『国家が破産する日』(韓国映画)視聴記録 (12月2日加筆)
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1997年のアジア通貨危機で、韓国はIMFの支援を受けた。
それを題材とし、フィクション映画として作成された。
最後に大きく、画面にdefaultの文字が浮かび上がる。
「国家は、富める者を守るための政策を………」。
「優しい人は信じるな、だろ?」「優しい人だけじゃない。誰も信じるな。自分だけを信じろ」。
「政府は、国民が浪費したからだ、と言うだろう」。
時流、世相に翻弄される人たちと、翻弄する人たち。
わかっていて、国民には情報を隠蔽し、陰ではハーバード出身の繋がりで癒着して仲間内で情報を共有する『上級国民』エリート官僚や政治家、対策チームの責任者たちや超資産家。彼らは敢えて国民を見棄てる道を選択する。これを奇貨としてと、社会体制を変えようと目論む。
解雇の容易な社会に。
貧富の格差の大きな社会に。
白紙委任状を要求し、むしり取ろうとするIMF。爬虫類を彷彿とさせる表情、眼。
その状況をチャンスと捉え、自らの才能を恃んで大儲けをする者もいる。手に入れた豪邸に意気揚々と足を踏み入れ、邸内の一室で縊死している持ち主を見ても動じない。
早期退職申請書と、非正規雇用への雇用形態転換同意書が労働者たちに配られる。
非正規雇用への転換。解雇。
大量失業、翌年の自殺者は前年比42%増。
情報を隠蔽して陰で画策した者たち、混乱に乗じて大儲けした者たちは、20年を経た2017年、成功者として社会を牛耳り続けている。
善良で堅実な経営者が、ポリシーである現金取引をせせら笑われ手形取引を強要に近い形でのまされ、塗炭の苦しみの中を生き延びた20年後には「信じられるのは自分だけだ」と息子に言いながら外国人労働者を怒鳴りつけている。
ホ・ジュノの、表情の演技はすごい。
安心してはいけない。
あたりまえだと決めつけないこと。常に疑い、考えること。
常に目を見開いて世の中を見ること。
富める者は更に富み、
貧しい者は更に貧しく。
それが、IMFの作る社会。
断片的な言葉が、台詞が、表情や仕草が、シーンが、頭の中でぐるぐると渦を巻いている今。
思うのは、我が祖国日本のこと。
『解雇の容易な社会にする』と、安倍晋三は言った。
『皆さんは貧しくなる権利がある』と、竹中平蔵は言った。
2005年の『郵政民営化を世論に問う』という名目での解散総選挙は、今にして思えば大きな政治の節目だった。党議拘束に逆らえる政治家はいなくなり、国会議員は国民に選ばれた代議士ではなく、権力者の走狗となり、我が身の安泰を確保することをこそ第一目的として国民を舐めきり利用するだけの存在に成り下がった。そして、『世論に問わ』れた郵便は、15年ばかりを経た今、当時とは比べものにならないほど不便になった。人手不足が明らかだ。郵便業務従事者は必死に働いている。しかし非正規雇用がとても多い。期間雇用職員の扱いは、本務員とは比べものにならない低さ。
無料視聴可能最終日に、2度視聴した。
韓国は身びいきが激しい、と言われることがある。
自国はすべてにおいて絶対正義!!と感情的になり、論理破綻していても声高に主張すると言われることもある。
確かに、「日本のひらがなカタカナ(平安時代にできた)は、訓民正音(ハングル。作られたのは日本でいう室町時代)の影響を受けてできた」と主張して譲らなかった韓国人文学研究者がいたと聞いたことがある(大学時代の恩師から聞いた実話。多分40年以上前の話)。
しかし、これだけの映画を作る国だ。
韓国社会の来し方を見つめ、今そして今後を問う映画を作る国だ。
今の日本社会に、それができる素地はあるだろうか。第二次世界大戦時の批判はしてみせても、同じことを今この4年間繰り返しており、しかもそれを指摘することをタブー視するこの日本社会。世に阿る研究者が大学内や社会において幅を利かせ、真実を指摘した研究者が失職させられる今のこの日本社会に。