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不思議夜話(ふしぎやわぁ) 第一集

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実際に見た”夢”をほぼ忠実に書いた自作のショートショートの取りまとめ。 第一夜から二十三夜まで。何の教訓も笑いもありません。(^-^;
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2020年4月の記事一覧

不思議夜話5

第五夜 奇妙な夢を見た。 その夢は寝苦しさから目を覚ました瞬間から始まった。これも夢の中なのだが、その時からの記憶しか無いので仕方がない。気づいた時は実家の客間の隅に寝そべっていて、目を覚ました後、天井にある豆電球が点っているのをぼんやりと眺めていた。季節外れなのだが、遠く近く、蚊の羽音が耳元にまとわりつく。夜風にでも当たるかと、やおら起き上がってふすまを開けたが、そこは見た事もない長い廊下が続いていた。うちの廊下はこんなには長くないはずと思っていると、随分と先に薄ぼんやり

不思議夜話4

第四夜 とても怖い夢を見た。 気が付くと高校の中庭に立っていた。あの時と変わらず、真ん中に十メートル四方程の浅い池があり、数匹の錦鯉が悠々と水草を掻き分けている。見上げると、二棟並んだ学舎の二階を渡り廊下が繋いでいた。校舎の色も淡い緑色で、「ああ、みんなあの時のままだ。」と思った。 振り返ると、体育館に隣接した下足場から、ゾロゾロと制服を纏った学生達が出てきた。数人づつ群れになって、肩を組んだり、小突きあったりして、たち振る舞いもあの時のままだ。化学を習っていた先生が相変わ

不思議夜話3

第三夜 辛い夢を見た。 寒空の中、古ぼけた公衆電話ボックスから電話をしていた。彼女と待ち合わせの約束をしようとしているのだが、返事が重い。随分話し込んでいる。緑色の電話機にうず高く積んだ十円玉の山が少しづつ鼓動を早めて崩れていく。 「じゃ、これからそっちへ行くよ。」 「…ええ、…でも…。」 「近いし。」 「うぅん…。」 電話の向こうで少し首を振ったように思えた。 「でも、ちゃんと話がしたいんだ。」 「え、でも、時間も…、遅い…し…。」 何度も何度も同じ遣り取りを繰り返してい

不思議夜話2

第二夜 不思議な夢を見た。 自分は教師か学生か何かで、”学校”へ出かけようと思うのだが、外出着の着替えが見つからなくって苛立っている。夢の中の季節は秋冬のように記憶しているが、タンスの中には半袖のシャツしか入っていない。衣類そのものは沢山見当たるのだが、必要なものがない。靴下すら見当たらず、無駄に消費される時間に少しづつ焦りが出てきた。 「着ていくものが無いじゃないか。」 と誰に言うでもなくつぶやいたが、家人は一向に慌てる様子もなく、乱雑にタンスの中身を引っ掻き回す自分をぼ

不思議夜話

第一夜 嫌な夢を見た。 残念な事に、記憶に残る夢はたいていそういうものしかない。この度も後味の悪い陰鬱なものだった。嫌な記憶は「語り捨て」にして忘れてしまおうと思うが、なに分、”夢”の話なので荒唐無稽なところはお許し願いたい。 私は何かのテスト会場にいた。入学テストのような雰囲気だった。先ず解答用紙が配られ、「虫食い」状態になっている文章に書き込み、意味の通るものにするようだが、出題の仕方が変わっていた。バイキング料理の取皿のように、中を小分けに区切られた大振りの四角いプ