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退職記念日を控えて

5月の末、眠れぬ夜、もうすぐ退職記念日だな〜なんてことを考えていた。

数年前、僕は陸上自衛隊を任期満了退職し、北の大地を離れ、地元のとある会社に就職した。

転職活動では当初IT系の会社を志望していたものの、自衛官に求人を出すようなIT企業は残念ながらなく、第二志望に考えていた「街づくり」や「都市計画」に携われる仕事の会社を探した結果、とある会社に出会い、無事に採用された。
採用試験の前に見学や体験をさせてもらうことができ、和気藹々とした雰囲気のとてもいい会社だなと感じ、新生活に胸躍らせていた。
そして、新しい職場での日々が始まった。

4月のはじめ、菓子折りを持って「お世話になります」とご挨拶したところ…

「お前、新人のくせに何で定時に出勤してんの?初日から遅刻かよ」と言われ、何を言われているのか全く理解できなかった。

「役員以外、つまり従業員は、定時の一時間前までに出勤し、定時に仕事を始められるように準備していなければならない」などというローカルルールがあることを理解するにはそれほど時間がかからなかったが、
要するに、ブラック企業に入社してしまったというわけだ。

まあ、学生時代にいろいろなアルバイトを経験して、多少ブラックなことはそれなりに経験してきたつもりだし、ある程度は目を瞑って頑張って仕事をモノにしたいと思っていたものの、残念ながらそうはいかなかった。
主な理由は2つ、お金のことと、病気のこと。

まずお金については、お給料をちゃんと払ってもらえなかった。
労働契約を結んだ際に、きちんと書面上で取り交わしたにもかかわらず、実際には半額しか払ってもらえなかった。
毎日朝1時間、夜1時間半の合計2時間半残業したが、当然残業代なんて出るわけもなく。

一度、担当の上司に尋ねてみたが「お前、自衛隊ではそうやって上司に歯向かっていいって教えてんのか?お前がいた駐屯地のボスの名前言えや!どういう教育してんだって聞いてやってもいいんだぞ?」と怒鳴られ、もう何もいう気も失せた。
以後、気に入らないことがあるたびに、同じように自衛隊を人質に取ったかのような言い分で怒鳴られ、殴られた。

ただでさえ給料が少なかった中、会社のルールで昼食は外食ばかりだった。
なるべく安く抑えようと思っていたが、残念ながらそれはできなかった。
なぜって、上司が勝手に決めて注文するからだ。拒否権はない。何か言おうものならさっきの通り、拳骨が降ってくる。もちろん残したり食べるのが遅くても、だ。

おかげさまで、毎月の収支は赤字だった。

そして何より、バランスなんて全く考えられていない食事を週6日(※多い時で週7日)強いられていたため、あっという間に病気になってしまった。
消化器系、つまり胃腸がダメになり、腹痛が激痛すぎて眠れない日もあった。
ただ、病院に行く暇なんてなかった。
上司に相談するも、「そんなの気の迷いだ!」「俺達が頼んだもの黙って食ってればそのうち治るだろ!」などと相手にされなかった。

そして、こう思った。
「ああ、このまま働いてたら、マジで死ぬな。
「忍耐力ガー云々」レベルの話ですらない。
辞めよう。何言われようが、こんなクソ会社で過労死したところで、誰も責任なんざ取りゃしないだろうしな」と。

そして、社長宛に直々に「退職願」を出した。
破り捨てられるかと思ってたが、優しく対応してもらえた。
だから、率直な思いを伝えて、指示通りに対応し、会社をあとにした。

おかげさまで無職になってしまったが、それはそれで悪くないものだった。

「若い奴が来ない!来てもすぐ辞める。!忍耐力のない奴ばかり!
「お前は俺らの希望!長く務めてほしいから大事に教えたい!」(殴りながら)
なんてよく言われたけど、従業員をそんなに粗末にしてるんだから当たり前だろとしか思えない。

「早く仕事覚えなきゃ」「ちゃんと馴染めるように頑張らなきゃ」という一心で、自衛官時代以上に必死に動き回っていたあの日、とある上司達から
「お前、いつまでも「分かってください」って態度出してんなよ!いい加減俺達のやり方に合わせろよ!」って言われたのが全てだったんだろう。

「この仕事初めてなので、やり方教えて貰えませんか?」と聞いたら、「教えてくださいなんて何様のつもりだ!黙ってやれ!失敗したらお前が全部責任取れ!会社に迷惑かけるな!」と殴ってくるような人達に"合わせる"なんて、東京大学に合格して自衛隊で出世して統合幕僚長になるよりも難しいだろう。

何でもかんでも朝令暮改、気まぐれ経営な会社に合わせられるような人間なんてそうはいないだろうし、もしいてもこんな会社に来ないだろうよ。

あれからしばらく時が経ち、ちゃんとしたところに就職することができ、今は楽しく健康に働けている。
好きなことできてる分お給料はお世辞にも高いとは言えず、彼女やなってくれそうな異性もおらず、将来のことなんてとても考えられない、相変わらず底辺スレスレな人生だとは思うけど、できる範囲の中で好きなことやれて充実してるし、人生ってこういうものなのかなと噛み締めている。

また同じくらい時が流れたら、どんな人生になってるかな?
もっと上手く生きられてたらいいな。

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