見出し画像

ハジメテの同人誌発行までのお話

なぜ同人誌を作ったかについては前回の記事をご覧くださいね。
この記事では成人向けBL同人誌発行を決めてから出来上がるまでの胸の内を書いていきましょう。
最後にハジメテの同人誌を作るに当たって私が助けられたリンク集を載せます。情報が欲しい方はそちらへ直行をお勧めします。


胸の内

同人誌を作るか!と決めた私。
ちょうどアルファポリスのコンテストに参加する!と盛り上がるタイムラインに誘われ、選んだ作品がありました。大学生ものの焦れ恋で、不穏さも変態性もない話。ムーンライトノベルズでもブクマが三桁と、私にしては好調な作品でした。
どうせイベントで売るなら、間口の広い作品が良いかなと思い、こちらに決定。
ただ、少し時間が経つと疑問が浮かび上がってきます。

(え?無料で公開してる作品を買う人いるの??)
(ありがたいことに贔屓にしてくれる読者さんがいるのはわかっているけど、有料になったらどうなの??)
(何部刷るの?)
(いくらで売るの?)
(え?え?買う人いるの???)

ずっとループです。

結果行き着くのは、
(無料配布のペーパー作成で良くない?初回だし、様子見で!!)
保身100%の結論ですね!金銭のやり取りを想像しただけで胃が痛む。

ちょうど誘ってくれた方から「事前申込制30名限定の編集部持ち込みというのがあるよ!」と情報が来たので「無配にしようかと…」と告げると意外な返答が。

「無配だけだと受け取りにくいかも!」

あああ!!!確かに。BLを愛する民、心が優しい。
試食を食べても、保湿剤のテスターを使っても、「ちょっと考えてきます」とその場を離れる図太い神経の自分を基準に考えてはいけません。
(一旦離れるけど、後から戻ってきてまんまと買ってしまうことが多いのですが。)

完全書き下ろしで本を作れたのなら、こんなに悩むこともなかったでしょう。
しかし、実はこの頃、執筆に関してゆるやかな不調を感じていました。
絶好調だった四月は頭に浮かぶ話を片っ端から書いては投稿をしていました。ピーク時は三本同時連載なんて瞬間も。
しかし、夏を迎えた頃からは、話のネタは浮かぶのですが、執筆のスピードが上がらない状態でした。
毎日更新している連載は絶対に止めたくないので、それだけは絶対に書き、参加を決めていたアンソロジーの原稿を進めるので精一杯。
無配のペラ1枚2千字くらいなら書けるかなという気持ちでした。

教えて貰った編集部の持ち込みの条件が「同人誌」とあったので、もしこの持ち込みに申し込めたら同人誌を作ることにしよう!と決めました。
はい、同人誌のこと知らな過ぎ!
印刷所に出して綺麗に製本された文庫本だけが同人誌だと思っていました。
きっとコピー本でも良かったんでしょうね。

さて、そんな私の運命を左右する編集部持ち込み。
いつだって、なんだってアンラッキーがいい仕事をするのが私の人生です。何が起きるかわかりません。
受付開始時間をド緊張で迎えました。だけど音沙汰なし。
開始時間が変更になったと予定開始時刻を大幅に過ぎてからアナウンスがあり、私の緊張は霧散。いつだってなるようにしかならんよな。の心境に。
まぁ、いつものことです。
仕切り直しをして、あっさり申込完了。
印刷所に同人誌を作って貰うことが決定しました。

きっと初めての同人誌をコピー本にする方って多いと思います。
だって自分でやるから心のハードル低い。
使ったことのないフォーマットの事とか、知らない言葉とか調べる必要ないし。
でもね、ギリギリまで直せるので孤独な戦いが長引きますよ。
それはそれでしんどいんじゃないかな。
素人がハジメテやるんだから、失敗はつきものです。
誤字なんて脱稿後に生まれる説を信じたくなるくらいだし。
初めてだからこそ、プロにお任せして、反省点があっても次に活かせばいいんじゃないかな。その方が精神的には楽かもしれません。

私が同人誌発行まで頑張れた最大の理由は、同人誌の作り方や、お手軽価格な印刷所、部数を決めるためのアンケートの取り方なんかの情報を教えてもらえたからですね。
何がわからないかもわからない。
そんなズブの素人でしたから。
決めなきゃいけないこと、新しく理解しなきゃいけないこと、考えることは無限に湧いてきます。
自分の本を何人くらいの人が買ってくれるのかわからない状態で色んなことを決めるのはとても難しい。正解は誰にもわかりませんから。
それでもネットに散らばる先人の記録は、どれも同人誌制作の楽しさが溢れていました。タイムラインには一足先に本を完成させた喜びの声が流れてきます。
なんか楽しそう!とりあえずやっとくか!!の気持ちは消えませんでした。

ちなみに、この時に用意しようとしていた無配は国際遠距離恋愛を扱った切ない話でした。主人公は日本人の僕、米国にいる恋人を初めて訪ねます。
私のお昼更新の連載をお読みの方は(おや?)とお思いですね?
いい勘をしています。
その話を知っている人にはIF物語として、知らない方には単体の話として読める構成でした。
一言で言うとものすごい心を抉る話ですね。
書いている時点で作者自ら呻き声を漏らしていました。
完全なる通り魔作品。配らなくて良かった……。

通り魔無配のお蔵入りを決定後、次に思いついたのはムラムラ無配でした。
Rシーンを書いたことのないカップリングの大人なシーンを取り扱ったら、イベント感が出て楽しそう!という軽はずみな思いつきです。
千字前後でまとめるとなると、そこまで濃厚ではありません。
そうなると浮上するレーティングの壁。
全年齢?R15?R18?
私が小説を書き始めた早々からずっと結論を出せずにいるアレです。
元々の作風が「全年齢なのに何故か淫靡」という感想がつくので、いつだって判断に困ります。
今回も試しに読んでいただいたところ「ギリセーフとギリアウトを反復横とびライン!」とのこと。
R18同人誌作って購入者にあげれば問題ないんじゃない?
という結論になりました。
また、連載読者に聞いてみよう!と連載ページにグーグルフォームのアンケートリンクを載せました。
これは本当にやって良かった。
読者の方がどれだけキャラクターを、物語の世界観を、大切に思ってくださっているかがわかりました。
通り魔作品なんて出してはいけないと気がつけて本当に良かったです。

あと、同人誌を発行を決める前のこと。
名刺作るものなの?!とタイムラインで知り、名刺の裏面に140字SS書いたら楽しい!小説連載したらもっと楽しい!!と思っていました。
スランプでありながら、小説を書くのは楽しくて大好きなままでしたね。

さて、ここからやっと同人誌の印刷を依頼するための作業のお話です。
原稿の大部分はありました。
書き下ろしがあった方がすでに読んでいる人は嬉しいよな、と思い、短編を書き下ろすことにします。書きたいシーンや書き忘れたシーンなどないと思っていましたが、ざっと読めば回収してない約束なんかもあって書くネタはあっさり決まりました。
気分転換に表紙を作ってみたりしながら順調に書き上がります。
奥付けを作り、本みたい!と感動。よく見たらタイトルが間違っていることに気がつき、長すぎるタイトルをつけるのはもうやめようと思いました。
紙の同人誌を買うけど、スマホで隙間時間に読みたい派がいることを知り、試しに電子版のQRコードも付けてみました。Twitterのアカウント、メインの投稿サイト、匿名のメッセージ箱のQRコードも全部乗せ。
使われているかは分かりません。
初回なので、聞いたことはできる限りやってみる精神でした。
取捨選択することが出来なかったとも言えます。だって、初めてで、わからなすぎて基準がありませんから。

普段の執筆は、メモ帳かGoogle Docsを使うことが多いです。
アップル製品を使っているので、縦書きへの変換は標準装備のPagesを使用しました。
本のページ数と値段の目安も知らない私は文庫サイズを指定し縦書きPDF化しました。300ページ越えです。
印刷屋さんの自動見積もりに入れてみればべらぼうな価格に。
お手軽価格を目指していたので、これじゃまずいとページ数を減らす方法を考えます。
目次を作ることを諦めました。
各話ごとに改ページすることも諦めました。
まだまだ、減らしたい。
そう、困った時の新書二段組の出番です。
だいぶ減りますが、もう一声欲しい。
一頁あたりの行数を増やそう。一行あたりの文字数も増やそう。
これが大問題。
Pagesはこの設定がないのです。
文字のポイント数や余白をいじることでしかその調整ができません。
絶望。
さよならPages。

急いで以前紹介して貰ったLeMEを調べてみればWindowsのみ対応。
絶望再び。

何はともあれ、とにかくググれ。ググれ。
いつだって救ってくれるのは先人たちのレポートです。
縦式に行きつきました。最高。
ページ数を調整するために行数、文字数、余白を弄り、印刷屋さんの見積もり表と睨めっこを繰り返します。
これなら!と思う価格のページ数になり、よし申し込むぞ!と印刷所の該当ページをクリックすると、『申込を締切ました』の文字が。
え?まだ締切の日になってないよ?
愚か者。原稿を印刷して欲しい人は自分だけではありません。
お値打ち価格の印刷社には人が殺到するに決まっています。
さよならお手軽価格の同人誌。

ここから再度検索を始め、現時点での低価格印刷所を発見します。
申し込みの流れを見て、気がつきます。
せ、背表紙??
もう、そっちで適当にやってくれないかな……
同人誌への憧れが育たないうちに自分で作ろうとすると雑な考えになるのがよくわかります。
もちろん背表紙なしで作ることもできます。
でも、本棚に並ぶ背表紙を眺めるのが好きなんですよね……
散々こだわりを捨てて完成だけを目指して突っ走ってきたのにね、ここでこだわることになりました。
と言っても、背表紙の幅を専用のページで計算してもらって、表紙と裏表紙の間に作って文字を入れるだけです。
でも普段画像ソフトを一切触らないので、とにかく慣れない。
指定の長方形を描くのに何分かかった?という感じです。

完璧!とは絶対言えませんが、ひとまず無事入稿します。
通常配送で十分当日の会場到着には間に合う日だったのですが、絶対何かやらかしているに違いない自信があったので、事前に受け取り中身を見ることにしました。
追加料金を払っても必要な時間があるのですよ。
もし大きなミスがあったら謝罪SSを書けば、活字大好きで懐が広いBLの民はしょうがない人だねって許してくれるんじゃないかな。そう思っていました。

一度、原稿が自分の手を離れてしまえば、こっちのものです。
どんな出来になるかは不明でも、絶対本は出来るので大丈夫。
さ、無配でも書くか!の気持ちです。
調子が出ないと言いながら細切れにSSを書くなら、もうちょっと長めの新作を描けるのでは?と自分でも思います。
ウキウキとR指定の無配を書き、名刺用の140字を書き、名刺を作ります。
「カタログ持ってくの重い」という声を聞き、「じゃあ私スタンプ作るから持ってきたら押したい!」という謎の提案をし、名前の角印も作ります。
(作って当日もウキウキ持って行ったのに押すのを忘れました。次回は絶対押したいです!皆さんもいかがです?勝手にスタンプラリーしませんか?しませんね……)
ご挨拶用のお菓子も必要と聞き、R指定の無配にちなんだお菓子を用意します。美味しいので自分用は大容量を確保。
そして、ハンバーガーの解説本出したいとか、一冊目が出来上がる前から次の話をしていました。全くBL関係ないイベントの検索とかして、アメリカの印刷所の見積もりとか眺めて。
完全に浮かれてます。
無配をイベントにエアー参戦、遠隔参戦の方にも届けたいと思い、PDFファイルを公開。会場ではQRコードで配布することに。
じゃあ、クロスワードパズル作らなきゃね!!しかもR18のやつ。

はい、本が到着です!
指定配達時間に玄関に着席して待機。
箱は小さいのですが、受け取ればそれなりに重い。
え?これ当日持ってくの??
次は絶対、会場配送にします。
すぐさま開封、初めての自作本と対面!
心臓ドキドキ。94回/分。正常時の脈拍としてはまあまあ高い!
ちゃんとPP加工できてるし、右びらきの指定もできてた!!
表紙の写真、思ったとおり!!
背表紙、ちゃんと真ん中にきてる!!
中身、自分の書いた喘ぎ声が印刷されてる!!
大丈夫、ちゃんと本になってる!!
でも、無くして初めてわかる大切なことってありません?
私の場合は、「適切な余白」でした。
読める、読めるけど、親指の置き場が……
あぁ…通販する時に余白の重要さをテーマに140字付けよう。
そう、心に決めました。
そして、忘れました。
だからここに載せますね。

「余白」
親父みたいな刑事に憧れて、朝から晩まで捜査、捜査。
休暇?何それ?仕事が全て。
それなのに一度だけ、被疑者の煽りに乗って手を出した。
全ておしまい。
肩書きがない。誰もいない。やる気もない。
時間だけが有り余る。
「飲みに行こうぜ」
隣のお前だけが変わらない。
これが俺の人生か。


私の話を読んで、同人誌の発行を迷っている方が、自分も出来そう……と思っていただけたら嬉しいです。
もしお一人で何か迷っていることを話したくなったら、聞かせてください。話しているうちに解決策が見つかるかもしれません。

こんな感じで、無事に通販もできました。


ハジメテ同人誌を出す時に役立つリンク集

表紙作成に使用したCanva の商用利用について

https://www.canva.com/ja_jp/learn/commercial-use/

最後までご覧いただきありがとうございました。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?