６話・大ターンテーブルを囲んだ歓迎晩餐

１・自室のベッドに一人身を投げ出しもの思う

本社ビルの構造と、寮の内装を一通り案内されたあと、私はようやく一人になれた。

靴を脱ぎ、ズボンを脱いで、キングサイズのベッドにダイブ。

「１８時３０分に歓迎会代わりのご飯会やりますから、それまで部屋にいてください」

別れ際に言われたことを、脳内で反芻しながら、首だけ動かして窓の外を見やる。

事前の説明では、確かオーシャンビューの寝室という約束だったが、窓の外は建設中の建物がひしめいていて、全くそんな気配はない。

ここは「開発区」と呼ばれる、企業や工場を誘致する特別区だ。もともとは、都市部郊外の農地であったり、なんもない荒地だったりした場所である。

この本社ビルは、そんな現地でも比較的早い段階で建てられた”高層インテリジェンスビル”だったので、竣工当時は確かにオーシャンビューだったのだろう。実際、地図では近くに海があり、時折潮風特有の湿気を帯びた風が吹いてくる。

寝室には、キングベッドとベッドサイドのコーナーにランプ。そして、特大の本棚（何も置かれていない）に、エアコンと不織布カバーで覆われたハンガーラック。

その不織布の柄は、晴れた海にカモメが飛んでいるデザインがプリントされている。・・・まあ、確かに”窓の外に”オーシャンビューが広がっているとは言っていなかった。

２・中国本土で食べる中華料理初体験

この会社、社員食堂が設置されており、よくある工場の食堂といった形。そして、別に個室もいくつか用意されていて、そちらは特別なイベントのときに利用されるバーティールームみたいなものになっている。

”龍が如く”に出てきそうな、特大のターンテーブルの上座に座らされる私。

まず先に、飲み物はなにかと問われたので、緑茶を頼むとともに、かばんから梅酒を取り出した。参加者全員に、見せつけるように持つ。

「みなさんとの初めての出会いと、これからの仕事の成功を祈って、日本から和歌山の梅酒を持参しました。どうぞ、ご賞味ください」

そして、自ら一人一人に注いで回った。

これは大いに受けた。

人生初の中国体験第一日目は、こうして過ぎていった。

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