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食品工場経理担当の備忘録        エピソード 5 スゴ技

今回のエピソードは、弊社勤務の一人のベテランパート従業員さんにまつわる、その人の「スゴ技」が最終的には会社全体の業務改善につながったお話です。

このパートさんは、私より1年程後の入社でしたが、仕事にも懸命に取り組み、物覚えも早く、まじめな性格で器用な方でしたから、仕事にもすぐに慣れ、暫くすると2部門のスーパーや小売店向け製品のトッピングや箱詰め作業の何処でもこなせるようになりました。

私が現場を手伝っていた頃には、同い年だった側面も有り話易かったという理由から、手伝い作業のやり方を色々と聞いたり、作業時のコツを教えてもらったりと、現場作業の師匠みたいな存在のベテランパートさんになっていました。

1.製品開発に力を入れ始めていた頃

この当時、弊社は少しずつではありますが、スーパー・小売店向け製品に力を入れ始めた時期で、出荷する製品も徐々に増加しており、納品先からの様々な改善要求に対応できるように、生産所属以外の従業員の作業参加も頻繁に行われ始めていました。

そんな中、蓋つき容器の中に複数のアイテムを袋詰めでトッピングした製品(プリンやゼリーなどの製品を想像してください)が味も良く、手作り感満載で、アイテムもユニークだと評判になり、売れ筋商品なりつつありましたが、やはり売れるにつれ「見た目」に対する要望が数多く寄せられるようになり、早急な対応を迫られていました。

2.単純に素材を変えれば解決?と考えたが・・・

この時一番多かった改善要望は「容器と蓋を止めている透明テープが見つけにくい」というもので、すぐにカラーテープで対応する事を提案しましたが、容器が透明素材に文字と飾り絵を添えた物だった為、カラーテープはデザインが崩れるので別の対処法でとの結論に達し、頭を悩ませることになりました。

そこで、テープの仕入先の担当者と相談して、透明テープに文字印刷する事を提案し了承されたのですが、
「止めるテープの長さが品ごとにバラバラなので、ある程度統一して欲しい。」
と新たな要望が入り、始めて製品の仕上がりに対する規定を設ける事になりました。

3.一番見た目の良い製品の制作者に教えて貰う

今回の規定は、
 ① テープは何センチが適正か
 ② 貼る位置はどこが適切か
この二点についてを決める必要がありました。

先ず、社内で選考の際、梱包前の箱詰めされた製品をピックアップして中を調べたところ、貼り位置といい長さといい、見た目もバランスも良いケースが幾つかあり、作成者を聞くと、あのパートさんとの事でした。

早速、事情を説明して協力を仰ぎ、その場でセロテープを10~15本ほど切ってもらい、長さを測ったところ、驚いた事に、全てのテープが長さ約8センチで揃っていたのです。

さらに、実際の製品に貼ってあったテープをはがし横に貼り、長さを図るとやはり同じ長さでした、まさに「スゴ技」です。

その後、このベテランパートさんの長さを基準に他の長さのテープも試してみましたが、このパートさんが直感で切っていたこの、「8センチ」が一番分かりやすく、剥がしやすい長さ、という結論に満場一致で達しました。

しかし、これはベテランパートさんが長年の仕事をこなす上で培われたもの、新人のパートさんに「必ず8センチで切って」という、お願いだけで統一出来る事ではありません。

そこで、当初から予定していたテープの文字入れを、ちょうど「8センチ」で文字が切れるように印字して貰いました、これで新人のパートさんでも同じ長さで切れるようになりました。

余談ですが、このタイミングでテープの長さの規格を決められたのは、本当に幸運でした、なぜなら、この長さは後々の製品群にも基準として活用できた為です、次にテープの貼り位置の問題に移る事になりました。

当時、こういった手作業のテープ貼りの位置は、個人の感覚に頼ってしまう為、ズレは発生して当たり前だろう、という感覚でおりました。

ここでもやはり、かのパートさんの作業を見せてもらうと、三本の指を器用に使い、左手に持った丸いカップの中心線の端に最初は中指のテープ、次に人差し指のテープといった順で、まっすぐ対角線上にぶれる事無く、次々と貼られていきます、その手際の良さとスピードには、ただ舌を巻くばかりでした。

この「スゴ技」を見せられた後は、またしても満場一致で、「中心対角線上180度の位置にテープを張る事」と決定し、作業のスピードアップも見込めた為、当時作業に関わっていた全員がこのパートさんの手順を学ぶ事になりました。

実際に作業スピードは格段に上がり、後にこの手順は、最初に覚える事として新人研修マニュアルに組み込まれる事になります。

4.ベテランの「スゴ技」から最終的に業務改善が出来た

この様な経緯でこの後、蓋付き容器のテープの規定は「文字が区切られた位置でカット(8センチ)・貼り位置は中心対角線上180度の位置」と決められました、まさに「スゴ技」から生まれた規定でした。

手順を教えてくれたのは、ベテランパートさんの優しさという部分もありますが、当時は事務・経理・営業関係なく全員何らかの製造工程に参加し、現場のパートさん達と顔を突き合わせ同じ作業をし、信頼関係ができていた為、ベテランパートさんも、この手順を教えてくれたのだと考えています。

実際、私もベテランパートさんの指導のもと、たくさん練習し、正確に、早く貼れるようになりました。

5.ちょっとした声掛けから始まる信頼関係

人の感覚と、長年にわたる経験がなせる技の凄さには、ただ、驚かせられるばかりです、ただ、その情報や技術を提供してもらえるのは信頼関係によります。(その人の長年の努力と工夫の結果なのですから、当たり前ですね。)

きっと、皆さんの会社にも「スゴ技」を持つベテランがいるはずです、せっかく同じ職場で働く縁が有るのですから、ぜひ信頼関係を築いて、何かあった時に現場とも相談しあえるのがベストだと、私は考えています。

これ、原価管理を行う際にも通じる事で、とても重要だとも思っています。

自分は経理で部署も違うし、「いきなりは難しい。」と考えるでしょうが、最初は一言でも良いので、声をかける、挨拶をする、そう言った事からぜひ始めてみて下さい。

このパートさんは、先日会社にお邪魔してお会いした際も、益々お元気でバリバリ働いていらっしゃいました。

師匠、これからも長くガンバ!です。







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