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お百姓さんの種

なにかを始めることは、種をまくことに似ている。

まいた種に実がなるとは限らない。
けれど、種をまかなければ、実になることはないのだ。


***


ところで、果物から出てきた種を、
庭にまいたことはあるでしょうか。

おそらく、多くの人は、
実が育たなかったのではないでしょうか。

というのも、お百姓さんが使う市販の種と、
その成長した実から取れる種は、
遺伝子上、実がなる確率が違うからです。

遺伝子といえば、親子三代作曲家の男性が、あるテレビ番組で言っていました。
「親が作曲家だと、ほかの家庭に比べて、
作曲家という選択肢が将来の夢にのぼりやすい。
身近なところで、その生活が見えているから」
言い換えると、
「自分が作曲家なのは、遺伝子云々というよりも、
環境に拠る所が大きい」ということでしょうかね。
子は親を見て育つってね。


閑話休題。


市販の種には、【交配種(F1)】【固定種】と
呼ばれるものがあります。

まずは、【交配種(F1)】の話から。

小学校の理科の知識を活用すれば、「種なんだから、交配しとるんは当たり前やないか」と思われるかもしれません。そういう意味じゃないんだな。
大人の知識を活用すると、「レーシングカーの大会かいな」と思われるかもしれません。そういう意味でもないんだな。


閑話休題。

F1は、一世代に限って性質が担保される種です。

『メンデルの法則』のこと、覚えていますか。
わたしは忘れていました! 簡単に説明しますね。


一方の親が『AA』、他方が『aa』の遺伝子を持つ場合、その子どもは必ず『Aa』の遺伝子を持つことになります。
『A』と『a』の両方の遺伝子を持つ場合、
どちらか強い方の遺伝子が出てくることになります。
大文字の『A』が小文字の『a』より強い場合、
『Aa』の子どもには、『A』の性質のみが出てきます。



これをうまく利用したのが、F1です。

病気に強い、見た目が良い、おいしい、etc...
それぞれの性質が、人間に都合の良い状態で
生まれてくれる、お百姓さんに心強い種ですね。

しかし、この人間に都合の良い展開は、
一世代しか続きません。

先ほどの例を持ち出すと、
F1の種は『Aa』の遺伝子を持ちます。

ところが、『Aa』のF1同士をかけあわせると、
その子どもは『AA』、『Aa』、または、『aa』の遺伝子を持ちます。つまり、人間に都合の良い『Aa』状態では無い形で育つ可能性が出てくるのです。


この遺伝子の動きが冒頭でお話した、
「DNA上、実がなる確率が違う」ということ。
より正確には、
「人間に都合の良いように育たない理由」です。



せっかくなので、【固定種】についてもお話しましょう

【固定種】は、遺伝子『AA』と『AA』の親から生まれた、遺伝子『AA』の種です。
F1に比べて、親の性質が続く確率が高いのが特徴です。
『AA』の子ども同士をかけあわせても、
生まれる遺伝子は『AA』ですからね。



どんなに計算をして交配をしても、
台風に蹴散らされることもあれば、
突然変異で急成長することだってある。

だから大事なのは、
「どんな種をまくか」より、
「どうやって育てるか」なのだろう。

まいたばかりのマガジンの種、
豊かにおいしく育ちますように。

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