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プロジェクトマネージメント特性比較

結論

 長らく書いてきた、このシリーズも今日で終わりです。今まで多くの方に読んでいただいてありがとうございます!

 最初の調査では、ISBSG から購入した実際の開発データを元に、重回帰分析を用いてアジャイル型とウォーターフォール型の三つの目的関数(生産性、開発速度、欠陥比率)を比較した。新規開発の生産性以外の全ての目的関数において アジャイル型よりもウォーターフォール型が優れているという結果が表れた。

 二つ目の調査では、Vensim という シュミレーションを使用して、組織のレベルと複数回の開発を繰り返し行った際のアジャイル型とウォーターフォール型の開発の動きを比較した。期間が短く単発の開発であれば、アジャイル型が優位であったが、繰り返しの開発や、欠陥の修正を含めたオペレーションを見ると、ウォーターフォール型における生産性の優位が見られた。また、アジャイル型においてもウォーターフォール型においてもQAのレベルが他の職種のレベルの高低よりも影響を受けることが分かった。

 最後の調査では、ブロックボールゲームという新しいプロジェクト観察手法を提案し、実際の開発プロジェクトを疑似化したゲームで、アジャイル型とウォーターフォール型で組織や参加者の動きや生産性、開発速度、欠陥が起きる状況などを比較した。ゴールや要件が変わる時もウォーターフォール型が適切である結果が表れた。一番時間がかかるのは、ゴールを変えた際の アジャイル型であった。 “ゴールや要件が分からない、決まらない場合はアジャイル型を行う” という帰無仮説は、棄却された。また、ストレスやチームメートによってプロジェクトの成果が変わることが観察された。

結果としては、以下になる

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 以上の結果は、アジャイル型を否定しているように見えるが、著者の意図は、アジャイル型を否定するものではない。アジャイル型は、ビジョン、ゴール、システム要件設定などの開発初期において非常に有効で、新しいものを作る、価値やユーザーが求めている真の要件が分からない時の要件規定、プロトタイピングには有効である。

 しかしながら、プロジェクトマネージメント 特に実際のコーディングに入った、開発管理の手法としては非常にリスクを伴い、非効率なものである。

 とりあえず作り始めてみようというのは、そもそもアジャイル型の本質ではない。アジャイル型の本質は、ゴールも要求も理解したうえで、どの役割の者も協業して計画的に開発するものである。スケジュールは決まらない、出来上がるものも分からない、しかし、出来上がった時には良いものが出来上がっているという新しいものを作り出すときにこそ真の力を発するものである。

 2022年現在の日本にこのような開発を許す度量、先見性、余裕がある企業、組織、チームがあるだろうか?そうでなければ、全体のゴール設定、要求整理をする期間を設けた ミニウォーターフォール型の繰り返しか、最初から全部の開発を決定した ウォーターフォール型をお薦めする。もし、度量、先見性、余裕があるのであれば、是非 アジャイル型を進めて欲しい。そして、世界のユーザーのお役に立てるような新しい製品、サービスを多く生み出してほしいと願うものである。

ありがとうございました。次回からまた別のシリーズをお楽しみください!



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