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(この街が好き) 団地の変遷

多摩ニュータウンから晴海フラッグへ

1.団地の定義
 私は多摩ニュータウンの一角に住んでいる。団地を語るときはどうしても多摩ニュータウンの団地が中心になり、また、専門家でもないので的外れな団地論になるかも知れませんがご容赦願います。多くの不動産評論家やマンションブロガーが晴海フラッグを語る時、ネガティヴな意味で団地という表現をされている。確かに団地には時代遅れなイメージがあるが果たしてそうなのだろうか?それを考える前にまず団地の定義を考えてみたい。
1)広大な土地に同一事業者により計画的に建設された大規模集合住宅群。
2)事業者は過去においては日本住宅公団であり、それらが解散された現在では大手デヴェロッパーもしくは複数のデヴェロッパーによるJ/V。
3)容積率が低く広い共有空地があり、それが公園や緑地として豊かな住環境を形成する。
4)規模のメリットを活かし、建設された(される)時代の最先端を行く設備、技術、習慣が導入されている。
 駅から遠いと言うイメージ・定義があるが、これは必ずしも正しくない。駅から近い団地も有れば遠い団地もある。ただし、敷地が広大であるため、同じ団地であっても住戸によっては徒歩で駅まで5分くらいの差が出ることは稀ではないだろう。
 こうして団地を定義づけてみると決してネガティヴなイメージではなく、非常にポジティヴなイメージである。次に、時代と共に変化してきた団地の様式を検証してみたい。

2.昭和の団地
 昭和時代に建てられた団地は当時としては最先端を行く憧れの住まいであったであろうが、古いものでは既に半世紀が経過しようとしている。昭和時代の団地の特徴は画一的な建物、間取りで個性が全く無い。また、殆どが5階建以下の低層住宅群で広大な敷地が十分に活かされておらず、空地は単なる空地に過ぎないように見える。また、流石に50年も立てば設備も陳腐化はやむを得ないだろう。ファミリータイプとしては狭い住戸、高齢者には辛いエレヴェーターの無い建物、耐震性能等々の問題がある。確かに現代の住居としては魅力に乏しい。団地が大規模な集合住宅を揶揄する言葉として使われる所以である。しかし、現在は建替も進んでおり、平成の団地、令和の団地に変貌したものも少なからずある。建替が可能なのは容積率に余裕があり、住戸数(専有面積)を2倍、3倍に増やす事が可能である事、規模が大きく事業採算が取れる事であろう。

3.平成の団地

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 バブルの末期に開発が始まり、平成の時代に形成された団地は上の写真や表題の写真のようにタワーマンションもあり、非常に変化に富んだ個性的な建物で構成されている。また、空地も公園や緑地として利用され、居住者の生活を豊かにしている。事業者は日本住宅公団であり、この時代の住戸は3LDKの標準面積が100m2と現在の晴海フラッグの様な余裕を提供した。昭和の団地の建物の名称が・・団地・・号館と呼ばれたが、平成の団地では・・・の杜・・番街と言う様に名称もモダンになった。多摩ニュータウンでは稲城地区、南大沢地区等で建設された。更に港北ニュータウンや千葉ニュータウンで建設された。団地内に公園があり、また、各建物には共用施設(ゲストルーム、娯楽室、会議室等)も設けられる様になった事が特徴である。
(表題の写真は稲城市京王相模原線若葉台駅前の平成の団地である。)
 
4.令和の団地
 団地の定義に従えば、晴海フラッグは正に令和の団地である。これはネガティヴな意味でなく、ポジティヴな意味においてである。団地内に大きな複数の公園があり、また、建物間の空地も公園や緑地となっている。エリアを繋ぐネットワーク環境。先進のエネルギー供給網。多すぎるほどの贅沢な共用施設。便利な商業施設等々。これらは正に大規模な団地だからこそ実現できる生活環境である。この様に住環境に恵まれた団地は滅多にない。多くの子供達の元気な声が聞こえ、活気に溢れた街の様子が目に浮かぶ。
  同様に同一敷地内に複数のタワーマンションが建設され、公開空地を持つ集合住宅も団地と定義付けられるのではないか?幕張ベイパークも令和の団地と位置づけられるだろう。パークタワー勝どき等も令和の団地のカテゴリーに入るかもしれない。(恐らくパークタワー勝どきを団地と定義づけることには大きな抵抗感を持つ人が多いとは思うが。)
 平成の団地との違いは、独自の通信網やエネルギー供給といった最新の技術の導入、より豊かな共用設備が挙げられるだろう。こうしてみると団地とは時代遅れの住居を指す言葉ではなく、常に規模のメリットを活かした時代の最先端を行く住宅群を意味する。
 団地の問題点は入居者の世代年齢が近いと言う傾向があり、住民の高齢化が一気に進む可能性がある事であろう。正に現時点で昭和の団地が直面している問題である。平成の団地も築後30年を超えるものも出てきているが、高齢化問題はそれほど大きな問題になっていない様である。築後まだそれほど時間が経っていない事や中古住宅の売買が比較的盛んで住民の新陳代謝が進んでいる事もあるのではなかろうか。小さな子供達が大変多く、活気がある。
 近年の集合住宅は建物の長寿化を前提に建設されており、また、以前より中古住宅の売買が盛んになったこともあり、令和の団地ではより住民の新陳代謝が進み常に多様な世代が街を支えることを期待したい。

以上

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