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小説(SS) 「居酒屋ロマンティック」@毎週ショートショートnote #ジュリエット釣り

お題// ジュリエット釣り 


 カウンター席以外に小さなテーブル席が一つしかない年季の入った焼き鳥居酒屋へ入った和也は、生ビールをぐいっと呷り、隣を見た。

 一席空けたカウンターには、白シャツにスラックス姿の女性が、片手に空のジョッキを持った状態でうなだれている。ん〜っ、となにやら小さく呻き、そのストレートの長い髪をときどき揺らしながら、姿勢を微調整している。

 和也がひとりその様子を見ていると、その女性はもぞもぞと動き出した。そして、和也の方を向いて、とろけそうな目をゆっくりと開き始めた。
 和也と目が合い、女性がにこりと微笑む。
 その姿にどこか照れてしまった和也は、ビールを少し口に含んでゆっくり飲み込んだ。

「お兄さん、どっからきたの?」

 振り向くと、先ほどまで酔い潰れた様子だった女性が隣の席まで近づき、頬杖をついて顔を近くまで寄せていた。わずかに頬を赤らめて酒気は帯びているが、意識ははっきりしてるように見える。

「……それよりさ、私の話聞いてくれない?」

 和也が戸惑いながらも色香に酔って頷くと、彼女はその境遇を話し始めた。

 どうやら女性は、代々で家同士が対立している生まれの人を好きになってしまったとのことだった。厳格な親に、その男性と会うことすら禁止されており、家を飛び出してひとり酒に及んでいたという。いろいろ考えるうちに、その人を好きになっていいのかわからなくなり、相談できる相手が欲しかったのだと、彼女は話した。

「ねえ、今日は泊めてくれない?」

 とろりとした目で見つめられながらそう言われた和也は、下心を燃やし、彼女分の会計をまとめて支払って、ひとり暮らしする自宅へと向かった。

 和也は裸になり、女性とベッドに寝そべる。
 だがそこへ、自宅のドアが開かれ、叩きつけられる大音量が聞こえ――


 屈強なサングラスの男2人が現れた!



 え〜〜以上が、近年横行している「ジュリエット釣り」と呼ばれる美人局の一例です。
 彼女たちは、生まれの違いによる失恋を装い、ひとり身の男性に近づいてきます。
 その手口はさらに巧妙さを増し、それが犯行なのか、本当の失恋なのか、区別の判断が難しくなっているのが、直近の傾向です。
 ロマンティックを演出してくる女性には、みなさん気をつけましょう。
 その先にあるのは、悲劇だけです。彼女たちが興味あるのは、あなたではなく、あなたの財布です!

 決して、私のように――和也にはならないように!


〈了〉 972字




最近、免許の更新に行ってきまして
講習のビデオを見たんですね。

それで、事故は気をつけないといけないな〜
と思っていたら、お題と合致しました笑


バス釣り的な「ジュリエットを釣る」ではなく、
ルアー釣り的な「ジュリエットで釣る」で考えたのですが、人間でやるとどうしても色香で惑わすものになってしまうので、オチのアプローチをひねる方向でやってみた感じです。

midjourneyくん、なかなか望むものを出力してくれなくてサムネイルにめちゃくちゃ苦戦しました。。

ではでは、また〜!


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