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連れがラーメンを食べに行くという。最近は医者から止められていてほとんど食していない。「旨いと評判だぞ」というので付いて行くことにした。 開け放たれた店内には4人掛けの卓があちこちにあり、数人の客が思い思いの席でラーメンを食べている。椅子に座ろうとすると、奥の卓にいた髭面の男が、目線を左に送ってそれを制した。見ると古ぼけた”食券販売機のようなもの”が置いてある。なるほど、食券を買ってからという事だなと合点がいった。 お金を入れようとすると、黒い手ぬぐいを頭に巻いた店員が、取り
どこかの地方都市にある駅のベンチに腰かけて煙草を吸っていた。 横にいた連れらしき男が聞く。 「今日はどこに泊まるんだい。」 ざっと周りを見渡すと、向かいのビル越しに手書き風文字で「財宝温泉」と読める屋上看板が、3つばかりの強いライトで照らされていた。目立つものはそれ以外になく、多少面倒臭くも感じたのでそれを指さして答えた。 「さぁ、あの旅館じゃないか。」 すると向かいに腰かけていた別の男が頭を振った。 「いや、こっちのホテルだと聞いたが。」 振り返ると、ぼんやりとした景色の中