長期間借りることでフリーライド出来る仕組みです。

保険は「相互扶助の仕組み」であり、50年ローンを組むことで受益者側になれる可能性が格段に高まります。僕は返済を一秒でも遅らせるように全力を尽くします

以上が、50年ローンでマンション界隈が興奮していた背景です。

出来るだけ多く、出来るだけ長く借りよう!

マンションに詳しい人たちは、
「出来るだけ多く、出来るだけ長く借りろ!」
とほぼ口を揃えて言います。自分で言ってて思いますが、恐らく99%の日本人には頭おかしい人だと思われていると確信しています笑

日本は長く続いたデフレで形成された「借金は悪」という考え方が非常に根強く、「借金を50年かけて返す」というワードだけで普通の人は蕁麻疹が出るため、冒頭ポストのような温度差が生まれます。前の段落の3つの理由で「出来るだけ長く借りるべし」と論じましたが、「返済期間云々以前にそもそも借りるべきではない」と考えている人が多いのが現状です。

翻って「何故借金は悪ではないのか」「何故出来るだけ多く借りるべきなのか」の部分が無いとこの記事の内容に納得できない人もいるはずなので、最後に簡単に私の考えに3つ触れて終わりにしたいと思います。

①貨幣の価値は下がり続け、借金の価値は減り続ける

貨幣の価値が下がることをインフレーションと呼びます。実は近代人類史はインフレの歴史であり、常に貨幣が供給されて価値が下がる一方です。この供給はマネーストック(通称M2)という指標で表されるのですが、日米それぞれのM2推移が以下になります(画像は拾い物)

アメリカのM2(出展:THE GOLD ONLINE)
日本のM2(出展:経済産業研究所)

M2の推移を見ていただければ分かる通り、数十年に渡って一貫して増加です。資本主義は人間の「もっと豊かになりたい」という欲望を「お金」で可視化して経済活動を増やす仕組みを持っており、経済活動に必要な「お金」を資本主義社会が常に求めます。それに対して中央銀行はお金を供給する使命があるため、人間の成長したい欲望がある限り、資本主義が続く限り、中央銀行はお金の供給を増やし、インフレが進みます。経済活動が行き過ぎた結果バブル崩壊に至り、実体経済に近づく調整として30年のデフレが起こったのが日本ですが、世界で見ればデフレの方が珍しく、日本は既にインフレ転換しつつあります。

貨幣の価値が下がると、私たちが借りている借金(ローン)の価値は低下します。例えば20年前にタワマンを買うために1億円借りた人の1億の価値は、インフレで低下した貨幣の現在価値に応じて圧縮されていきます。

では、借金が圧縮された結果起きるのは何でしょう?
借金の対価として得たシーソーの逆側としての実物資産価値の上昇です。20年前に1億借りて買った実物資産としてのタワマンは、今売ったら2億になったりして、借金の圧縮が現実世界で換金されます。

まとめると、資本主義と人間の欲望が続く限り基本的に貨幣の価値は下がり、借金の価値は下がり、対価として得た実物資産の価値が向上するので、高付加価値な実物資産(金融資産含む)に投資するための「正しい借金」は資本主義上の基本戦略であり、正しい借金であれば決して悪ではないのです。

以下のポストは大変面白い例で、6000万円では今はタワマンの1LDKすら買えるか怪しい水準ですが、20年前は都内のタワマンの立派な部屋を買うことが出来、100年前は銀座線を開通することが出来ました。どんどん円の価値は下がって来てますし、今後も長期で見れば下がる可能性が高いです。

②日本の住宅ローンは世界最強の金融商品である

正しい借金は悪ではないと述べましたが、借金は当然ノーリスクではなく、払えなくなって困窮したり、高すぎる金利にあえぐ可能性もあるので、常に最善策とは言えません。しかし、日本の住宅ローンは違います。断言しますが、これは日本が世界に誇る最高性能の借金であり、日本人に使用許可された最強の武器です。日本の住宅ローンは以下の通り、

・超低金利(0.2%とか頭おかしい)
・超高Loan to Value(頭金の少なさ。全額フルローンとか頭おかしい)
・超長期間返済(50年ローン出来るとか頭おかしい)
・超高額融資(JTCサラリーマンに年収の10倍貸すとか頭おかしい)
・超性能生命保険付き(団体信用生命保険とか頭おかしい)
・税控除付き(住宅ローン控除まであるとか頭おかしい)

完全にイカれた性能で、地球上にこれ以上のローンは知る限り存在しません。普通の借金はもっと高い金利で、頭金も多く求められ、返済額は伸びず、もっと短期で返済迫られるし、死んでも許されず保証人が返します。

日本は高い税率や社会保険料など、生きていく上で経済的に厳しい制度も多い国ですが、資金調達環境に関しては世界最高水準の国です。インフレが進む世界において、こんな超性能ローンを使わないというのはセルフ縛りプレイでゲームの難易度を上げるのが好きな人なのかなと勘繰ります。

尚、この世界最高のローンが提供出来るのは、日本の雇用環境の安定性に依拠しています。日本は解雇規制が非常に強く、失業率も低い国です。雇用主が安定してさえいれば、借主は簡単にクビを切られないので、雇用主の信用をそのまま自身の信用として使うことが出来るわけです。事実、住宅ローンの貸倒率は0.2%と極めて低いことが過去の統計上明らかになっており、先人が築き上げた実績(ほぼ全員完済した)の上に成り立っているのです。

③不動産は二極化する(都心の価値は高まる)

正しい借金は悪ではなく、住宅ローンは最高に優れた借金なので借りる価値が高いと述べましたが、そもそも借金をして買う日本の不動産への信頼がなければ意味がありません(正しい借金ではなくなる)。

勿論、どんな不動産でも買ってOKではなく、不動産購入者は下記の2つの圧力と常に闘わなくてはなりません。
 ①人口減少により使われない不動産が増えていく
 ②建物の価値は経年で減って行く(減価償却)

XなどSNSでは「人口が減って行く日本で不動産買うなんて悪手でしかない」と考えている人が無数におり、それは上記の①の部分を見て言っています。しかしこれは不動産購入経験のない方々の、非常に解像度の低い見方です。実際には人口減少社会ではインフラの保持が難しくなった地方から人が流出し、コンパクトシティ化が進むことで二極化が進んでいくのが顕著です。東京は今後2040年まで人口が増えますし、それに応じて好立地の不動産は価格上昇トレンドに乗る可能性が高いです。以下は2014~2023年の10年間に首都圏の街を地価が上がった回数で分布したものですが、全く上がらなかった街(0回)と10年連続で上がった街の両端が極端に高いのが分かると思います。

出展:住宅情報館

不動産の二極化についての分析が本論ではないのでここで止めますが、気になる人はググれば沢山データと共に記事が出てくるのでご覧ください。結局、都心の駅近大規模タワーなど、好立地のマンションを買えれば上記の人口減少と経年劣化を覆す価値保全が見込めるというスタンスです。
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以上、ここまでご覧いただければ、パッと見、頭のおかしいマンション界隈の人たちもそれなりの合理性を以て「出来るだけ多く、出来るだけ長く借りろ!」と主張しているのが分かっていただけると思います。借金をして好立地の不動産を買うのは今でも有効な資産形成戦略ですし、若手サラリーマンの方々にも是非恐れず、楽しく借金をすることをお勧めします。私も多数の不動産投資ローンを抱える多重債務者にも関わらず、某地銀が良い条件で1億数千万円の住宅ローンをOKしてくれたときには脳汁が出たもので、それほどまでに借金を愛しているのです。

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今年は他にも2つnote記事を書いているので、是非ご覧ください。


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